Nicotto Town



ひとかけら


ごく普通の人々が
ひとかけらの欲望を捨てて
自分の生活とは全く関係のない
遠い世界の人々や、自然や動物たちに
捨てたひとかけら分だけ
想いを馳せてくれたら
世界はもっと変わるんじゃないか。

そんなことをずっと願っている。

ほんのひとかけらだけでいい。
大き過ぎると、それはすぐ違う何かになる。

わたしたちはあの時
3・11
辛いことや、痛ましいことが際限なく襲ってくる中で
見知らぬ国の
見知らぬ人が寄せてくれる
ひとかけらの善意に出会った。

ひとかけらの想いがたくさん集まると
奇跡を信じる勇気が持てた。

でもね、信じる力は門限を持っている。
シンデレラの馬車のように
またたく間に消えてしまう魔法のようなもの。

わたしたちは自分の生活に戻らねばならず
生きることはいつだって誰にだって
格闘の連続だ。

だから、距離の分だけ忘れていく。
それは仕方のないこと、当たり前だ。
たくさんのことを人は抱えきれないから。
 
その間に、書き出したらきりがないくらい
悪いことがいっぱい起こった。

罵倒したり、
責めたりして、
攻撃することは簡単だ。

諦めて目を閉じてしまうことも簡単だ。

だから、ひとかけらだけ。
無理をしない、ひとかけらだけ。
1%でいい。0.1でもいい。

被災地の子どもたちの健康に異常
いや不調という程度かもしれない。

それでも何かが起き始めているのではないか。

小さな子の寄る辺ない瞳
不安にさいなまれるお母さんたち。

新聞もテレビも詳しいことは語らない。
政治家は自分のことに忙しい。

わたしたちだって、何もできないかもしれない。
それでも、
何か出来ることに出会えるかもしれない。

そんな時の為に
ひとかけらだけでいい。
忘れないで、覚えていてほしい。

怒りは何時だって、簡単に湧いてくる。

でもね、わたしたちが一番忘れやすいのは
自分の中の
ひとかけらの優しさではないか。

あの時、世界中から押し寄せてきた
ひとかけらの優しさに
ありがとうと、涙したではないか。

現実はあまりにも厳しい。
それでもわたしたちは
ひとかけらの優しさを支えに
前に進めるのではないか。

そんな
ひとかけらだけの希望を
わたしは時々
かみしめる。





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