Nicotto Town


うみきょんの どこにもあってここにいない


蓮のおわりのはじまり、きれいはきたない泥の花 1

この絵…海の底をブログにはりつけたくて
イベントで投稿しているという(笑)

 六月二十二日に埼玉県久喜市菖蒲町にラベンダーを見に行った時、途中のサービスエリアで、一枚のチラシを見つけた。おおきな蓮の花一輪、「古代蓮の里」とある。場所は行田市。六月下旬から八月上旬まで。久喜市を越えて二、三十キロほどのところらしい。近くには埼玉古墳群がある。連れが特にこちらに興味があることもあり、出かけることにした。今年は七月半ばくらいが満開らしい。そして花は早朝から咲き始め、午前中には閉じてしまう。見ごろは午前七時から九時と、市のHPに書いてあったので、午前九時に到着するようにした。道は途中までラベンダーの時と同じなので、途中、以前見た田んぼにまた出会ったりする。前回出かけてから二十日ばかりたっているから、稲がだいぶ伸びている。前回は稲と稲の間に水をはった土が見えていたが、もはや見えないぐらいに成長している。もっと手前、荒川を渡るとき、大きな川の向こうの建物群がかすんでみえた。靄なのだろうか、煙霧なのだろうか。湿度がたかい、ねばつくような曇り空だったから、靄なのかもしれない。蜃気楼のようだと思う。蜃気楼を見たことがないのだけれど、消えてしまいそうな、幻のような建物たち、その姿に、どこか惹かれる。それは非日常と親しいものだから。
 行田市の古代蓮は、元々は一九七一年、市のゴミ焼却場建設工事として造成作業をしたことで、偶然掘り起こされ、二年後、掘削によりできた池に自然発芽・開花したもの。かなり原始的な蓮で、約一四〇〇年~三〇〇〇年前のものだとか。発見されたところからすぐ近くを古代蓮の里、公園として整備して、今に至っている。元々の発見のきっかけがゴミ焼却場建設のためというのが、いかにもこの花に合っていると思う。泥の中からすっくと美しい花を咲かせる蓮。
 古代蓮の里。出入り口入ってすぐにイベント会場、地元野菜や名産品などの売店…のイメージだが、じつは世界の蓮園がイベント会場よりも手前に長細く咲いていた。と変な書き方をしているのは、イベント会場(さまざまな屋台や、テントの休息所、歌謡ショー)が混雑していて、そればかりに目に行ってしまい、手前の蓮に殆ど気付かなかったから。九時だというのに大変なにぎわいだった。早起きだなと思う。イベント会場の向こうは広場、丘になっている。桜も植わっているようだ。桜の時期は花見ができるのだろう。丘を左手にみながら進むと、いよいよ古代蓮の行田蓮池。花が大きいからだろうか、突然、目の前にやってきたような感覚。写真に撮っても、なにもせずとも接写したかのような存在感。ここにくるまでに見ていたはずなのに、というか認識していたはずなのに、わたしたちの腰のあたりで咲く花たちにであって、あたかもはじめてここで咲いているのをみたように、強烈に、近しさを、存在として主張してくるというか。
 ところで、わたしは蓮といえば、こちらも古代蓮の大賀蓮(千葉公園など)や、上野の不忍池などで、見たことがあると思うのだが、こんなふうに花が開いているのをみるのは初めてだったような気がしている。開いた花の真ん中の花托。漏斗状というか、シャワーの先端みたいになっていて、平たい先端に穴があいている。そして穴の中に後日、硬い種ができるのだが、ともかくこの花托を花びらの中で見たことがなかったので、花が開いた状態で見たことがなかったことに気付いたのだった。花托がみえない午後のそれは、だが、閉じているというより、芍薬とかボタンとかみたいに、はなから花托がないように見えていた。あるいはそれは巨大な、茎を水面上にのばしたスイレンだった。スイレンは茎が水中にあるし、スイレンは花托がない。わたしはずっと花びらでおおわれた花托の存在をしらなかったのだ。せいぜい枯れた後のものしか…。考えてみればおかしな話だ。開花は午前中だけ、ということは前から知っていたのだが、午後にも咲いているように感じていた。それに花が終わった後に、今まで目にしていた花托、茶色く枯れた色のそれが、どこにあると思っていたのか? 花の下についているのだと思っていた。茎と花の間をつなぐものだと思っていたのだ。だからこうして、花ひらいたそこにある花托の存在は新鮮だった。その新鮮さが、接写したかのような存在感たちでにぎわせていたのかもしれない。実際の花の大きさはおそらく直径三十センチほど。そして蓮は明るかった。そこだけ雰囲気が明るくなるというか、華やぐというか、曇っていたにもかかわらず、ひなたのような印象をかもしだすようだった。

(続く)




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