「幻覚の満月」
- カテゴリ:自作小説
- 2009/08/10 22:23:30
古びた町並み。人気と明かりが無くシンとしていて、この世には自分以外誰もいないのではという錯覚を引き起こす。
気まぐれにふと見た夜空にある満月があまりにも妖しい美しさを纏っていたので、幻覚かと一瞬思った。今までに見たことも無いような、女のような色香がその姿から感じられる。
けれどもこの虚ろな眼に映るのは、確かに本物の満月だった。
銀色の静かな光を放つ満月に、そっと手をのばす。
当然、届かない。
届かなければ。
手に入れることができなければ。
それは幻覚と一緒ではないか。
ふ、と自嘲気味なため息をつく。
やけに感傷的になったものだな。今宵の妖艶な月光にアテられたのだろうか。
こんなおかしな自分は嫌なので、早々にその場から立ち去る。
早く空を隠す屋根のある家に逃げたい。
儚く。
艶やかに。
崩れ去るのは。
幻覚の満月。
重ねるのは、届かない思い人。
導入部分は自分が憧れてる異国の古い町並みをイメージして書きました*
姿を見るだけじゃ、会うなんて言わないんでしょうね。
切ない。
穏やかな、心静まるメロディーでした。
丁度、この小説もどきの主人公の思い人の気持ちにシンクロしてるかな、と。
ありがとうございました*
>重ねるのは、届かない思い人。
わたしも今、重ねてみました。
たぶん、永遠に会えないんだろうなと。
其の姿は見えても。
http://www.youtube.com/watch?v=9B9sIs5HE40