Nicotto Town



HANABI(自作小説倶楽部お題)

HANABI
副題:自作8月/ 夏の花

夏の夜空の遥か彼方には二つの輝かない星が浮いていた。
「要求を聞こう」
視野に恒星系入れてデュランは腕組みをする。
「要求はない。決定事項だ。この実験領域は処分される」
マゾーラは指示を視野に示した。
「実験領域じゃない。観察領域だ!」
通達をはねつけデュランは激しく抗議した。
「大した違いはない」マゾーラは動じない。
「大きな違いだ。200億種以上の生物を抹殺する権利は君にはない」
「抹殺するんじゃない。処分だ」
「いったいどうするつもりだ?」
「いい機会だから、こいつの実験を兼ねようと思う」デュランの手元にそれの複製が瞬時に具現化される。「こないだ実験依頼<モニター>が来てた発熱剤だ」
「おい!これはクラス2の戦略兵器だぞ」
「そうなのか?」マゾーラはわざとらしく驚いて見せる。「まあ、大したもんじゃないだろ。連中が通販で売るつもりのものだ」
「これは熱核爆弾なんだぞ」
「原理はそうだ。実験はこいつで地表を軽くローストするだけだ。だからお前の言う抹殺は起こらない」
「核反応熱だぞ。地表は何も残らない」
「そうだな。ま、お前が大事にしてるあのエテ公は死に絶えるかもな。実験が成功すれば良い駆除剤になる」
「実験だ?いったいどれだけ死ぬと思っているんだ?」
「さあ」
「少なく見積もっても100億にはなるんだぞ!」
「興味はない。俺だって毎期2兆のモサモサを虐殺してる。100億なんて大した数じゃない。それに、どうせ遅かれ早かれ死ぬ運命だ」
「だが、彼らに無関係な死だ」
「ではこれは事故だと思ってくれ。事故は偶発的に起こるものだ」
「偶発的じゃない! 君が引き起こすんだ」
「責任の所在を言いたいのか?」マゾーラはニヤニヤと笑う。「じゃあなんでそもそも俺がこんなことをしてると思う?」
「知るもんか!……いや、待てよ。まさか、まさか僕が原因か?」
マゾーラはとぼけた表情で笑っている。
「そうやって、罪悪感を喚起させようたってそうはいかないぞ。あれは事故だ。事故だったんだ!」
「じゃあ、これも事故だな」
「あれは!赤色巨星化は時間の問題だった。たとえ潰縮領域を展開しなくたって―――」
「これは決定事項だ。お前がどんな勘違いしようとな」
「待て。いったいどうして欲しいんだ?僕に謝ってほしいのか?」
マゾーラはやれやれという顔するだけだった。そしてスイッチに手を伸ばす。
「よせ!やめろ!!間違っている」
「いや、俺は間違っていない」
そういってボタンを押す。
「やめろぉぉぉぉ!!!」

流星は飛翔し、炸裂音とともに夏の夜空に花を咲かせた。

「花火か?あれは花火だったのか?」
「思考だけじゃなく視覚までおかしくなったのか?」とマゾーラは反応を顎で指し示す。「あれが核爆発に見えるのか」
「まったく…」
デュランは安堵する。
「多幸剤を持って、オリオンだ。花火大会がある」
そして二つの星は夏の夜空の彼方に消えた。
<END>

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2013/09/07 22:25
ドッキリ的なサプライズw
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2013/09/03 11:31
萌さんの真骨頂ですね。
花火にどうやって落ち着くのかと思っていたら…
核爆弾かと思いきや、花火。
巧い^^
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2013/09/01 15:20
SF作品ですね(^O^) 遠い宇宙の彼方で人類の命運を握っているお話♪
スケールを感じました。
一番印象的だったのは、マゾーラ!!
マゾですね…(^_^;)
アバター
2013/09/01 00:48
サークルより拝読しに伺いました。

テンポの良い会話になっています。
設定がはっきり見えずに進むお話しであっても、このテンポの良さが力を発揮していると思いました。
会話の言葉使いを自分の思う設定の「役」にしっかりとはめることで、口調のはっきり違う二人が出来上がると感じます。
最後の章の部分は、前と違って静かに会話が進む様子がとてもよく表現されています。
前半と後半のめりはりがよく効いていますね。
こればかりは読み手次第になるのでしょうが、私は後の部分の流れの雰囲気が好きです。
静と動をうまく使ったストーリーに出来上がっていますね。
ありがとうございました。



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