Nicotto Town


うみきょんの どこにもあってここにいない


耳栓


ひさしぶりに電車にのる。
車内がくるさい。
街中もざわめきがきになる。
耳栓をする。
多少はましだ。
美術館についた。
ここでも耳栓をしていた。
だがすいていたので
しなくてもよかったかもしれない。
美術館はひとりでゆくものだと思う。
というか、わたしはひとりでないと
絵にむかえない。
絵と対話ができない。

美術館を出て、二駅先にあるという海の見える公園へ向かう。
コンビナートなどや埋め立て地が見えるし、
公園自体が埋め立てだし、人口海岸だ。それに海の水も灰色じみている。
だが海だ。
ともかく海だ。波が打ち寄せている。
わたしはこれが見たかったのだ…。
ふと、耳栓をしっぱなしだったことに気付く。
あわてて、とる。
波の音。
そうだ、耳からも景色を感じなければいけないのだ。

空はくもりだったが、ヤコブの階段が海にむかってかかっていた。
自然からの贈り物をもらったようだ。
カメラをもってきてなかったので、携帯で撮る。

海を背に、公園を通ってまた駅へ。
秋の虫の音。
こういう場所では耳栓をしていてはいけない。
こんなに鳴いていたのだと思う。

けれど帰りの電車でまた耳栓をした。
最寄り駅について、今度はすぐに耳栓をはずす。
自転車置き場からすら虫の声。

暑さも一段落。
さびしい秋がまたはじまるのだろう。
すごしやすいのに、どうして秋よりも夏のほうが好きなのか…。
いまだに。
夏はこんなに暑く、たおれそうな季節だというのに。
夏はピークで、秋は終りにむかってゆっくり流れる季節だから。
いまだに。

キンセンカだったか。どこかでみたその花が、
きょうみてきた美術館でみた花のようだった。
なんといえばいいのか、作品として展示されているみたいだった。
ちいさな錯覚もうれしく。




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