加賀福助と神楽、鬼退治勝負2
- カテゴリ:自作小説
- 2014/06/18 22:52:54
逃げなくては・・・。こんなところで死んでたまるか。
細い路地からは妖魔がぞろぞろと現れる。
崩れた社(やしろ)からもぞろぞろとやってくる。
蹴飛ばした妖魔はケタケタと笑っている。
それに背筋を凍る寒さがしてきた。
社の方からやってくる妖魔の群れに黒い躰をした妖魔がいる。
目は赤い。
「おい、そは誰ぞ」
「オレは加賀福助・・・安倍家の三代目になる男だ。」
言葉を話す妖魔・・・神楽が逃げろって言ってた妖魔だ。
はは、絶望的だ。
「くくく、ははは、こいつはおもしろい。貴様、素人か?名を名乗ってどうする?名を盗られるとは考えないのか」
「名を盗られる?」
「つまり、こういう事だ。加賀福助、右腕折れる」
「うぎゃああああああああああああああああ。あごぁあああああああ」
右腕が折れた。すごい激痛だ。
何だこれは・・・。
「まだ分からないのか?安倍家の三代目ともあろうものが。貴様の身体の支配権はすでに世にあるという事が分からないのか」
「・・・・・・・・・」ウソだろ?
「貴様はもう死んだも同然という事だ。くくく、ふははははははは」と、黒い妖魔は高笑いする。
何てことだ。名を盗られるという事さえも知らずにオレは妖魔と戦っていたのか。
自分のチャクラの量も分からずに。
神楽の言う通りになってしまったじゃないか。
「動くな」と、黒い妖魔はオレに命令する。
オレの身体は前に倒れる事すらできず空中で止まる。
黒い刃が目で見えた。
「この刃でその首を落としてやる。ありがたく思え」
ああ、今度こそ死ぬのか。
・・・・・・
あたたかい温もりを感じる。
何だこれは?
二代目様だろうか?二代目様が七つ目のチャクラをほんの一瞬、見せてくださった時と同じあたたかさ。
いや、あれは一瞬だった。
わしにはこれぐらいしかできんのだよ。と、笑われていた。
これは長すぎる。
じゃあ、一体誰が
右腕の痛みも消えた。
肩の痛みも消えた。
それに金縛りにあっていたのに、今は地面に倒れている。
オレは何とか起き上がり、前を見た。
鬼たちが自ら後ろへ下がって道を作っている。
オレに腕を変形させて刃を作っていた黒い鬼は地面に頭をすりつけて土下座している。
それも鬼たちが作る道の方角に。
その道からやってきたのは、神楽なのか。
白く眩い光に包まれているように見える。
近くまで来ると、間違いなく神楽だった。
神楽はにっこり笑い、土下座している鬼の目を見てから
「汝は我。我は汝。然らば道は開かれん」と、呪(しゅ)を唱えた。
黒い鬼は「・・・ありがとうございます」と、感謝?して白い光となって消えた。
オレがやっている事とは根本的に違う。
これは何だ?
「これは浄霊(じょうれい)って奴さ。ちょっと思考を読ませてもらったよ」
「・・・浄霊?どうやるんだ?」
「瞑想を毎日する事」
「それだけか・・・?」
「まあね。あとは血筋。福助は知らないだろうけど・・・霊が見えるのは血筋なんだよ。見えない人には見えないし、聞こえない。わかるかな。それと陰陽師は名を名乗らないモノ。名乗るなら守護霊から頂いた名にするといいよ。出会っただろ?白装束の人」
「あっああ。出会った。そうか、守護霊様だったのか」
「じゃあ、ボクはもう一軒行くところがあるから」
また神楽は街の中へ消えて行った。
オレは家へ帰って壺を見てびっくりした。
オレの壺には百二と、書かれている。これはいい。
問題は神楽の壺だ。
百万飛んで六十万。現在も数え中。と、書かれている。
二代目様に聞くと・・・浄霊はオレがやっていた除霊の十倍も二十倍も効果が違うらしい。
月とスッポン・・・どころの話じゃない。
はは・・・しかし、勝負に負けてわかった事がある。
自分はまだ陰陽師を何も知らない。
笑顔を忘れちゃいけないよ・・・か。
鈴が鳴った。
「ただいまー」
神楽だ。
オレは不思議と笑えた。
「おっ、福助。いい顔するようになったね」と、神楽に言われる。
「ま・・・まあな」オレはまた笑った。
いつもお越しいただき感謝しています。
それではボクは寝ます。
あい