Nicotto Town


COME HOME


「銃」

黒光りするそれを、強く握りしめる。
それはいつもよりも重く感じ、掌と私の心に小さな重圧をかけた。

今日、私は、一つの命を奪いにいく。

別にそれに後ろめたさはない。
殺しは何度も行ってきた。幾度も幾度も、飽きることなく。
そうしているうちに、殺人という行為に何の感情も持たなくなった。
ただ、今回はいつもとは違う。
初めて、私の意志で銃を掴むのだ。

一か月前。
「仕事」で初めて後輩を亡くした。
明らかに、私のミスだった。今でも悔やむ。
後輩は、この世界に不向きな素直で優しい性格をした茶髪の女子だった。
息を引き取るその前も、私に礼を言った。言われる筋合いなんてないのに。

失ってから、その優しさが愛しいものだとやっと気がついた。

銃を、ポケットに仕舞いこむ。
膨らみがばれないよう、この時期には少し辛いやや厚めの上着を羽織る。

私の単独行動は、この組織にとって大きな痛手になるだろう。
それでも構わない。寧ろその方が良いのだ。
彼女を消したこの世界に何か思い知らせるために。

歩き出す。
私の胸の内の意志の炎は激しく燃え上がる。
銃の重さが、興奮する私の脳をげ現実へと引きとどめる理性になってゆく。




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