トナトナトナ
- カテゴリ:イベント
- 2012/12/13 01:46:30
サンタクロースの休日
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名前:aki
性別:おとこのこ
称号:スターの
トナカイくんレベル:18
配達数:9,086個
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名前:megu
性別:おんなのこ
称号:宇宙一の
おてんばレベル:30
配達数:23,625個
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名前:haji
性別:おとこのこ
称号:トナカイ界の
秀才レベル:19
配達数:9,680個
続いてるにゃ
★☆
山の中では、雪を掘って木の根元にある苔を食べます。
冷たい雪を小さな角で掘り進める仕事は、幼いトナカイにとって辛い事だと
お母さんは心配をしていましたが、
aki は産まれて初めて見る一面のふかふかした雪景色に浮かれて
新しい遊び相手を捕まえたように掘りすすめます。
喉を潤す為に口をつける沢の、氷の下の水さえ
aki の体も心も凍えさせることはできません。
aki は人に使われるトナカイではなかったのです。
「もっと早く帰ってきていればよかったのだわ」
逞しく山を駆け巡る aki の姿を見つめて
お母さんはぽつりと呟きました。
山の暮らしを教えてくれるお母さんの目を盗んで
aki は毎日、あの場所に一度は必ず訪れました。
そこに置き去りにされたままの幼い亡骸は
日、一日と小さくなってゆきます。
夜も昼も、血と匂いに惹かれてやってくる獣たちに蝕まれ
冷たい雪風に残されたカケラは飛んでゆき、
やがて骨まで散り散りになってしまいました。
もう元の姿を思い出すのも困難です。
せめて残ったカケラを拾い集めて、弔いをしてあげたいと aki は思いましたが
日々その姿を変えてゆく亡骸の有りようが怖くて
近寄ることも出来ないまま、少し離れた木の根元で震えながら見守るだけでした。
そんな、ある日のことでした。
いつも亡骸を見守っていた木の根元に、小さな白いカケラが
風に飛ばされて運ばれてきているのを見つけたのです。
いつから、そこにあったのでしょう。
ずっと自分が気づかなかったのか、aki には解りませんでした。
けれどそれがお兄ちゃんなのだと、何故だか解りました。
aki はそのカケラが、もうどこにも飛んでいってしまわないように
雪を掘り、木の根と大地の間にしっかりと挟み込んで
また雪をかぶせました。
もうこれでお兄ちゃんはどこにも行きません。
小さな小さな姿に変わってしまったけれども
大丈夫
今度はぼくが守ってあげる。
aki は鼻先で被せた雪をぽんぽんと撫でるように叩きました。
そしてやがて雪は溶け、沢の水はぬるみ始めて
木々に小さな緑がぽつりぽつりと出始めた頃、
事件は起こりました。
「お母さん! お兄ちゃんが枝になったよ!」
お母さんは黙々と苔を食べていた口を止めて
微笑みながら aki を振り返りました。
aki はお母さんにこっそりと隠れて通っていたつもりだったのですが
お母さんにはちゃんと aki のしていた事はばれていました。
「それがね、山に還る、という事なのよ」
「山に? お兄ちゃんが?」
「そう。お兄ちゃんだけではないのよ。
山に生きているすべての生き物は、
生きているだけで、ご飯を恵んでくれる山にお返しをするわ。
aki のうんちも、おしっこも、山には大切な恵みになるのよ。
そして、お兄ちゃんのように亡骸になったなら、
その体を栄養にして色んな命が山に恵みをもたせらるの。
もう誰も食べる場所が無くなってしまったように見えても
亡骸は土に還って、大地のご馳走になるのよ。
お兄ちゃんは、これから、本当にこの山そのものになってゆくの。
観ていてごらん。あの小さなカケラから生えてきた枝のように、
風に飛ばされたカケラたちをご飯にして、
あちらこちらから小さな山の命たちが芽生えてくるわ。
それはやがて他の小さな動物たちのご飯になって
小さな動物たちは大きな動物たちのご飯になって
みんな、みんな、やがて山に還ってゆくの。
おまえが毎晩怯えている遠吠えの主ですら、ね」
aki は山に来る時にお母さんが言った言葉を思い出しました。
「それが、お兄ちゃんの山での大切なお仕事なのかい?」
「そうよ。
すべての生き物が必ず最後に、しなくてはならない
大切なお仕事……」
幼子の小さな骨から生えた枝は、春の過ぎ行くと共にすくすくと育ち、
ほの暖かな夏になる頃にはすっかりと aki の背丈と並んでいました。
「せっかくお兄ちゃんより大きくなれたのに
僕はまたお兄ちゃんに抜かれちゃうのかなぁ」
aki はちょっとだけ残念そうに顔をしかめました。
けれど
「でも、お兄ちゃんはやっぱり僕より大きくないとね。
だってお兄ちゃんなんだからね」
嬉しそうに、ぐるぐると若木の周りを飛び跳ねます。
そうして一年、二年と過ごすうちに、
若木はすっかりと立派な大木に育ちました。
昔のように、aki に歌を教えてくれたり、
数の数え方を教えてくれたりはしなくなってしまったけれど、
aki がいつも美味しくご飯を食べられるように
木の周りに木の仔を育ててくれました。
時々は、風になびいて葉擦れの歌も聞かせてくれます。
気が付くと aki は、お兄ちゃんの最後の姿より
年も背もすっかり追い越して、立派な若者に育っていました。
「お母さん、今日のご飯を採って来たよ」
木の仔を運ぶ洞の中には、
懐かしい、亡骸を包んでいたセーターを肩に羽織り、
うとうととまどろむ megu の姿が有りました。
長く街に住んだせいで、その暮らしに慣れてしまった体には
山の暮らしは厳しすぎたのです。
aki のように幼い体はすぐに山へ戻れたのですが
老いたトナカイの体には、それが出来ませんでした。
megu は嬉しそうに瞳を少し開いて
aki の採ってきた木の仔を受け取ります。
「可愛いねぇ。
山の可愛い命だねぇ」
鼻先で木の仔を弄ぶお母さんに、
「しっかり食べないとダメだよ。
またすぐに冬が来るんだから。
たくさん食べておかないと、
次の夏に、もっと大きくなっているお兄ちゃんと会えなくなるよ」
「そうだね。
だけど、これはおまえがお食べ」
「僕は外でいっぱい食べてきたよ。
これはお母さんが食べるんだよ」
だけども、お母さんは木の仔を aki の鼻先にぽんと当てて
「私はおまえのお母さんだからね。
おまえにご飯を食べさせるのが仕事なんだよ。
だから私に私の仕事をちゃんとさせておくれ」
「僕はもう一人でちゃんと外でご飯を食べられるよ。
お母さんはいつまでも、僕を幼子扱いするんだから。
とにかく、僕が採ってきたものはきちんと食べてね。
体力がなくなったら、
また空を一緒に駆ける事も出来なくなるんだからね」
山に戻った最初の頃、一緒に空を駆けて
星と星の間を縫うように遊んだ夜を思い出します。
けれども、一緒に空を駆ける楽しい夜は思い出になったまま、
二度と戻ってはきませんでした。
わたしはおかあさんだからね
おまえにごはんをたべさせるのが、しごとなのさ
だからわたしに、わたしのしごとを、
ちゃんとさせておくれ
お陽様が沈むころ、食べられる事のないままに
megu の鼻先で転がっていた木の仔を
aki は啄むように食べました。
弔いは、しませんでした。
aki はお母さんの亡骸を
haji を最初に置いた場所に置いて
少し離れた所で、何日も、何日も見守りました。
オオカミが来てお母さんを食んでいても
狐が来てお母さんを噛み千切っていても。
お母さんが小さな白いカケラになって、
山に還ってゆくように、祈りながら。願いながら。
祈りながら
願いながら
命の本来の姿は、こんな風にして連綿と続いていくもんだよね。
でも、可愛いトナカイからこんな物語になろうとは・・・。
前回、後3回くらいって書いてあったけど・・・まだ続くのかなぁ?
サンタが見せた転寝の夢だったって、夢オチとかにならないかなぁ^0^
さっこん、とても、ひねくれてきた私
怪しげな術で復活とか期待してしまいました
いかん…
ある意味、一番幸せなのかもしれません。
まだFinマークがついてないので、続くのかなと思いつゝ。
さいごのしごと。
日本にもつい最近まで風葬の習慣が残っている島があったと聞きますが、
少なくとも、現代の日本に生まれ、此処で死んでいくだろう私には、
それは出来ない事なのだな、と、何かにつけ思います。
散骨や樹木葬など「還れる方法」を色々検索していた時期もあります。
でも、ふと考えると…自分が育ってきた時代って、
人工的な化学物質がもてはやされてた時代で、
そんなものが未だにこの体にも沢山蓄積されてるんだろうなと思うと、
そんなモノばらまくなんてとんでもない、と考えるようになりました。
俺にはそんな資格は無い、と。
焼く時に灰が出てしまうのは許してもらうとして、
今は大人しく、ちいさな壺に収まろうと思っています。
・・・ながながと失礼致しました^^;