Nicotto Town


うみきょんの どこにもあってここにいない


大野麥風展 2


大野麥風展からの帰り(1から)

 自宅最寄駅に着いたのは午後三時半ぐらいだったか。朝のバイトをして、それから別のバイトにいってきたのと同じぐらいの時間がかかっているわけだ。それなのに、なんと違うすごし方をしたのだろう。
 駅からの帰り道。いつも通っている、田んぼのある公園。だいぶ稲穂が傾き、そして色づいてきた。根元に用水路から配された水がたたえられている。いつもはもう乾いて、ひびわれた土が見えているのになと思う。けれども用水路から田んぼに送り出される水の、その流れに、ふわっと、ここちよいものを感じた。
 そこをぬけて、小さな林の小道で、彼岸花が咲いているのを見つける。ほんのすこしだけ、咲く時期をまちがえてしまった、といったふうに、ひとつだけ。となりの花茎は、ともしびのようなつぼみをつけてはいるが、まだ、地中からでたばかり、といった風だから。
 だから、まだ、彼岸花が咲いたのだという実感がわかなかった。けれども、そろそろ、咲く時期になったのだなと、やわらかく思う。おそらく、あちこちで、あのともしびのような花茎が顔をだしはじめているのだろう。こんなことをどこか懐かしく、そしてやさしいものとして感じているのは、やはり展覧会にでかけてきたおかげなのだ。ハクセキレイが目の前をよぎった。羽ばたき、羽ばたかないを繰り返して飛ぶので、飛びながら落ちる子だ。羽ばたかないままの姿で地面に着地した。白と黒のコントラストが夕方の日差しに、よく映えている。明日はバイトだ。




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