~満員の電車の中で~(甘酸っぱい初恋の思い出③)
- カテゴリ:小説/詩
- 2012/11/16 04:47:42
もう時期的に、人々はコートを着て電車に乗り込む・・・
ますます、彼との密着度が大きくて・・・
でも、相変わらず電車の中では無言の時が続き
それに、だいたいこの満員電車の中で話す人などいない
いつものように階段を下りて・・・また「じゃあ、また」と言うかと思ったら
「そうだ・・・試験勉強ちゃんとやってる?」
「やってますよ、もちろん・・・」
「試験、早く終わらないかな・・・試験休みに友達とスキーに行くんだ」
「えっ?そうなんですか?そうですよね一週間あるものね。」
(そう、私たちの高校は試験が終わると試験の採点日と称して一週間の休みがある)
また、某大学の付属校だから、日程も全て同じ・・・そして、授業も大学並みの90分授業・・・
初めて、これだけの言葉を交わした。
それからと言うもの、試験勉強はそっちのけ・・・受け取ってもらえるかわからないけれど、その日帰りがけに毛糸を買ってきて、マフラーを編み出した私・・・
そう・・・実は夏休みに彼から暑中見舞いのはがきが来たのだ。
「暑中見舞い申し上げます。僕は今部活の合宿で清里の大学の施設にきています。高原にはグライダーが似合うように、僕にはこの自然が似合っています。」なーんて
本当にきざな先輩でしょ。
その時、なんで私の住所知っているのかと思ってよく考えてみたら、中学時代の委員会の名簿・・・
合宿に行く前から、私の住所控えて行ったのかな?
と思った次第で・・・
試験は二人とも無事に終わり、明日から試験休みに入ると言う日に
私は、編みあがったマフラーをいつものホームの階段の下で思い切って渡してみた。
中学時代バレンタインデーの日には、必ず「僕は君に何もしてあげられないからこれは、受け取れないよ」と断っていた先輩
果たして、私のマフラーを受け取ってくれるのか不安を抱きながら・・・
「これ・・・もし良かったらスキーに行く時に持っていって下さい。試験中に編んだマフラー・・・」
そっと紙袋を差し出すと、先輩は紙袋の中からマフラーを取り出し
「えっ、僕のために編んでくれたの?ありがとう。今日は寒いから、まいていくよ、さっそく」
と快く受け取ってくれた。
「じゃあ、荷物になるから紙袋は私持って帰ります。」
「いいよ、学校でこの中に入れるから・・・」
「気をつけて、行ってきてくださいね。」
「うん、一週間会えないね。また絵葉書送るよ」
といつものように、片手をあげて右と左に二人は歩いていきました。