2月自作/「試験 『筆記音の中で』」
- カテゴリ:自作小説
- 2014/02/25 20:46:29
「始め」
気だるいその掛け声で筆記具を走らせて三十分ほどたって、一通り模試の最後まで解ける所は解いて顔あげると、監督の先生は暇を持て余して外を眺めている。
休日を模試監督役でつぶす羽目になった先生を私はちらりと見て、再び問題用紙に目を落とす。カンニングなど起きるはずもないーなぜなら模試受験者は私一人なのだから。
先生の休日をつぶして申し訳ないとは思いつつ、親が払ってくれた模試受験料を無駄にできないのだ、と教室でたった一人、私は模試に挑んでいた。
この状態が「模擬試験」というにはあまりに牧歌的で緊張感がないー私は小さくため息をついたが、模試をしてもらえるだけでも有難いというのが現実だ。
だからこそ。私は今この瞬間、同じ問題と格闘しているであろう受験相手と戦ってるはずだと、見えないたくさんの競争相手を頭に思い浮かべて、再度、模擬試験の用紙に目を落とし答案紙の確認を行った。
これ以上、埋められないというぐらいには自覚もあった。指定時間より早く私は監督官役の先生に模試の回答用紙を渡した。
「まだ時間あるぞ?」
先生は言うが、すでにこのけだるい空間に飽きているのは私に伝わってきていた。
「いえ、これ以上、私には回答できるところありません」
そう答えながら、こんな会話、本番であるはずないよなぁと緊張感なく答えて用紙
を監督役の先生に手渡した。
受験本番当日ー私は周りのカリカリと鉛筆が滑る音に圧倒されていた。
模擬試験とのギャップは私の想像をはるかに超えていた。たった一人で受ける模擬試験の「模擬」の意味なんて何もないじゃんー私は周りにカリカリという筆記の音の中で、ほぼ白紙に近い自分の答案用紙に点在する、自分の文字がまだらに数行あるだけという現実をからだいっぱいに刻みつけた。答案用紙に書いた回答といえないそれを、正解には程遠いということだけ判るだけの学力はあるようだ。情けない自分をあざ笑う。最初からー模擬試験の時から同じ土俵に立ってなかった。模試で思い描いていた想像の受験相手などどこにもいなかった。順調に筆記の音を奏でる敵に、心の中で小さく敗北宣言をして席を立った。
受験戦争をまさしく本番で初めて味わった気分だった。
あまりに早い立席に監督官が一瞬戸惑う視線を私に投げかけた。休日をつぶされた高校の先生に模擬試験提出した時とのギャップを思い出しながら、人生初めての敗北感を空欄ばかりの答案用紙を差し出しながら静かに、そして苦く味わった。
(終わり)
さて内容に関してですが一場面描写として秀逸です。ここの前後に2エピソードをからませ、第一場面を教室で恋愛関係にある同級生との語らい、第2場面を上記本文、第3場面を合格発表で一緒の学校に進学するとか別々の学校にゆくとかする、……と変化がでて読者がひきよせられるかなあ、と感じました。
原稿用紙30枚以上の青春(or 恋愛)小説に貼りつけると
さぞかし緊迫感がでるだろうなあとも感じました
文章からも緊張感が伝わってきてリアルに共感しました(*^_^*)
うおっ、アップデート成功していたんですね、これ^^;
アップ途中で臨時メンテと出て、書き直しかなと思っていたんですよね。
いつも、コメ頂き、ほんとに感謝です。
今回のは、小説でなくそのまんま、実録です(大汗)
今、頑張ってる受験生には頑張ってもらいたいです(説得力
ないですね、これorz)
私も模試には強い子でしたから、余計に共感するのかも。。。う~ん!空気が重い!でも懐かしい香りもするな!ありがとうございます^^
やっぱぼうぼうさんはニコッとだよ!!!ビヨw