Nicotto Town



「秋の終わるとき」

冷たい北風の吹く公園のベンチで、少女はひとり、今日も帰らぬ人を待っていました。

『秋が終わる前には帰ってくるよ』

そう言って、この街を出て行った少年。
それなのに、街に木枯らしが吹き始めてもう一週間。
少年は帰ってきませんでした。

(もう、この街のことも、わたしのことも忘れてしまったのだ。)

少年のいる都会の方を見つめ、少女は思いました。

「もう、この街でひとり待っているのイヤだよ」
少女のつぶやきが、北風に流されていきます。

(さよなら。わたしは故郷に帰ります)
少女は軽い鞄を持って、ベンチから腰を上げました。



北風の吹き抜ける駅のホームで、少年は汽車を待っていました。

『うん。待ってるから』

そう言った、大切な少女を残し、ここよりもずっときらびやかな街の、きらびやかな生活にあこがれて、この街をあとにした少年。
でも、都会での生活は厳しいものでした。
少年が手に入れたのは、ぼろぼろの財布に入ったほんのわずかなお金と、小さな鞄に残った壊れかけの夢のかけらだけでした。

(もう、待っているはずはない)

二人でよく歩いた公園の方を振り仰ぎ、少年は思いました。

「それに、こんな惨めな姿で、彼女に会える訳ないじゃないか」
少年のつぶやきが、木枯らしに流されていきます。

(さようなら。僕は違う街に旅立ちます)
ホームに入ってきた汽車に乗るため、少年は歩き始めました。



「あら?」
立ち上がった少女の前に、一枚の落ち葉が舞い降りました。
(どこから来たのかしら?)
見上げると、小さなもみじの木に、数枚の葉っぱが風に揺れていました。
「もう、全部散ってしまったと思ってたけど」
少女は舞い降りた葉っぱに手を伸ばしました。



「おや?」
一歩を踏み出した少年の目の前に、一枚の落ち葉が風に飛ばされてきました。
(どこから来たのだろう?)
見回すと、ホームの向こうの大きな銀杏の木から、たくさんの葉っぱが風に舞っていました。
「まだあんなに残ってたんだな」
少年は風に舞う葉っぱに手を伸ばしました。



少女は舞い降りた真っ赤な葉っぱを拾い上げました。

「そう言えば、あの人も、こんな色が好きだったな」

少女がプレゼントした真っ赤なシャツを着たときの、照れたような笑顔を思い浮かべる少女。

「もう少し、せめて日が沈むまでは待っていよう」
少女はそう思い、再びベンチに腰を下ろしました。



少年は風に舞う、鮮やかな黄色い葉っぱを捕まえました。

「そう言えば、彼女もこの色がよく似合ったっけ」

少年がプレゼントした黄色い帽子を被って、にっこり微笑む少女の笑顔を思い浮かべる少年。

「もう一度、あの公園を歩いてからにしよう」
少年はそう思い、汽車に背を向けました。




街で一番高い建物の上。
二人の女の子が手すりに腰掛けて、街を見下ろしていました。
「これで、秋も終わりだね」
真っ赤な服の少女が言います。
「うん。わたし達もそろそろ次の街へ行かないとね」
黄色い服の少女が言います。

「次の季節のためにね。」




おわり





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2013/10/29 10:14
RYOさん

赤は明太子
黄色は豚骨ラーメン

って、本村碧唯ちゃんが言ってましたけど・・・

(#^.^#)
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2013/10/27 22:55
めぷちん♪さん

いつもありがとう♪

このお話は、マンガのコマ割りを意識して書いてみたのです。

わたし、王道少女マンガが大好きだったりします。

(#^.^#)
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2013/10/27 13:33
赤い葉っぱ と 黄色の葉っぱより

担担麺 と 味噌ラーメン

  by ありす w
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2013/10/27 13:31
こんにち~ん♪

ほ~っ…(♯ー0ー♯)=Э

読み終わった後に…心が…ほっこりする~ステキなお話ですね^^


きっと…この後この2人は、………(^^)…ここを、ワザと書かない所が、憎いですね~^^

私の勝手な解釈ですが…少女のつぶやきが、北風にのって~少年の木枯らしにのって~

黄いろい葉っぱと赤~い葉っぱの妖精に届いて~彼女らが動いてあげた様に感じました^^


映像としては…駅から来た~木枯らしと公園の北風さんが

公園の真ん中でぶつかって渦巻きになって~

黄色い葉っぱ(妖精さん)と赤い葉っぱ(妖精さん)が、

可愛く~♪ くるくる周ってダンスしてる様子が…頭に浮かびました^^




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2013/10/27 12:13
ちょっと展開が分かり辛かったかな?

もう少し構成に工夫が必要かしらね?

(#^.^#)



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