自作小説「馳せる想い」
- カテゴリ:自作小説
- 2013/11/01 21:20:17
「三角稜」というらしい、インコを飼うことがなかったら手に取ることはなかった「そばの実」。最近の紅茶パックの形の独特のその形から思ったのは、「いんこの餌」であり、咄嗟に浮かんだのは「ピラミッド」だった。
彼女がそばの原料であるそばの実の原型をみた時のことを思い出した。
「いんこの餌でなければ見ようとする意思もなかったし、機会にもめぐりあうことがなかった」
彼女は回顧する。
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「た、食べれるの?ってか食べてくれなきゃ、高い値段出して通販した意味がないし~」
通販で何気なく他の「いつもの」いんこ用餌の注文に紛れてボタンを押した結果きた荷物に入っていたその「そばの実」はいんこ用餌の中で別次元に思えた。
「日常」で当たり前に食べていた物の原形に少なからぬ衝撃を覚えた日からどれだけの年月がたったのだろう?
「気分悪い?」
友人が心配して声をかけてきた。はっとして「現在」に戻る。
「大丈夫、ちょっと昔を思い出して呆けてしまったみたいね」
彼女は慌てて紅茶の用意を再開した。
いないはずの「ピヨッ」というなつかしいインコの鳴き声が頭に響いたのは友人に黙ったまま、彼女は友人に笑いかけた。
「お待たせしました。紅茶どうぞ」
己の年齢を考えればー飼って看取ることが不可能なのに。フラッシュバックするのは、インコを飼っていた時期が多い。
新たな出会いが無責任になるからと思いながら、そっと思う。待ってるはずの、かって飼ってた可愛い同居鳥に逢う日も決して遠くないと静かに彼女は笑みを浮かべた。
「あら、何か楽しいこと思い出したのかしら?」
紅茶を一口して友人が彼女に尋ねた。
(終わり)
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- かいじん
- 2013/11/02 19:43
- かつて、一緒にすごした日々を思い出すのは、時として切なくなるんですね。
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