Nicotto Town



エフェクトサウンド縄文時代

性能の良いPCとソフトを揃えればプロに匹敵する音楽制作が可能な現代、
ビンテージ機材も名機も見事にシミュレートされ、今後も発達は続くでしょう。

今回も思い出話です。ラジオやレコードで聴いた奇妙な音を再現するために
私が試した数々のローテクを紹介いたします。

1、ファズ・ディストーションサウンド

深夜にギターを弾くと、親爺が起きてきて殴られたりギターごと庭に放り出されたり。
音を小さくするために、ブリッジ部分にボール紙を互い違いに折り込んだのが始まり。
小さな音になりますが、昼間その状態で強く弾くと、いわゆる『ビビる』音になります。
どこかファズの音色に似ている。そこで紙の種類や枚数を色々変えてみた。
なかなか満足できる音も出るけど、弦振動で紙がずれてしまう。
そこで音の出口であるスピーカーに注目。薄い紙をあちこちに張ってみた。
同じ長さだと、あるポジションでないと気持ち良い『ビビリ』が出ない。
今考えると共振周波数の問題でしょう。そこで長さを変えたものを張りまくる。
こんな風にしてストーンズのサティスファクションを真似たりしたものです。

2、レズリースピーカー

有名なのはビートルズの『ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス』。
回転するスピーカーから音を出し、ドップラー効果による揺れを利用したものです。
この機材の存在を知り、まずはアンプ代わりのテープレコーダーを振り回してみた。
これは疲れるし効果も判然としない、何より目が回る。
そこで発想を転換しました。「マイクを振り回したらどうだ?」
ギターは左手だけでシーケンスフレーズを弾き、
録音用のマイクのコードを右手で持ってグルグル振り回して録音。
プレイバックを聴くと……おおお、音が揺れてる。もっと速いほうがいいぞ!
数回目にマイクがすっぽ抜け、窓ガラスに激突してヒビが入り母から大目玉。

3、フランジング(フェイズ)サウンド

当時はジェットマシーンとも呼ばれてました。高域のウネリが特徴的な金属的サウンド。
クイーンの『誘惑のロックンロール』のイントロが分かりやすいかな。
この音色の発見はテープレコーダーの不調からでした。
回転に少々ムラが出たらしく、録音すると音が籠るときとシュワシュワする時がある。
しばらく前に手に入れたオープンリールのテープレコーダを使い、
録音時にリールやテープを足の指で押さえたりして微妙な回転ムラを作りました。
すぐにまともに動かなくなってしまいましたけど……。

4、ヴォコーダーサウンド

Perfume や きゃりーぱみゅぱみゅ、ボカロのような変調されたサウンドです。
同一のものではありませんが、トーキング・モジュレータという機材がありました。
密閉した箱にスピーカーが入っており、そこからチューブが出ているだけ。
ギターの音がチューブから出てくるので、これを口の端に咥え、
声を出さずに口だけ動かすと、口腔内の共鳴で奇妙な音になります。
ホーミー等の原理に通ずる部分があるかもしれません。
さっそく作りやってみました。大変面白いのですが、数分弾くとひどい頭痛が。
この機材を使ったミュージシャン共通の悩みだったようです。
有名どころではジェフ・ベックの『迷信』『黒猫の叫び』等があります。

5、リバーブサウンド

洞窟で大声を上げたときの反響のようなサウンドです。
高価な専用ギターアンプなら内蔵されていますが、まず普通は手に入りません。
風呂場が良い感じだったけど、電気物や楽器を持ち込むのは問題がある。
そこで空き缶の中にマイクと小さなスピーカーを入れてみました。
お中元で届いたお煎餅詰め合わせの入っていた四角いヤツです。
両方とも中に入れるより、中にマイク、スピーカーを蓋に乗せた状態がベターでした。

6、ストリングスサウンド

歪んで持続した音ではなく、弦楽器のような持続音を出したい。
メロトロンという楽器の音色を少しでも真似たかったのです。
弦を擦り続けるための方法を考え、モーターを利用することにしました。
モーターの軸に小さなプラスチックの歯車をつけて、弦のブリッジ部分に固定。
弦への当たり加減がうまくいくと大変良い音色になるのですが、
その位置がものすごくシビアな上、モーターの回転が速すぎる。
そのうち弦が切れてしまった。この出費は大変痛く、それ以上の開発は断念しました。
ゴドリー&クレームの『ギズモトロン』の存在を知らなかったころの話です。

この他、ギター本体にもさまざま怪しげな工夫をしたものです。
琴を見て琴柱の存在を知り、洗濯バサミを弦とフレットの間に挟んだり、
弦を直接洗濯バサミで挟んだり、2本の弦を一か所に張ってみたり。
いわゆるプリペアードピアノのギター版で録音もしました。
後にフレッド・フリスのファーストソロアルバムの写真を見たとき、
「あ、コイツもアホだ」と共感したものです。

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2014/05/10 06:33
こんいちは。物も情報も限られた時代だったので……。

クラプトンはナチュラルな音で演奏することが多いですが、
私は彼がエフェクトをよく使っていた60年代の音楽にカブレた世代です。
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2014/05/09 23:07
なんだかまた私には難しいお話ですが・・・^^;
色んなことを熱心に試されてたんですね。
トーキングモジュレーターは聞き覚えがあります。
クラプトンも使ってましたよね^^
アバター
2014/05/08 08:06
おはようございます。駄文お読み頂き恐縮です。

現代って成功体験とか、正解への最短経路とかが重視されてますけど、
私がものづくり全般を好きになった理由は、
『失敗する自由』が(自己責任で)好きなだけ許されているからだと思います。
反常識に無軌道、非効率で不合理ですが、マヌケな失敗の数々が創る楽しさを教えてくれました。
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2014/05/08 06:18
やってますね
試行錯誤のあいだじゅう楽しかったでしょう
一つ一つの終わりにオチみたいのがあって
読むだけで楽しいです



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