Nicotto Town



【小説】ラブリーB面(勝手に創作w)

『美穂、虫よけスプレーを買っておいたわよ。今日、持っていくんでしょう?』
『ありがとう、お母さん。助かったわ』
『あれ、もう出かけるのかい?月曜日から大変ね。はいお弁当』
『園芸部員ですもの。もう慣れたわ。それじゃ行ってきます』

二学期になったとはいえ、まだまだ暑い日が続くので園芸部員の私としては早めに学校へ行き花壇に手入れをするのが日課だ。
私の好きな芙蓉の世話をしている、というのも理由の一つだけど。
我が園芸部は部員は少ないが所有する花壇は結構大きい。というより学校が雇っている用務員では人手が足りないので部活動の一環という理由で園芸部が学校の花壇の手入れをしている訳である。
それでも人手が足りないので、同じく弱小である生物部と共同で作業することも多い。見返りに私たちも大きな水槽の掃除を手伝った事がある。
持ちつ持たれつの関係が園芸部と生物部で成り立っているのだ。まぁ、ウチの部長の真理子先輩と生物部 部長の成田先輩が懇意であるのが一番の理由かもしれないけど。

そんなわけで、園芸部は慢性的な人手不足だ。だからといって無理やりな勧誘は行わない。
植物や花に興味ない人がウチに入ってもしょうがない。本当に好きな人じゃないと続かないからだ。
ところが、先週の金曜日に顧問の松野先生がこっそり耳打ちしてくれた。
『来週から、ちょっとだけ花壇の手入れが楽になるわよ。一週間の限定だけどね』
何の事だろうと思った事が放課後になり、やっと理解できた。

いつものように西校舎裏の花壇の手入れをするために、虫よけスプレーをジャージの上からシューっとして向かうと、そこに一人の男子がヨタヨタしながら草むしりをしている姿をみつけた。
誰だろうと思って近づくと、同じクラスの藤原だ。
三日間連続遅刻と宿題忘れの為に先生からこっぴどく注意されていたが、どうやら彼は罰として草むしりをされているようだ。
松野先生が言っていた、花壇の手入れが楽とはこういう事だったのだ。
花壇は広いので草むしりも時間がかかりそうだ。夕方になるとここらあたりは蚊が大量に集まってくる。
私は、スプレーを手に藤原に声をかけた。

『虫よけスプレー、使う?』
汗だくで疲れ切った顔がこちらを向いた。
『ここ、夕方は蚊がすごいよ』
『へぇ、サンキュー。てか、櫻井も遅刻か宿題忘れ?』
『まさか!藤原じゃあるまいし。私は園芸部員なんです』
かけている眼鏡の位置を直しながら言い返した。

『へいへい。俺は遅刻常習犯ですよ』
『常習犯は遅刻だけじゃないでしょ。ちなみに、明日は英語の課題、提出』
藤原は、アイスだと思って食べたら豆腐だった、というような顔をした。
『その顔は、まだ手もつけてないって感じだね』
『あー、まぁな。どうせ明日も草むしりだから、いいかな』
『良くないと思うけど?』

それから、二人して放課後まで色々話しながら草むしりをした。というより気が付いたら放課後だったという感じ。
私ってこんなにおしゃべりだったかな?

次の日もちゃんと藤原は草むしりにやってきた。
遅刻常習犯で宿題未提出者のだらしないヤツだとおもったけど、そうでもないみたい。
好きな音楽ジャンルは全然合わなかったけど、好きな映画は同じようだ。この前かりたDVDが3本中2本が同じだった。そんな話で盛り上がった。
三日目も私より先に花壇に来て、草むしりをやっていた。

『やればできるのね。どうして宿題をちゃんとやらないの?』
『宿題には興味が無いからかなあ』
『草むしりに興味があるとは思えないけど』
『まぁな、食えない植物には興味はないぞ』

藤原の家は共働きで、小さな妹さんのご飯は藤原が良く作っているらしい。こまごまと世話を焼いているようだ。宿題が出来ないのもうなずける。
『妹を寝かしつけて気が付くと10時なんだよな。その時間になると面白いテレビもやってなくて困るよ』
私が返答に困っていると
『櫻井がそんな顔すんなよ。家族は支えあっていくものなんだぜ?にひひ!』
と白い歯をこぼしながらイタズラ小僧のように笑いかけてきた。私はちょっぴりドキっとした。

四日目は私の方が先に花壇に着いた。まさに三日坊主かと思ったら後ろから声がした。
『悪い、暑いから向こうのコンビニでジュース買ってきた。櫻井はレモンティでいい?』
『ありがとう。あれ?なんかオマケがついてる』
『だな。なんかお得かなと思ってそれにした。なにがついてきた?』
ペットボトルについているオマケを見ると、おもちゃのパンダのストラップだった。
『私、パンダってあまり好きじゃないの』
『え、なんで?パンダ嫌いってヤツ、初めて見た』
『だって、パンダって白と黒だけで色合いが無いじゃない。なんか寂しい感じがするの』
『へえ、なるほどね。じゃぁ俺のキリンと取り換えるか?』
『ホント?ありがとう!。じゃぁ交換ね』
その晩、キリンのストラップは、私の秘密の箱の中で他の宝物と肩を並べる事になった。

そういえば真夜中のプールに忍び込みたいという、私の小さな野望についても語ってしまったのだが、熱く語りすぎてしまったようで藤原が横からちょっと呆れ気味に私を見続けたので急に恥ずかしくなってしまった。
『そうか、じゃぁ忍び込む時は言ってくれよ。俺も付き合うからさ。はしごとロープがいるだろう?』
いつもの、にひひと笑いながら言う藤原を見て更に顔が熱くなってしまった。

五日目の朝の身支度をしていると、後ろからお母さんが声をかけてきた。
『ちょっと、美穂いつまで鏡をみてるの』
『だって、なんか髪型が決まらないんだもん』
『いつもはそんなの気にしていないじゃない』
『ねぇお母さん。このヘアピンっておかしくない?コレとコレってどっちが可愛いかな?』
『どっちも一緒でしょ?早く朝ご飯を食べなさい』
『あーん、どうしよう!』

放課後になり、やっぱり一緒に草むしりをした。
あんみつの美味し食べ方を伝授したら、目を丸くして驚いていた。
『よし!妹でためそう!』
『まずは、自分で試たら?』
なんでもない会話がとても楽しい。それも今日で終わりかと思うとちょっぴり寂しい。

放課後になり、校門で別れるときに藤原がふいに言い出した。
『園芸部って部員の募集ってしてるのか?』
『うん、藤原ならいつでも大歓迎だよ』
自然とそんな答えが口から出た。
なんでそんな事を?と問うべきか、入部してくれるの?と聞くべきか、一緒にやろうと薦めるべきか。

頭の中でぐるぐると考えていたら
『そうか、それじゃ、また来週な』
と踵を返して藤原は私と反対方面に向けて歩き出した。藤原の背中を見ながら、朝に付けたヘアピンを無意識に触っていた。
帰る途中で藤原が薦めていた映画をTUTAYAで探そうと思う。土曜日にはしっかり見て、月曜日に感想を言うつもり。

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2012/10/10 09:54
番外編として、真理子先輩サイドを書いてみました。
本来、クールな性格なら無口なハズで……それで一人称ってどう書けば?
とあれこれ迷った揚句、こんな風になってしまって、うぅ~~むと唸ってます。

とりあえず、成田先輩のハードルは上げておきましたw


【ラブリーB面・番外編】
http://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=884923&aid=44635619
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2012/09/17 05:49
ノスタルジックなお話
かわらぬ風景がいまでもあるのでしょうね
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2012/09/15 17:03
夢中になって読んでしまいましたw

なんか・・学生時代に戻ったような気分にwwwww なぁんてね。
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2012/09/15 16:32
面白かったです
少しずつ気になる存在になっていくのが くすぐったいというか^^
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2012/09/14 22:44
(ノ `・∀・)ノ゙ オオオオォ♪゙

すごく面白かったです!そして続きが気になりますw
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2012/09/14 21:17
 >どうせ書かないだろうなーって
ええ、まったく、その通りだと思います。
今後も、気が向いたらいつでも(承諾ナシでw)
B面創作してください。
案外、嬉しいものです。
おおいに楽しませても頂きましたし。

久々の小説、お疲れ様でした~
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2012/09/14 18:19
続きキボンヌ
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2012/09/14 17:07
久しぶりの小説 お疲れさま~
ヾ(・д・`*)ネェネェ これ 続きあるんだよね?w
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2012/09/14 13:26
この作品は、お友達の書いた小説のB面(裏側)です。
本当は、書いた本人に書いてもらおうとおもっていたのですが
どうせ書かないだろうなーっておもったので、ちっと書いてみました。
しかも、友達に承諾なしでw

久々に小説かいたら疲れた・・・
というか纏められてないなぁ。
うーーむ・・・




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