怖いSF 「エヴァが目ざめるとき」
- カテゴリ:小説/詩
- 2013/03/18 22:44:18
著;ピーター ディキンスン
チンパンジー研究者を父に持つ黒髪碧眼の13歳の美少女、エヴァが目ざめると、涙でぬれた母の顔があった。
聞けば事故で200日以上昏睡状態だったという。
強靭な精神力で動かない自分の肉体を理解するエヴァ。
しかし、絶対に鏡を見せてもらえない。ジャングルの夢。大きさの違う自分の手。
エヴァは自分がチンパンジーになっていることに気が付く。
・・・・起きたら虫になっていたという不条理小説はあまりにも有名ですが、この小説はSFで回復不能な患者の意識をチンパンジーの脳に移植する禁断の医療から始まる。
それにしても、
スキーやスケートが得意で優雅なポーズが自然な美少女が チンパンジーになって毛づくろい。
男の子の視線が当たり前の美少女がチンパンジーになって、興奮して高いところに登って叫んだり。吠えたり。。。
エヴァがどんな少女だったのかは最初の章で説明されて後半はあまりなかったけど、チンパンジーになりきって行くエヴァの行動を読むたびに鳥肌もの。
作品自体は読者を怖がらす意図はなく、魂のありかや、進化について示唆したものだと思います。最終的にエヴァは両親を捨て、人間の友達の協力のもとチンパンジーのコロニーを作り、チンパンジーとして生きることを選んでしまうのです。そしてチンパンジーを祖とする新しい人類の可能性を示唆して終わる。
しかし、エヴァ以外のチンパンジーへの移植被験者では目ざめさせたとたん9日間叫び声を上げ続けて死亡など連続失敗、 普通そうだよね。作者分かってる。
こんな小説だけど「ハウルの動く城」と同じ徳間書店10代向け小説になっている。恐るべし徳間書店。
こんな小説を10代で読まなくて良かったと思ったのでした。
チョット怖い話ですね。
10代の多感な時期に読むと良いとも思います。
でも考えると怖いですね。
それにしてもSFやFTや推理小説を、青少年の読み物と位置づけてきた日本の出版界。
その恩恵に預かった私は、かなりシニカルな考え方になったかなーー;