Nicotto Town


グイ・ネクストの日記帳


ジャンヌ・ラピュセル 3


「そんな村が燃えている。」悲痛な叫びをあげてジャネットはリルルの背中で泣き出した。今降りている坂を下れば村の入り口が見える
「わかっていたことだろ?アルフガルド軍が攻めてきたから逃げて…いや、ごめん」
「止まってください。祈りを捧げたいんです」
(こんな時に??)「わかった…」と、リルルは止まり、ジャネットを下ろしてやった。
ジャネットは目をつぶり、息をゆっくりと吐き出して祈り始めた。
「昼間に祈ることをお許しください。夜の女神ニュクス様…私の住んでいた村をお返しいたします。住んでいた人々をお返しいたします
。どうかニュクス様…この憎しみと怒りに染まった私の心に永遠の終わりと完全なる許しをお与えいただきありがとうございます。」

祈りが終わると、ジャネットの身体は赤く輝き出した。瞳の色は青色から赤色へ。聖なる印も現れ、ジャネットは歩く。
「おい!そのまま行くと」と、リルルは叫ぶ。
「……」ジャネットは無言のまま歩き続ける。
炎で崩れかかった村の門の奥を見据える。

村の門の前にオークたちが5匹現れた。「第1陣攻撃開始!」と、オークたちの後ろから号令が聞こえる。

オークたちは大きく振りかぶり斧を投げる。五本の斧が一斉に飛んで来た。リルルはそれをじっと見ていた。弓を構えて助ける素振りは無く、ただ何が起きるかを確かめたかった。

仮にも彼女は…彼女の身体には神に与えられし唯一の武器が宿っているのだ。あの剣の不可視の結界の強さは自分がよく知っている。
そうあんな斧などではびくともしない。

オークたちの投げた斧は不可視の結界によりて粉々に砕け散った。
これにはさすがのオークたちも戸惑う。次のアクションが消えて立ち止まる。
後ろから司令官の怒声が飛んで来ている。オークたちは今肌で感じている恐怖が偽物では無いと知っている。いや、理解しつつあるのだ

鉄仮面を被った司令官は業を煮やす。「第2陣突撃!」
10匹のオークたちが突撃してきた。ジャネットは戸惑う第1陣のオークたちを無視してそのまま歩き続ける。
第2陣のオークたちは前列5匹、後列5匹と別れて突進してきている。ジャネットは歩みを止めない。
 リルルはただ見守った。一体どんな戦いをするのか。
 前列のオークたちは飛び上がり、斧を振りかぶる。まさに渾身の一撃をジャネットに向かって振り下ろす。

 オークたちの斧は再び不可視の結界によりて壊れる。
ジャネットが叫ぶ。
「われを誰と心得るや!」
 後列のオークたちは止まった。足を止めたのではない。止まったのだ。
 ジャネットはまた前のめりに倒れ出す。赤き輝きも消え少女に戻る。
 リルルは弓を構えた。(力つきたのか?どうする?)

 司令官はそれを見るやいなや「第3陣突撃!」
 さらに5匹のオークたちに号令をかけた。しかし、動かない。第2陣の後列のオークたちは驚くことにジャネットを支えていた。
 最初の第1陣のオークたち、第2陣前列のオークたちも進行方向を変えて司令官の方へ進んでいる。

「貴様たち、この魔力石の恩恵を忘れたか!?この石のおかげで存在できているのだぞ」と、司令官は黒紫に濁った水晶を上に持ち上げて叫ぶ。
「ギューイ、ギュギュ(われらはマスターの元へ還る)」と、オークたちは声を揃えて答える。オークたちの声は水晶を通して司令官に
伝わる。

「マスターは私だ!とちくるったのか?ええい、分からず屋どもめ!魔力石の元へ還れ!エクスターム、ギャザー」と、司令官は呪(しゅ)を唱えた。黒紫に濁った水晶は初めに黒く輝き、次に赤く輝いた。最初に吸い込まれたのは司令官の手だった。「うぎぃああああああああーー」と、絶叫の声と共にあっという間に司令官は魔力石の中へ消えていった。

魔力石はオークたちによって壊される。壊れると同時に元の透明な水晶となりて飛び散る。黒紫の煙をあげながらオークたちの身体は消えて行った。自分たちが消えて行くと言うのにオークたちは安らかな顔をしたままであった。「ギューイ」と、1匹のオークがつぶやく。リルルはそれを遠くから見ていたが…笑っているように見えた。
 炎が集まって行く。それもジャネットの真上に。ジャネットは今、消えて行ったオークたちの手によって仰向けに寝かされている。
小さな炎たちが集まり、姿を取り出した。見たことのない鳥の姿に変化していく。(レミン村の村人たちの魂がジャネットにお別れを告
げに来たのだろうか。)リルルはふとそんなことを考えて鳥の姿になって空へ昇って行く炎を眺めた。

 ジャネットの所まで歩いてくると、村人が燃えている家を消火しているのが見えた。滅ぼされたわけではなかったと知り、リルルは膝を落とした。頬に熱さを感じる。それは炎による熱さなのか、涙の流れる熱さなのか…リルルにはどうでもよかった。ただ嬉しかった。


「牧師様…創る気持ちはわかるわ。でも幻よ」と、ジャネットの声が響く。
「……消えた」目の前に広がるのはただ炎、炎、炎。リルルの見た光景はどこにも無かった。
ジャネットは天を見つめながら涙を流している。
リルルは下を向いて地面を蹴った。足の痛みで怒りを紛らわそうとする。しかし、消えない。
「オークたちは笑顔で死んで行ったわ…許しましょう、リルル。許します…そうつぶやくだけでもいいから。」
「ジャネット、意外におしゃべりでびっくりしたよ。わかった…許します。そして幻が消える勇気を。村人たちの冥福を祈る勇気をお与
え頂きありがとうございます」
「ありがとう、リルル。みんなも笑っているわ」
「これからどうする?」と、リルルは聞く。
「南西のトゥーランドットへ」と、ジャネットは答える。
「そこに何がある?」
「私の親友、リリィがいます」
「そうか…最初の約束通り、部下になろう。弓使い、リルルです。職業は牧師。よろしくな、聖女様」
「今まで通り、ジャネットとお呼びくださいませ。恥ずかしいです」と、ジャネットは顔を赤くする。
「わかった」と、言ってリルルはジャネットの前に座り、背を見せる。
「いいんですか?」
「かまわん。君の部下だからな」と、リルルは答える。
 ジャネットは少し顔を赤らめながらも背負ってもらった。リルルの背の暖かさを感じながら親友のいる町が無事であることを祈った。

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2013/03/20 17:20
あ(*´∇`*)

読みやすくなってる^^
アバター
2013/03/18 19:21
今日、学校のお昼休み中に、じっくり読ませていただきました^^

面白くてついつい引きこまれてしまいました。
リルルとジャネットがトゥーランドットへ行ったあと、リリィと運命の出会いをするわけですね。
次の展開がどうなるか、とっても気になります。

リルルとジャネットの関係も可愛くて好きです(*^-^*)
次も楽しみにしていますね^^



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