■近代文藝之研究|時評|『ミカド』オペラ…(1)
- カテゴリ:その他
- 2012/12/12 20:50:39
■近代文藝之研究|時評|『ミカド』オペラの事 (1)
『ミカド』オペラの事
近日の新聞で見ると、英國ロンドンでは、同盟國たる我が日本に敬愛の意を表するため、彼の地の流行音樂の一たる『ミカド』と題するものゝ演奏を禁じたさうである。是れはさもあるべき事と思ふが、元來この『ミカド』と題する音樂はどんなものであるか、簡單に之れを説明して見ると、もと/\二幕の滑稽オペラである。作者はサリワ゛ン(Arthur Sullivan 1842-1900)といつて、有名な滑稽オペラの作曲家である。但し其の文句は常にギルバートといふ人が書いて、つまり兩人の合作といふことになるから、普通此の人等の作をばギルバート、サリワ゛ン、オペラと呼んでゐる。サリワ゛ンには外に眞面目なオペラもあるが、其の方はさしたる成功でもなかつた。之れに反して滑稽オペラでは近世の最大作曲家の一人となつた。ニ三十年來其の作十數篇に上つた中にも、此の『ミカド』の如きは最も喝采を博したものゝ一つで、千八百八十五年すなはち今から二十餘年前の作である。其の輕快にして新奇な曲調が通俗の人氣にかなつて、忽ち英國のみならず、全歐米の流行曲となつた。作者は此等の作乃至其の通俗音曲の大家といふを以て廣く世に知られ、後年眞面目なオペラに多少の成功もあつて、遂に音樂博士となり、ナイトの爵まで貰つた。
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*註1:近日・近世
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註2:音樂・音曲
「音」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ne_oto.jpg
*註3:説明
「説」の旧字体。旁は「兌」。
*註4:もと/\
「/\」は踊り字・くの字点。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/odoriji.jpg
*註5:作者
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg
*註6:サリワ゛ン
アーサー・シーモア・サリヴァン(Sir Arthur Seymour Sullivan/1842年~1900年)のこと。イギリスの作曲家。ウィリアム・S・ギルバート(劇作家・作詞家、William S. Gilbert/1836年~1911年)と組んでのオペラは、サヴォイ・オペラ(ドイリーカート劇団が主としてロンドンのサヴォイ劇場で上演したのでこう呼ばれる)として人気を博した。
なお、原本には「サリワン」とあるが誤植と思われるので改めた。
*註7:文句
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
*註8:普通・通俗
「通」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註9:さしたる成功でもなかつた。
原本には「さしたる成功でもなかつか。」とあるが誤植と思われるので改めた。
*註10:喝采
「喝」の旧字体。旁が「曷」。
「采」の正字体。「爪」+「木」。
*註11:二十餘年前
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg
*註12:曲調
「調」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/cyou_shiraberu.jpg
*註13:全歐米
「全」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen.jpg
*註14:遂に
「遂」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sui.jpg
*註15:博士
「博」の旧字体。「十」+「甫」+「寸」
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/haku_hiroi.jpg
*註16:ナイトの爵
「爵」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syaku.jpg
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
『ミカド』の内容が、日本及び日本の文化を戯画化しすぎていて、新同盟国に対して侮辱的でなないか、とのイギリス政府の判断があったもののようです。
それはともかく、ギルバート&サリヴァンのコンビですが、僕が中学生か高校生の頃、
深夜放送でよくかかっていた曲にこういうのがありました♪
http://youtu.be/BD4yL-fXU6s
ノイズの入るラジオで細々と聴いていただけなので、僕の耳には歌っている人の名前は
“ギルバート・サリヴァン”としか聞こえず、ずっとその名前で記憶していました。
今回、この抱月の文章をテキスト化していて、
「あの歌の“ギルバート・サリヴァン”となにか関係があるのかな?」と気になって調べたら、
“ギルバート・オサリヴァン”だということが判明しました。
40年目ぐらいの大発見でした♪(笑)
14あるけど ほとんど知らない\(^o^)/日本語のオペラやらないかな