Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


ストロベリーラブ 【 第68章 】

第六十八章 『 レモン味 』


「 うっ...うぅっ... 」

凄く喉が苦しい。息が詰まりそうだ。
いつの間にか私は桐崎君の胸の中で泣きじゃくっていた。
彼の肩は逞しくて、勇ましくて、そしてどこか...温もりを感じさせた。
彼の服の袖にしがみつき、肩で呼吸する。彼はそれを黙って受け入れてくれた。
右手でポンポン、とまるで子供をあやすかのように頭を撫でた。
耳元で囁くように聞える彼の吐息は、まるで子守唄のようにも思えて─.....
いつの間にか私の涙は止まっていた。

数分後、泣き止んだ私を優しく放し、彼は私の瞳を見つめた─。
どうしてだか分からないけど、私も知らない間に見つめ返していた。
...というより、吸い込まれていた。彼の透明で、綺麗な宝石のような瞳に...。

呼吸が一瞬止まったと同時に、彼の口が開いた。

「 ....もう大丈夫か? 」

心配したような言葉。目は不安気な男の目ではなく、男の子のような目をしていた。
潤んだ瞳、まるで子犬のような丸い目だ─...。眉は斜めに歪んでいる。
少しだけ...本当に少しだけ...心が揺らいでいる自分がいる。

「 ....あっ、大丈夫...です。 」

我を取り戻し、質問に答える。私の言葉を聞いて彼はホッとしたような表情を見せた。
さっきとは嘘のような暖かい陽だまりのような笑顔を見せ、彼は私の頭を撫でた。
何を思ったのかはわからない。でも、彼はこう言った。

「 よかった 」

その一言の意味は分からなかった。でも、彼の大きな手から来る温もりは、
しっかりと私の体に染み込んで行った。それが一気にあふれ出すかのように、
涙が浮かび上がった。いっきに頬をつたい、地面に落ちた。

その涙を見た彼は慌てた。

「 どうしたっ...!? 」
「 ....なんでもない...です。 」

必死にセーターの袖で涙を拭いながら、首を振る。
そんな私をもう一度引き寄せた彼の大きな腕。知らぬ間に私の頬は、
彼の肩に靠れかかり、力を抜いていた....。つまり、身を預けていたのだ。
彼に靠れかかった私の体を、しっかりと大きな肩で支えてくれた。
私は拒絶するどころか、”受け止めて”と頼んでるような態度を取ったのだ....。

「 うぅ.... 」
「 ...やっぱ一輝じゃ辛ぇんだろ? 」
「 ....! 」

─バッ....!!

”やっぱ一輝じゃ辛ぇんだろ?”....この言葉と共に反射的に離れた体。
思わず押しのけた彼の体。彼は目を丸くして驚いている─。
そして、次第に目つきが変わっていった...。
まるで豹が敵を睨んでいる時のような目...、獲物ではなく、敵なのだ─...。

「 なんだよ...結局アイツが良いのか? 」
「 ....っ 」

なんて答えればいいのかわからなくなった。息が苦しい。
思わず胸を押さえ、身を引く。その姿を見て、顔を歪めながら複雑そうな顔を浮かべる。

「 んだよ...馬路ムカツクなぁお前。 」
「 ....ごめっ 」

上手く声が出ない...。苛立っている彼を前に弁解する余地もないなんて...。
まだ息が上手にできない私は、必死に肩で呼吸をする。
そんな姿を見ながら彼が近づいてきた。ギラギラと光った目で、だ。
私は恐る恐る、一歩ずつ引きながら壁に靠れかかった。
とうとう、追い詰められた。逃げ場も両手で塞がれ、私の視界の両脇には彼の腕、
そして、目の前には彼の眉間にシワを寄せた顔があった。

「 な、何するつもり...? 」
「 さァ?なんでしょうか? 」

ニヤニヤしながら、唇をゆっくりと近づけてきた...

「 ....!やっ...! 」

必死に拒むものの、男の力というものは女より遥か上で...。
私の拒む腕はグッと引っ張られ、逆に顔に引き寄せられたのだ。
顔がカァッ...と赤くなり、真正面を見られなくなる。

そして、目を泳がせてる隙に─.... 

「 ...んっ 」

やられた。やられてしまった。
まただ、また...口を塞がれてしまった─。
あの時とまったく同じ...ガムのレモン味がする甘酸っぱいキス...。
拳を握り締め必死に拒絶するが、そのキスに翻弄され、力は抜けてく...。

こんなとこ、誰かに見られてたら...終わりだ。


*続く*

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2013/11/01 17:31
ハラハラじゃないですか!!!

続き楽しみです!



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