■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義(19)
- カテゴリ:その他
- 2009/07/21 18:16:36
■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義|二 (12)
併しながら此等の諸特質は究竟何を生命として發動してゐるか、此等の背後には、さらに/\奧深く或る一物の熱い息が力となつて之れを活かしてゐるのでは無いか。何等かの一物が、ギリシャの昔から廿世紀の今日に至るまで、子となり孫となるものゝ努力向上の底に傳はり横はつて、己れを大白晝の下に露呈し來たらんともがく。之れを對境にしては何物かの形に於いて之れを探し出さんとする氣持、之れを我れにしてはたゞ突出し展開せんとする無方の焦燥心。ロマンチシズムも畢竟は此の一物がクラシシズムの乾枯した殻を蝉脱せんとする息吹に外ならぬ。さて此の一物を何と名づくるか。
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*註1:併しながら
「併」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shikashi.jpg
*註2:諸特質
「諸」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syo_moro.jpg
*註3:究竟・畢竟
「竟」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_tsuini.jpg
*註4:熱い
「熱」の俗字体(か?)。「執」+「レンガ(レッカ)」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sakuji_netsu.jpg
*註5:廿世紀
「紀」の俗字体(か?)。旁の「己」が「已」。
*註6:横はつて
「横」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ou_yoko.jpg
*註7:露呈
「呈」の旧字体。「口」+「壬」。
*註8:對境
「境」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_sakai.jpg
*註9:突出
「突」の旧字体。「穴」+「犬」。
*註10:蝉脱
「蝉」の旧字体。「虫」+「單」。
「脱」の旧字体。「月」+「兌」。
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
(2015/01/17/初校)