やってきたのは殺し屋さん?
- カテゴリ:日記
- 2013/09/13 22:36:39
サンリエッタ通りの四番地にあるサン・パルティモ聖堂のちゃいろい大扉の前にバルザックと呼ばれる男が立っていた。
髪の色は銀色・・・瞳は赤い。
左手にはステッキを持ち、タキシード姿だ。
軽くステッキを持ち上げ、大扉の錠前に照準を合わせる・・・銃声と、共に錠は壊れた。
ステッキの姿をした携帯銃からは白煙が上がり、嫌なにおいを周りに残す。
男は茶色の大扉を右足で蹴飛ばして中へ入って行く。
教壇には一人の神父が背を向けたまま、何かを祈っていた。
「ここは望みを叶える教会かね、神父どの」
「・・・いかにも。ここは望みを叶える教会・・・サン・パルティモ聖堂だが。貴殿はどのような望みをお持ちかな」
「オレの望みが知りたいか?奇跡の大聖堂と呼ばれているこの聖堂にいる神父どのを殺すことだ!」
「ふむふむ・・・それはそなたの世界に対する望みだな・・・いい望みではないか」
「おい、ちょっと待て。いい望みって何だ?神父どのを殺すと言っているのだぞ。それともこの銃が偽物だと思っているのか?」
「質問を変えよう・・・そなた自身に・・・貴殿自身に関する望みは何だ?」
「おい・・・ちっ。まあ、いい。オレ自身だと・・・そうだな・・・あまり考えたこともなかったが。本当は心さびしく、認められたい自分自身を認めてやることだ・・・」
「ほほう。そうか、それもいい望みではないか。さて、その二つの望みを貴殿は知った・・・どちらも大切なそなたの望みだ。その二つの望みを知った上で、受け入れた上でそなたは何を選ぶ」
「大切・・・?どちらも?神父どの・・・ますます頭がおかしいのか?オレは神父どのを殺すと言った。どこが大切なのだ!そしてオレの望みなどただの自己満足ではないか!」
「そなたはあらためて二つの夢を否定することを選んだ・・・怒鳴って気持ちは落ち着いたかね」
「・・・受け入れてもいいのかよ」
「わからんかもしれんが・・・それがセフィロト(陰と陽)の教えだ。受け入れたモノにしかわからない上の世界が見える・・・受け入れてみせよ」
「神父さんを壊したいって思うオレがいてもいいのか?いいんだな。そうだったのかよ。うそだろ?いや、いいのかよ・・・本当はさびしくて認められたいんだよ!オレ自身を見てほしいんだよ・・・だから、国で一番有名な神父さんを殺しにきた。そんな自分をどうやって受け入れる?」
「貴殿が貴殿を認めればよい。それは一番悲しい運命かもしれぬ・・・。親に認めてもらえる子もいる。やさしい友人、教師に認めてもらえる子もいる。だが、貴殿はそうでなかった。貴殿は貴殿だけが・・・貴殿の偉大さを知っている。受け入れられるはずじゃ。尊重せよ・・・」
「ああ、そうだ!誰も認めてくれる奴がたまたまいなかった・・・一番悲しい運命とはよく言ってくれたものだ。涙がとまらねえ」
「わしの助けがいるなら・・・わしが最初にお前を認めてやろう。よいかな」
「・・・たのむ」
「神の名において、そなたを認める。そなたも私も神の子。兄弟である。さあ、一緒に祈ろうではないか、兄弟よ。アーメン」
「・・・・・・オレ、神父どの。オレ」
「今日は泊まって行くがよい。よいかぼちゃのスープも用意できる。かぼちゃは嫌いか」
「いや、好きだよ。神父どの」
教会には泣き崩れる男と、背中をさする神父がいた。
END
ますます、自分と友達になりたい☆そうおもいました。
今夜は、かぼちゃのスープを作ることにしました。
かぼちゃのスープを作るたびに、このお話を思い出せるように。
久しぶりにありがとうございます。
自分で自分を認められないということは、
他人から認められないということよりも
辛い・・・ということが。