「ど～も～！ 黒猫アニーですよ～」
「こんばんは、コウモリの モリコーネですよ～」

「二人合わせて うしみつブラザーズですよ～」
「そうですよ～、深夜に元気な うしみつブラザーズです～」

「それはそうと、オイラね、最近、気になってることがあるんだけど」
「え？ そうなの？ 気になっていることは、どんどん話してすっきりした方がいいよ！」

「それもそうだね。 じゃあ言わせてもらいますけど、オイラねぇ、猫カフェって言うのが気になってるの！」
「あ、猫カフェね。 最近、よく聞くよねぇ」

「ねぇ？ モリコーネは、行ったことある？ 猫カフェに？」
「聞いたことはあるけど、行ったことはないなぁ」

「どういう所なんだろうね？ やっぱ、猫が経営してるのかな？」
「猫カフェって言うくらいだから、そうなんじゃない？」

「ねぇ？ ためしに、オイラたちも やってみない？」
「え！ 猫カフェを経営するの？」

「そ、そうじゃなくて、コント風にやってみませんか？ ってこと！」
「あ、なるほど！ 安上がりでいいね！」

「じゃあ、オイラが、猫カフェの店員をやるから、モリコーネは、お客の猫としてお店に入って来てね！」
「え？ オイラも猫なの？」

「そりゃそうだよ！ 猫の猫による猫のための猫カフェだもの、お客も猫じゃないと！」
「そ、そんな、猫づくしのお店に、オイラみたいな “にわか猫” が行ってもいいのかな？」

「いいに決まってるじゃん！ 初心者大歓迎ですよ！」
「じゃあ、気を取り直して、お店に入りますね！　カラン コロン カラ～ン 」

「あ、あの？ お客様？ 当店では、下駄（ゲタ）での入店は、ご遠慮いただいておりますが？」
「え？ 下駄なんて履いていませんよ？ あ、カラン コロン カラ～ン って、いうのは、下駄の音ではなく、
  お店に入る時の音ですからね？」

「え？そうなの？ 今どき、入るときにカラン コロン カラ～ン って、鐘が鳴るカフェがあるの？」
「さぁ、よくわからないけど。 芸人さんは、みんな その音でやってるよ？」

「そう言えばそうかもねぇ。 でもさ、どうせなら 猫カフェっぽく、鈴の音とかにできないかなぁ？」
「あ、それいいね！ じゃあ、入りますね！ チン チロ リ～ン 」

「いらっしゃいませ～！ お客様、何匹様で？」
「一匹なんですけど」

「はーい。 孤独な、一匹猫様 ご来店でーす！」
「な、なんだか、居酒屋みたいですね…」

「お客様？ ここは、猫カフェでございますよ？」
「はい。 良く存じておりますよ？」

「では、お席の方にご案内いたします。当店では、お好きな席が選べまして、縁側の席、タンスの上の席、
  土鍋の席とございますが。 どの席にいたしましょう？」
「え？ 土鍋の席って、なんですか？」

「はい。 土鍋の中に入ると落ち着くというお客さまのご要望にお応えして、ご用意いたしました」
「猫って、狭いところが好きですからねぇ」

「はい。 土鍋の中で、マッタリしていただけたらと思います」
「あ、あの？ マッタリしている間に、煮込まれたりしないですよね？」

「ま、まさか、まさかでございますよ、お客様！ 当店は、山猫軒ではありませんから！」
「そ、そうでしたね。 それに、山猫軒だとしても、猫は食べませんものね」

「そうですよ、猫なんて食べても、腹の足しにはなりませんからね？」
「それもそうですね。　あれ？何の話でしたっけ？」

「当店では、お好きな席が選べますが？」
「あ、そうでしたね。 じゃあ、オイラは、縁側の席にします」

「では、こちらでございます。 あいにく、本日は、うす曇でございますが…」
「でも、なんだか、快適な空間ですね！ オイラは、縁側で寝そべるのが大好きなの！ 」

「それは、それは。 残念ながら、スカイツリーは見えませんが…」
「えっ！ 快晴なら、スカイツリーが見られるんですか！」

「え？ 見られませんよ？ ここは、東京ではありませんからね？」
「そ、そうえばそうですね」

「では、こちらの座布団に、おかけください」
「わーい。 ふっか ふか～！」

「お客様、こちらメニューでございます」
「はーい。 どれどれ…、うわぁ、いろいろあって迷いますねぇ…。 何かおすすめはありますか？」

「はい。 本日のおすすめは、気まぐれシェフの和風ツナハンバーグでございます」
「え？ツナでハンバーグができるんですか？ 食べてみたい気もしますけど、気まぐれってところが気に
  なりますね？ 気まぐれで、和風が洋風になったりするんですかねぇ？」

「いえ、それほど気まぐれではございません。 ハンバーグがミートボールになる程度でございます」
「えぇ！ お、大違いじゃん！」

「それほどでもございませんよ。分量はそのままに、数が多くなっただけでございますから」
「あ、そうなんですか？ 小さくなった方が食べやすいかもしれませんけど。 でも、オイラ、子猫だから
  あまりたくさんの量は、食べられないんです…」

「それなら、お子様ランチは、いかがでしょう？」
「あ、いいですね！ じゃあ、オイラは、それにします！」

「では、料理が出来上がるまで、少々お待ちください」
「はーい。 楽しみに待ってます～」


「お客様、おしぼりと、ホットミルクでございます」
「あ、オイラは、おしぼりはいりません。 多少の汚れは自分でなめちゃいますので」

「それもそうですね。 猫ですものね」
「あと、ホットミルクを頼んだおぼえはありませんけど？」

「当店では、お水やお茶の代わりに、ホットミルクをお出ししておりますが」
「え、そうなんですか。 サービスいいですねぇ」

「猫舌のお客様にも安心してお飲みいただけるよう、生ぬるくなっております」
「それはありがたいですけど、”生ぬるい” って表現は、なんだかおいしくなさそうな響きがありますねぇ…。
  あ、でもおいしい！」

「そうでしょうとも！ それもそのはず、当店のミルクは、搾りたての低温殺菌でございますから。 それでは、
  もうしばらく お待ちください」
「はーい。 楽しみに待ってます～」


「お待たせいたしました。メインディッシュのお子様ランチでございます」
「待ってました！」

「では、どうぞごゆっくりお召し上がりくださいませ」
「あ、 あの？」

「な、何でございましょう？ 当店は、シェフも猫でございまして…。 ですから、多少の毛の混入はご容赦
  願いたいのですが？」
「え？ それもありますけど、あ、いえ、そうではなく、こ、これ、ご飯の上に猫じゃらしが立ってますけど？」

「あ、それでございますか？ 当店のお子様ランチは、国旗の代わりに猫じゃらしを立てておりますが」
「あ、あの？ め、目の前で猫じゃらしがふわふわしてたら、食事どころじゃないですけどー」



「猫カフェって、こんな感じかなぁ？」
「うん、なかなか雰囲気出てたと思うよ！」

「あ、最後にオチをつけてなかったね？」
「いいんじゃない？ 無理してつけなくても」

「でもさ、今回、コント風だったでしょ？」
「それもそうだねぇ…。 じゃあさ、猫って木登りが上手だから、猫だけに落ちません！ ってのはどう？」

「あ、あの？ オチなんだから、落ちないと困るんだけど！」
「じゃあ、猫も木から落ちる！」

「え！ 痛いのは嫌なんですけど！」
「注文の多い猫さんですね。 じゃあ、猫も木からバンジージャンプ！」

「おぉ！ 落ちるけど、痛くな～い！」
「かなり、勇気がいるけどねぇ」