Nicotto Town



no name:2 HOLE

※グロ?注意


「かりありす。まだ、穴を掘っているの?」

黒い兎が至極愉快そうに、立派な時計を見ながらいいました。

『はぁ・・・はぁ・・・』

水色のドレスとエプロンを着た「(仮)アリス」と呼ばれた少女は
自分の身の丈がすっぽり収まる穴を更に深く深くと掘っていました。

「あぁぁ、白い兎を追った所までは良かったんだけどね~」

黒い兎、いや人の形をしたソレは大きな兎の耳をピコピコさせながら
後ろを向き肩を震わせる。

「まさか、落ちた穴がこんなにも浅いとは。」

チラリと見る少女が収まる穴は、さっきよりは深くなっていた。
彼女の腰元くらいしか無かった深さは、
すっぽり彼女を覆う程深くなっている。

だけど、ワンダーランドまでは、まだまだ浅い。

彼女の頭のリボンが掘る度に、ピコピコと跳ねて実に愉快で滑稽だと、
黒い兎は再び笑いだす。


「折角のドレスも真っ黒じゃないか。」

泥をかぶったドレスは綺麗な水色の後も残さず、くすんでしまった。

「ねぇ そんなにまでしてアリスになりたい?」

穴の外から、つまらなそうに覗き込む黒い兎。

少女の返答は無い。ただ、ひたすら掘り続ける。

『はぁ・・・はぁ・・・』

―ガッ

『・・・ぁ』

彼女の右手が何かにひっかっかる。
それはワンダーランドの扉。

彼女の顔に歓喜の笑みが溢れる。

掘って掘って掘って

現れたのは、肌色。


『・・・・なに・・・』


これは手。

これは顔。

これは私。

そこに埋まってるのは私・・・?

アリスの姿では無い本当の私

「あははははは・・・・!」

黒い兎の笑い声が降ってくる。

「そうか、だから君は「仮」アリスなんだったっけ?アハハハハ!」

『嘘よ・・・そんな・・・』

彼女は泥まみれの手で顔を覆い震える。

「残念だったねname。」

黒い兎の初めてかけた、優しい言葉が彼女を抉る。

見上げた穴は思ったより深くなってしまった。
きっと誰かが手を差し伸べてくれれば、そこからは簡単に出られる筈なのに。

黒い兎は満面の笑みを浮かべる。

『ぁ・・・』

「ダメだよ。自分で這い上がってこなくちゃ。自分で掘ったんでしょ?
あぁ、確か東洋にそんな様な例えがあったなぁ、なんだっけ。
墓穴を掘る だっけかな?アハハハ!本当に墓穴だね!」


墓穴


少女は足元に横たわる自分を見る。
これが私が招いた結果?
ワンダーランドに焦がれすぎた結果?

きっと、『助けて』と叫び続ければ誰かが来て助けてくれるかもしれない。
でも、それは白い兎が只の夢だったと認める事になる。

戻るか。
掘るか。

戻れるのか。
戻ろうと藻掻くのか。

黒い兎がケタケタ笑う。「さぁ選べ」とケタケタ笑う。

少女はその顔に見覚えがあった。
アレは学校の先生?両親?

違う  私。

一人で登れないかもしれない。
でも、誰も助けに来てくれないかもしれない。
もっと掘ればワンダーランドが有るかもしれない。
戻るのが怖い。誰も来ないと知るのが怖い。ワンダータンドを否定するのが怖い。

黒い兎はケタケタと笑い続ける。
有限な時間の中で君はどれをえらぶ?

「選ぶのは、君」だと。


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ワンダーランドに落れなかった子  END




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