Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


ストロベリーラブ *11話*

斉藤苺華…特に何もない平凡な女子。この春、初めて恋という存在を知る事になる。
日村一樹…同じクラスになった。苺華の心を奪う。クールに見えるがそうでもない。
長谷川香理奈…かつて苺華と仲が良かった女子。今回のクラスで偶然再会を果たした。
宮木功…イケメンだが、バカ。香理奈の心を奪いかけているらしい。
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第十一章 『 悲しみの雨 』

「 んふふっ…♡ 」

昨日のことを何度も何度も思い出しながら歩く通学路─。
香理奈に「 気持ち悪い 」と言われるのは承知の上だった。

…そして、待ち合わせ場所に到着。

「 香理奈ぁ~!! 」

香理奈に目掛けて手を振った─。
だが、香理奈は深い深いため息をして、こっちに見向きもしない。
まさか…この大声で聞こえてないとか──?

「 香ぁ~理ぃ~奈ぁ~!!!! 」

私は最大の声で叫んだ。

「 うわあっ!! 」

さすがの香理奈もこの大声は耳に入ったみたいだった。
しかもこんなに驚いている…。本当にさっきは聞こえてなかったみたい。

「 香理奈…どうしたの?今日なんかおかしくない? 」

そういうと、いつも涙を見せない香理奈が涙を浮かび上がらせた。

「 え、うお、ちょ…!!何があったの!? 」

戸惑いながらも、私はしっかり香理奈の肩さすって言った。
すると、香理奈は私の腕を掴んでゆっくり…ゆっくり話してくれた──。

「 わ…私…、昨日宮木君に告白されたのっ…。 」

「 え…、な、何それ…よかったじゃん!!!! 」

「 違うのっ!!!! 」

突然香理奈は大きな声を出した──。
いつも怒鳴らず笑っている香理奈が初めて怒鳴った。

私はとりあえず、そのまま黙って事情を聞くことにした──。

「 …宮木君に”好き”って言われてテンパッちゃって…んで、んで… 」

「 まさか…振ったの…? 」

そう尋ねると、ますます香理奈は涙で頬をぬらした。
そして、また大声で言った。

「 しょうがなかったのぉ!!あの状況だったしっ!!! 」

「 え…えぇ…?あの状況ぅ…? 」

そう尋ねると、香理奈はベンチに腰を掛けた。
二人とも腰を掛け、大きく深呼吸をした。

「 …実はね 」

香理奈の声は次第に小さくなっていくばかりだったが話してくれた。
その話はゆっくり、ゆっくりと私の鼓膜に染み付いていった──。

「 嘘…でしょ…? 」

「 本当なの。 」

簡潔に話すと、あの時保健室で宮木君に告白された時──、
すぐにOKしようとしたらしいんだけど…その瞬間、香理奈の双子の妹、
玲奈( れいな )が入った来たらしい。
その刹那、香理奈は妹の目を見てすぐわかったらしい──

「 玲奈は…宮木君が好きなんだ…。 」…と。

玲奈ちゃんのことは私もよくしっている。
学校の人気者で、モテモテで、香理奈とは少し違う魅力がある。
もちろん、香理奈も美人の部類に入るんだが──、玲奈ちゃんのほうが色っぽいのだ。
髪も長くてサラサラヘアーで、栗色のいい具合の髪色。モテ女の全てを持っている子だ。

…香理奈がひるむのは無理もないけど。
ただ、「 妹だから。 」っていうのもあるだろうなぁ。

香理奈も玲奈ちゃんに負けないくらい美人だし。

「 …何、突然黙っちゃって。 」

「 え?いや、その…。 」

なんだか言いづらくなっちゃったな、付き合った報告が…。
そう思った瞬間、香理奈は口にした──。

「 おめでとう、苺華。 」

…と。

「 えっ!? 」

思わず大きな声が出てしまい、香理奈を見てしまった。
目を丸く、丸くしていただろう。今までなかったくらいに──。

そんな姿を見た香理奈は笑った。
もちろん、つくり笑いだった。すぐにわかる。…きっと誰にでも。

「 あははっ、そんなん知ってるに決まってるじゃん~。 」

「 な、何で…? 」

「 派手に保健室の前でやってたもんね?告白。 」

「 き、聞いてたの…? 」

そう尋ねると、香理奈は小さく”コクリ”と頷き、そのまま動かなくなった。
…まるで銅像のように固まってしまったのだ。
動いているのは睫毛と瞼だけだ。

「 あ、あの…、香理奈っ…! 」

「 気にしないでっ。 」

私が何を言うか気づいたように香理奈は言った。
その時の笑顔は今まで見た事ないほど残酷で、複雑だった──。

きっと今、香理奈の心には棘がたくさん刺さっているのだろう…。
何もしてあげられないのが辛い…。なんとかしてやれないのか…?

「 …玲奈には幸せになってもらいたいの。 」

「 …え? 」

ポツリと呟く。
まるで雨が小さく地面に音を立てるかのように…。

そして、香理奈は続けた──

「 玲奈は私の一人の妹だから。…幸せになってほしい。 」

「 香理奈…。 」

そう言ったときの香理奈の目は本物だった──。

ポツ…ポツ…ザァァァァァァァァァアッ…!!!

ただいまの時刻、午前7:30。
私達は約30分間もこの話をしていたらしい…。
もう学校に足を運ばせてなきゃいけない時間だった──。

───でも
私達は一向にその場から離れようとせず、
ただただ空から降る大雨を体に浴びせていた…。

この雨はきっと香理奈の悲しみだ。

そんな事を思っていると、この雨を浴びなきゃいけない気がした。
香理奈の悲しみは私の悲しみだ…、一緒に乗り越えてあげたい。
 
そんな願いが私の体を動かさないように鎖で繋いでいた──。

※実話ではありません(続く)




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