温かい掌 【 短編小説 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/10/13 16:52:57
ギュッ......
力強くて、そしてどこか優しい音を鳴らして繋ぐ手。
そんな大きな手と繋いだ手を見ながら、彼女、河野彩夏は微笑む。
今の季節と同じの紅葉の色で、両頬は真っ赤に染められて行く─。
そんな彩夏の微笑みに気づいた主人公、川崎秋斗が首を傾げながら、彩夏に尋ねる。
「 何笑ってるんだよ? 」
「 あぁ、ごめん。なんか...嬉しくって。 」
つい零れる笑みと共に、出てくる素直な感情の言葉─。
そんな彩夏が可愛く見えた秋斗はパッと目を逸らした。
赤面してる自分がバレたくなかったのだ。それに気づかない彩夏は微笑みっぱなし。
少しさっきの自分の発言に照れてはいたのだが、それ以上に幸せのほうが勝っていた─。
二人の歩く一本道に紅葉(もみじ)の葉がハラハラと落ちてくる。
その度に、彩夏は嬉しそうにその葉に指を差しながら言うのだ。
「 あ、見てッ!!紅葉可愛いねーッ!! 」
「 可愛いぃ?えぇ、可愛いかァ...? 」
何でも可愛いという彩夏の事だ、適当に言ってるんだろう。とも思った秋斗だったが、
今回ばっかりはなんだかいつもの”可愛い”とは違うようにも見えた。
そう思った秋斗は、彩夏が追いかける紅葉の葉を必死に捕まえようと手を伸ばした。
身長152cmの彩夏と比べて、秋斗は184cmもある。当然すぐに捕まえれたのだ。
そんな秋斗を見て、彩夏が一言。
「 わぁ、秋斗すご~いッ!!! 」
「 アハハ、それほどでもー。 あ、ほれ。 」
「 ありがと、秋斗!!!一生大事にするからねッ!!!! 」
そう言って、秋斗の掌のような大きな紅葉をスッ...と、渡した。
彩夏は嬉しそうに両手で紅葉を手に取り、ニッコリと満面の笑みを浮かべる。
そんな彩夏の笑顔を見ているといつも心がホッコリし、なんだか安心した気持ちになる。
彩夏と付き合って良かったと思う所は他にもあるが、秋斗の中ではこれが一番だった─。
そんな思い出に浸っている秋斗の袖をツンツンと引っ張り、彩夏が笑顔のまま言った。
「 ねぇ、覚えてる?彩夏達が出会った時の事..... 」
彩夏は俺を試しているのか?そんな疑問を持ちながらも、コクリと頷き、
秋斗は「 覚えているよ。 」と優しく答えた。すると彩夏は追い討ちを掛けるように、
秋斗の顔を覗き込み、ジィ...と見つめた。
「 本当にぃ~? 」
「 覚えてるって言ってるだろ? 」
「 じゃあ出会った季節はいつでしょうかッ!? 」
「 ちょうど一年前のこのくらいだ。 」
「 おぉ、大正解ッ 」
パチパチと手を叩く彩夏を見ながら、忘れるワケもない。と心で呟く。
秋斗は再び思い出を蘇らせた。そう、秋斗の言った通り一年前の秋の話だ。
高校に入学して半年が経ったくらいの時....。
彩夏と秋斗のクラスは別々で、出会うはずもなかったのだが....
これまた運命的な出会いで、秋斗の唯一の特技、野球が二人の出会いを導いた。
少女漫画でもよく見るマネージャーと野球部員の熱い恋の物語だ─。
最初声を掛けたのはどちらかさえも覚えていないくらい、気づけば親しい仲になっていた。
そして、告白した方はしっかり覚えている。それは秋斗の方だった。
部室の中で、仲間達に協力してもらって2人きりになり、その場でストレートに告白した。
─そして、今に至るというわけだ。
秋斗は思い出を蘇らせながら、俺も頑張ったなあの時。と、自分を褒めた。
そんな秋斗の横で、彩夏がまた服の袖をツンツンと二度引っ張った。
秋斗はくるりと振り向き、用件を尋ねる。すると彩夏はまた頬を紅色に染めていた。
「 ねえ、あの時も紅葉くれたよねッ!! 」
「 え、ああ。そういえば。 」
「 彩夏あれ、しおりにしたんだぁ~。可愛かったしッ 」
「 サイズもまあまあ小さかったし、しおりにはピッタリだな。うん。 」
「 でしょ?でも今回の大きいからぁ..... 」
「 ....持って帰るんだ。 」
「 当たり前でしょッ!?秋斗の気持ちだもんッ。 」
まるで威張るかのようにエッヘンと息を吹いた彩夏を見て、はあとため息を零しながら
どこか憎めない彩夏の焦げ茶色の頭をよしよしと撫でた。そして、自然と笑みが零れる。
そんな秋斗を見ながら、手をギュッと強く握り返す彩夏。
「 ....秋斗の手、温かいね。 」
その言葉を聞いて、秋斗は思った。
─馬鹿野郎...。お前のほうが温かいだろ。
こんな恥ずかしすぎる事、秋斗は素直にいえないため、ゴクリと飲み込んだ。
そして、照れ隠しをするかのように彩夏の手の中にある紅葉を取り上げ、
「 ほれ、こーしとけよッ!!!! 」
と、まるでその紅葉と手を繋がすかのように彩夏の手と紅葉をあわせた。
その紅葉は本当に秋斗の手に似ていて、温かかった。
自分の手に握らされた紅葉を見つめ、彩夏はハッと閃いたような顔を浮かべた。
「 そうだ。これだッ....! 」
「 えッ? 」
その後、彩夏のごきげんはすごく良くなり、訳は秋斗には話してくれなかった─。
だが翌日、彩夏の家を訪問してみると、彩夏が嬉しそうに秋斗を
自分の部屋に引っ張っていく。なんだなんだと思いながらついていくと、そこには
小さな棚に置かれた額縁に飾られた一枚の紅葉があった。
ポカンと口を開く秋斗に向かって、彩夏はニコッと笑顔を見せながら言った。
「 秋斗が手に握らせた時思ったの。秋斗の手に似てるなぁ~って 」
「 だ、だから飾ったの....? 」
「 うん...。寂しい時でもあの額縁に触れると秋斗と一緒な気がするし.... 」
「 .....彩夏 」
「 だからもうこれで彩夏は寂しくないよッ!!いつも秋斗と一緒だもんッ!!だからさ.... 」
少し言葉に詰まり、目を潤ませながら彩夏はゆっくり口を開いた。
その後何を言うか秋斗にも少し予想はついていた。
「 だから....秋斗は彩夏の事気にせずお仕事頑張ってねッ!!!! 」
そう元気に言った言葉とは裏腹に、彩夏の頬は濡れていた。
秋斗は今思う。そういえば最近はバイトとか忙しくて会えてなかったなと。
あの紅葉デートだって本当に久々だった。彩夏に寂しい想いをさせていた...と。
そう思った秋斗は居ても立っても居られなくなり、彩夏を力強く胸へと抱き寄せた。
「 あ、秋斗....? 」
少し戸惑いながらも、背中に腕を回す彩夏─。
秋斗はただ目を瞑りながら、彩夏の温もりを感じていた。
そして、秋斗は言った。
「 じゃあ次はあの額縁の横に俺らの写真飾ろうな。 」
「 えッ、いいのッ!?だって秋斗写真は嫌いって.... 」
「 気が変わったんだよ。ほれ、約束だから。 」
「 う...うんッ!!約束ッ!! 」
さっきまで濡れていた彩夏の頬はあの時と同じ紅色に染まった。
そして、お互い感じあった。小指と小指を繋いでるだけでも感じる温もり。
お互いの温かい掌に改めて気づかされたのだった。
*END*
純愛ラブw
話の書き方とか、比べる訳じゃないけど、相当レベル上がってるね^^
こんな幸せな恋がしたい・・・