Nicotto Town



年末年始に腐ってみました 8

とりあえず再会するまでです。
その後もありますけど、なが~くなるので^^;


遠矢4

草原から抜け出す事もできないまま、日が暮れてきた。
もしかしてこのまま野宿かな~。
「ねえ、あんたさ」
そんな事を考えていたら、トーヤくんが声を掛けてきた。
「あんたさ、火のつけ方知ってる?」
は?
「今夜は野宿するしかない訳だけど、こんな何がいるのかわからないところで野宿するにはヤッパ火が必要だろ? でも、オレ達火持ってねえじゃん。だからどうやって用意したもんかと思ってさ」
ああ、暗いと危ないし、もしも何か獣が出た時に、火があれば近寄って来ない可能性もあるかな。
俺は火をつける魔法がないか、本を開いて探してみた。

「えーと、『偉大なる火霊王よ、その暖かき心を我に分け与えたまえ』」
そう言ってトーヤくんが持った松明に手をかざすと、ポッと音を立てて火がついた。
すごい、魔法って便利だな。
「やった、すげー」
トーヤくんもそれを見て感嘆の声を上げる。
「だけどこれって、どのくらいの間燃えてんだろ」
それにはふたりとも首をひねるしかなかったので、とりあえず袋に入っていた大型ナイフで地面に穴を掘り、そこへ松明を何本か並べて置いてみた。<br>
これで次の松明へと火が移っていってくれるといいんだけど。

昼間と同じ食事を摂り、袋の中にあった毛布にくるまって横になる。
「1枚っきりなんてケチだよな~」
トーヤくんがぶつぶつそう言うが、正直二枚もあったら重くてたまんないと思う。
まあ、寝るのにちょっと不便だけど。
横になると、空に星が見えた。
星座にはあまり詳しくないけれど、日本で見上げる空とはちょっと違う気がする。
そうこうするウチ、いつの間にか眠ってしまっていた。

「ん…」
なんだか和也さんにキスされたような気がして目が覚めた。
夢だったのかな。
夜明けはまだだろうかと目を開けてみたら、辺りは真っ暗だった。
いつの間にか松明の火が消えている。
しかも、何かいるような気配がする。
(と、トーヤくん。トーヤくん)
小声で呼びかけると、トーヤくんはうるさいとかなんとかぶつぶつ言いながら目を覚ました。
「なんだよ」
「それが、火が消えてるし、周りに何かいるような気がするんだけど」
そう言うと、月明かりの下でトーヤくんがもそもそ動くのがかすかに見えた。
「あんたさ、火のつけ方覚えてる?」
「え、えと…多分」
「じゃ、とりあえずやってみてよ。ただし向こうを刺激しないようゆっくり動けよ」
「う、うん」
トーヤくんの言うように俺はゆっくり腕を動かすと、小声で呪文を唱えた。
その途端、松明に再び火がともった。その火の向こうに見えたのは…犬?

「ギャンッ!」
明るくなった途端、トーヤくんが一番近くにいた犬に蹴りかかった。
蹴られ、弾き飛ばされる犬。
なんかちょっと可哀そうかも。
なんて思っていたら、トーヤくんに
「おまえ! ぼーっとしてないで援護しろよ!」
と、怒鳴られた。
その間にもトーヤくんは別の犬に殴りかかっているが、最初に弾き飛ばされた犬も起き上がって向かってきているし、このままじゃ危ないかもしれない。
俺は慌てて本をめくると、目に入った呪文を唱えた。
「偉大なる火霊王の名に於いて我が命に従え。火よ、矢となり敵を撃て」
その途端、胸の前に掲げた両手の間に細い火の塊がうまれ、犬に向かって飛んで行った。




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