Nicotto Town



子供の頃猫を飼っていた。


我が家には京都風の囲い庭があって
我が家の臆病猫が唯一我が物顔でのし歩く場所だった。
所が突然庭にでなくなった。

可笑しいと思って見渡すと何と四角く囲まれた庭の唯一我が家でない方角の一辺の
隣の屋根の上に大きな目つきの悪いトラ猫が来ていた。
背伸びして見てみるとどうやら其の猫は大怪我をしていた。

明らかにボスの座を争ったと見える背中の皮がざっくりと剥けていた。
怪我は他の猫にそんな姿を見せられないので
殆どよその猫が来ないこんな場所に隠れているつもりなのだろう。

我が家は猫と本気で喧嘩をする私が居るので
他の猫は寄り付かない。

子供時代の私に取って我が家に来て糞をするなど許されない行為であった。
詰り私のテリトリーである。

我が家の屋根の上も庭も私のテリトリーを犯すものはふんづかまえて
猫に対する躾をする。

首根っこを捕まえて頭を土にこすりつけて上下関係をはっきりさせる。
次に首根っこ捕まえて動かなくして足で挟んでお尻をビンタでひっぱたく。
最後にひっくり返してお腹を見せさせて上下関係をはっきりさせる。

詰り猫には猫の躾のやり方があるのである。
此れは間違った所におしっこをした時にしつけるやり方の応用である。

それと此処の家のボスは誰かをはっきりさせるやり方でもある。

猫は愛玩用に我が家では飼って居なかった。
ネズミを捕るか、寄せ付けない実用目的で飼っていた。

当時はトイレのしつけが終わった猫をペットショップでなど
買っては来なかった。

トイレの躾もご飯の食べ方(教えないとお皿から出して気に行った場所に持って行って
食べる猫もいる)も全部自分達でやっていた。

だから猫は其の餌を与えるトイレも含めて躾をした人以外は其の家の家族であっても
無視である。

さて、我が家の猫が庭に出れなくなってうつむいて縁側の隅でうつろな目をしている。

此れは何とかしなくては行けない。

隣の家の屋根の上であるし、我が家ではないし、追い出すには気の毒な位の
深手をおっている。

更に見事な大きさのトラ猫である。

まずはご挨拶に行った。
取り敢えず我が家の塀を登って隣の家の屋根に乗って2m位距離を置いて
じっと顔をみる。

うなっているが動けないのか動く気がないのかじっとしている。

で、次にお皿に煮干を入れて「つまらないものですが」と
お互いに1m位の所に置く。

で、嫌がる我が家の猫を連れて行って2m位の距離の所にいて
見渡せる庭は此の猫のテリトリーであるので
傷が治ったら此処には来ないで欲しいと日本語で言った。

じっと其の猫は私の顔を見ていた。

煮干には一切口を付けなかった。
牛乳も口を付けた様子が無い。
其の後何度か餌を運んだが手を付けた様子が無い。

人間から餌はもらわない主義なのだろう。

時々様子を見に行った。
舐めて傷を直しているようだった。

ある日其の猫は屋根の上から私の方を見ていた。

にやぁ!と一言言うと出て行った。

野良には野良の生き方をあるのだろう。

其れが私の決めた我が家の猫のテリトリーに入ってきた。

其の事を知らせた上で怪我が治るまでいる事を許した。

其の猫は人間からの餌を2週間ほど一切手をつけず
じっと寝て舐めて傷を直して
また仁義なき戦いの野良の世界に戻っていった。

さり際もなんかかっこよかった。




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