自作小説 『世界の終わり』
- カテゴリ:自作小説
- 2012/12/16 22:32:29
2012年12月某日。世界は未曾有の危機に見舞われていた。地球を侵略しようとする宇宙人の大群が接近し、地球上の全ての空は無数の銀色の円盤状飛行物体に埋め尽くされていた。奴らには地球人に対して投降する間も与える気は無いようだ。地上は既に彼らの攻撃を受け荒廃していた。無慈悲にも我々を根絶やしにするつもりなのだろう。
私は一人奴らと闘っていた。しかし、私は軍隊でも研究者でもないただの一般人だが、とある事情で奴らの司令塔であるマザーシップを破壊するという特殊部隊の一員となった。そして、仲間達と共にマザーシップに乗り込んだが、奴らの激しい攻撃を受け、今や生き残ったのは私一人となった。敵陣の中で一人取り残されてしまったのだ。
まるで悪夢だ……。つい先日までは私はただのしがないサラリーマンで、会社で上司にグチグチ言われながらもそれなりにやってきたのだ。少なくとも、こんな命のやり取りをすることなんて無かったのに。充分に満足した人生を送れると思っていたのに。
いや、違う。思い返せば、満足した人生なんかじゃ無かった。私の日常は退屈であった。仕事といえば、いつも同じ作業の繰り返し、心から打ち込めるものなどは無い、目的も生きがいも無い人生を送ってきたのだ。だから、むしろ今のこの生きるか死ぬかの状況はまさに私の求めていたものであった。ここで死んだっていい。なにせ私は地球を侵略に来た宇宙人と闘っているのだ。こんなに誇れる死に方は他に無いだろう。少なくとも、生きがいの無い人生をだらだらと送って死ぬよりは何倍もマシだ。
私は意を決して時限爆弾を担ぎ、マザーシップの心臓部へ突入した。敵の執拗な攻撃は私を襲ったが、何とかかいくぐり心臓部に時限爆弾をセットした。そして、マザーシップから抜け出そうとして、マザーシップの出口までたどり着いた。眼下には我が故郷の地上が見える。しかし、私にはここから抜け出す手段が無かった。そう、ここに入った時から分かっていたのだ。どうやっても、生きてここからは抜け出すことなんて出来ない。しかし、私は世界を救ったのだ。私は死んでも英雄として称えられるのだ。私は見るも無残な姿となった地上を見下ろした。
「これが世界の終わり……」
その時、時限爆弾が起動した音と光が私を包み込んだ。
私は気が付くと、自室のベッドの上に居た。
UFOは? 宇宙人は?
私は急いで窓を開けたが、冬の爽やかな朝日が降り注ぐ空が拡がっているだけであった。辺りも何処も破壊されていない。別段何もない日常風景が広がっていた。
あれは夢だったのか……。私は安堵のあまりその場に倒れ込んだ。
今は2013年の1月。そう。結局、2012年に地球が滅びることは無かった。思えば、あれは私の願望だったのだ。無為に過ごす人生に辟易し、妄想の世界に逃避していたのだ。でも、嫌にリアルな夢であった。本当に宇宙人と闘った実感がある。記憶も鮮明だ。
そして、日常生活に戻ってからは、やはり退屈な日常が戻ってきた。私はいつもあの宇宙人との闘いの事を考えていた。生きるか死ぬかの攻防。世界の存亡をかけた闘い。しかし、実際にはそんなことが起こるわけもない。私は、妄想でも良いので、あの世界に帰りたいと思った。私の生きがいはあの世界でしか見いだせないのだ。
そんな事を考えながら通勤で横断歩道を歩いていた。何処からか「危ないっ!」という声が聞こえたが、次の瞬間、もう手遅れであった。眼の前に車が迫ってくる……。
………………。
…………。
……。
本日朝方、交通事故が発生しました。信号待ちをしていた人達の証言によりますと、男性は信号が赤にも関わらずふらふらと横断歩道を渡り、トラックに引かれたとの事です。男性は病院に運ばれましたが、脳に衝撃を受けたと思われ、現在、昏睡状態になっております。
テレビの電源を消す。そうだ、テレビなんて見ている場合じゃない。既に外には何体ものゾンビに取り囲まれている。ここに入ってくるのも時間の問題だ。2012年末。世界は終わりを迎えていた。人間を腐敗したゾンビ化させるウィルスが世界中に蔓延したのだ。私は銃を片手に飛び出した。襲いかかるゾンビどもを迎え撃つ為に。
私は戻ってきたのだ、この世界の終わりに……。
2012年末。確かに世界の終わりはやってきた。彼にとっての世界の終わりが……。
ゲーム感覚で楽しめたら、気楽な人生ですよね~w
なんと・・・。なるほど、まゆさんの小説にはゾンビをテーマにしたものがないわけだね。
大丈夫。きゃつらは頭を弾丸で撃ち抜けば良いのです!w
一回、ゾンビに追いかけられる夢を見ましたが、それ以降、ゾンビをテーマにした映画やゲームに近寄らないようにしています><
僕も行けるのであれば、ファンタジーの世界に行きたいw
もちろん、ハッピーエンドで終わるストーリー希望で♪w
宇宙人とかゾンビには会いたくないけどwww
おお。村上春樹!まさか、みのさんの口から村上春樹の作品が聞けるとは・・・w
「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」読みましたよ♪
確かに書きたいものは、もっと長くしないと書けないのよね~。
実は長編は何度か挑戦したし、してるけど、まともに終わったことが無いんだw
でも、やってみようかな。感想有難う!
まゆほんの小説はもっと推敲して長くすると面白くなりそうだよね!めんどくさいと思うけどw
主人公が交通事故にあった後の文章「本日朝方、交通事故が発生しました~」は、ニュースのキャスターさんの言葉です。その後の「テレビの電源を消す~」は、昏睡状態により、“世界の終わり”の世界に入ってしまった主人公の視点で書いてます。ちょっと繋げてみたくて、流れが変な感じになってしまいましたねw
次回作、「魔法の証明2 ~クリスマスの夜の奇跡~」(仮タイトルw)です!乞うご期待!
クリスマスまでに書かないと・・・w