「ほら、あそこ、茶店が出てるわ♪」

「うまそーーー！抹茶ゼリーだってよ！」

美少女ヌマっちとカエルのルッカは、すっかり意気投合。

菊丸天使は、そのちょっと後ろで、花嫁ぐまアンジェを連れて、
佇んでいた。

「え、今なら限定、タダでくれんの！？うっひょお！」

抹茶ゼリーを貰って、赤いシートが敷かれた店先のベンチに腰掛け、
美味しそうに頬張るルッカ。

「ほらよ、アンジェ。オマエの分も貰ってきたぞ♪」

「アンジェ、元気をお出しなさいな。」

ついさっきまで、ケーキとパスタを食べたいだけ食べ、
マント男たちを追いかけ、勇猛果敢に張り切っていたアンジェ、
やっと出逢えた花婿ぐま、虎吉に逃げ去られてしまい、
すっかり気落ちして大人しくなってしまったのだ。

「アンジェ・・・。」当初の一番の目的、虎吉捜しは達成したものの、
当事者が逃げてしまっては、菊丸天使にも、打つ手がない。

「もう、これ、いらない。」

マントたちからせしめたアイテムの山を指さし、

「こいつら、たくさん持ってた。アジトはね、ええと・・・。」

黒猫ガンちゃんに大体のアジトの位置を教えてから、
アンジェは警官マロンに、アイテムを預けたのだった。

ガンちゃんは、正義の味方としての任務を全うすべく、
マントたちを縛り上げて警官にわたすと、アジトへと
被害アイテムの回収に向かって行った。

残された面々は、うなだれているアンジェを元気づけようと、
ふたたび、おしゃべり広場へと戻ってきたのだった。

ベンチに腰掛け、目の前に差し出された抹茶ゼリーに見向きもせず、
ただただ、下を向いて黙っているアンジェに、ルッカが尚も声をかける。

「と・・・虎吉もさ、きっと、何か理由があるんだよ！」

「そうそう、別に、アンジェちゃんから逃げたってわけじゃないと思いますわ。」

「また、捜せばいいじゃない。理由を聞かなきゃいけないでしょ。」

アンジェは、ゆっくりと首を振った。

「アタシが、いけないんだわ。」

「へ？何もしてないだろ、オマエは？」

ルッカの言葉に、尚もアンジェは首を激しく振る。

「アタシにはわかってるの、あの時・・・。」

そもそも、アンジェと虎吉は、結婚を祝福するのが役目の、
ウェディングベアである。
祝福をすべく遣わされた相手のカップルが3ヶ月で離婚してしまい、
2匹はあっさり捨てられてしまった。

ベアにとって「捨てられる」ということは、「ゴミ箱に入れられる」と
いうことである。ご多分に漏れず、この2匹も、カップルの部屋に
設置されたゴミ箱から、回収トラック経由で、処分場へと
運ばれる・・・途中で、なんと2匹は脱走したというのだ。

「トラックの荷台に回収される寸前、飛び降りたのよ。」

アンジェは、悔しそうに歯ぎしりした。

「あのとき、風が急に吹いて・・・。」

ゴミ箱から、いきなりくまぬいが2匹飛び降りてくれば、
ゴミの回収スタッフだって、驚くだろう。

「おあ！なんだなんだあ！？」

スタッフの一人の傍をすり抜ける際、スタッフの袖口ジャンパーに
アンジェの着ていたウェディングドレスの裾が引っかかってしまい・・・。

突風が吹いたのと重なって、一瞬、虎吉の目の前で、
アンジェのドレスが、言わばスカートめくり状態になってしまったと
いうのだ。

「ハシタナイ、オンナだって、思われたんだわ！！！」

・・・・え、こだわるのは、そこか？？？

あまりの真剣なアンジェの表情に、誰もが口には出せないけれど、
内心は拍子抜けって感じの面々・・・。

「いや、いくら何でも、そんなことは・・・。」

「いいえ！アタシには、わかるの！」

キッとルッカを見上げ、きっぱりと言い切ったアンジェの瞳から、
ぽろぽろと大粒の涙がしたたり落ちた。

「もう、アタシ、どこにも行くところがないんだわ・・・。」

「何を弱気なことを言ってるんです！」

不意に背後から大きな声が響き・・・。

「ゆ・・・yukinko天使長！」

仁王立ちになって、ため息をつきながら、yukinko天使長が言った。

「アンジェ、しゃっきりしなさい！本人に直接聞くのがスジってもんでしょう！」

そして、菊丸天使の方へ向き直り、

「菊丸天使、まだコトは収まっていませんよ。
　虎吉くんを再び捜しだし、決着をつけるのです。」

そういってニッコリと微笑んだのだった。