フリーSS?
- カテゴリ:自作小説
- 2009/08/07 19:48:05
あるサークルの掲示板に書き込もうと思ったんですが、
サークルに参加していないと無理なんでしょうか。
というわけで。SS。
りりりりり…。
涼やかな虫の声。あれは羽音らしい、と、図書館にあった図鑑の知識を、目の前の従姉妹に自慢げに言った。
彼女はふうん、と興味なさげにつぶやくと、ね、わたし、昨日髪きったのよどう?と返してくる。
いや、正月に会ったひとに髪を切ったといわれても。
…そんな本音を封じ、そうなんだ?長いのも見たかったよ、と当たり障りの無い返事を返す。
彼女はその返答に満足したようだった。
「りい君、松小の盆踊り出る?」
彼女の輝く笑顔。半ばこれが目的で親の里帰りに付き合っているなど…親にはいえない。はずかしくて。
りいくん、というのはオレのあだなだ。学校の友達にはリク、と本名で呼ばれている。
…叔母だな、最初は。オレが赤ん坊のときらしい。リクならりー君でしょ。なんでやねん。
…松小、というのはこのあたりの小学校らしい。松波小学校、だっけ。東日本から来たオレにはなじみのない地名だ。
目の前でやけに緊張した面持ちな従姉妹、ナユちゃんはオレと同い年の小学六年生だ。
叔母によく似たはっきりした顔立ちに、今は若干短めのふわふわとした髪。この可愛らしい容姿とその性格に、オレは惹かれていた。
地元の小学校に通う彼女は、浅く焼けた肌に残る日焼け痕を気にしているらしかった。
なげえよ!
投稿しなくて正解でした。
「ぜんぜん知らないところのお祭りならいいかなあ」
笑いながら言ったオレに、ナユちゃんが不可思議な表情をした。
「りい君とこってお祭りないの?
「…なんかね、同じ学校の人が顔合わすの、嫌なんだって」
従姉妹の素朴な疑問に笑って応える。
そう、ここはオレの現住所よりは、いわゆるイナカ、と称される、ふるきよき場所。
彼女の住む世界。東日本のどまんなか、親の不満に何も言えないオレの抱える本音を満たす…この場所。
人が人として暮らす以上、わかっているのに。
それでも、ねえ、従姉妹が浮かれる夏祭りに、嫉妬してもいいだろうか。