Nicotto Town


うみきょんの どこにもあってここにいない


おくのほそ道


むかしは、『おくのほそ道』
よさがわからなかったんだけど、
いいなあ。
ことばが重層的だ。
たたまれ、たたまれ、ひろげると、
世界が、古と、歌と、現在(彼、芭蕉のだ)を、緻密にむすびつけて
そこにあるのが、感じられる。
彼の旅は、決して、生半可な気持ちで行われたものではない。
それは境界をめぐる旅であった…。
それに気づいたから、かもしれない。
あるいは、日々のなかで、
植物たちをみて、おどろく、そんな心持のなにかと
ああした文章たち(日本的なもの、か)
の共通性に、ようやく気付いたからか。

角川ソフィア文庫のがいい。
最近近所にできた、割と大きなブックオフで、買った。
ビギナーズ・クラシック。
じつは、ネットでも、ビキナーズではないものを
注文してしまっている。
届くのが待ちきれなくて、買ってしまって、今読んでるのだ。
ビギナーズのほうは、現代語訳と原文が、近くにくっついているので
読みやすい。たぶん、もうひとつのほうは、原文だけが最初にのって、
あとで現代語訳がのるタイプのようだから、あちこちページを
くくることになって、少々不便だろう。
けれども、ビギナーズのほうは、個々の語句の注釈がのっていないので
それがものたりないといえば、そうだ。


苦手意識があるから、自信がないのだけれど、たぶん、
わたしは本当は注釈だけでも読めるはずなので…。
ということを、このあいだ、能『求塚』を録画したものをみて、
おもった。
こちらも注釈はなかったし、現代語訳もなかったけれど、
あらかじめ予備知識として調べた
あらすじなどで、

話される言葉の、
意味のすべてがわかったわけではないが、
おおまかなところは、わかったから。

現代語訳は手すりみたいなものだ。
手すりをつかわなくても、歩けるのだけれど、
いざというとき、そこにあってほしい。
つかまれるという安心感がほしいのだ。

まあ、『おくのほそ道』、二冊両方に、それぞれ良さがあるだろう。
ともあれ、ひさしぶりに、たのしんで本をよんでいる。







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