マーク・カーゼム著「マスコット」を読む
- カテゴリ:日記
- 2012/08/16 21:52:45
1942年 ベラルーシ辺りでユダヤ人殲滅作戦を行っていたラトヴィア軍に4,5歳の少年が保護される。少年は部隊のマスコットとなり、ナチスの宣伝映画にも利用される。それから60年以上たちアレックスというオーストラリア人になった元少年は息子に「自分はユダヤ人だ。殺された母や弟妹の墓を探したい」と語り出す。
事実は小説よりも奇なり。愛犬の入院中に読んだ本なのだけどどこまで本当なのか疑うくらい奇妙な人生の話でした。
そもそも 当時5歳であった子どもが自らのアイデンティティを封印して、軍隊のマスコットになり、裕福なナチス支持者の夫婦に養われ、どこかへ移送されるユダヤ人達の群れに背を向ける。すごい生命力と意志力なのだ。
もちろん時々は楽しい思いをしたようだけど、一般のユダヤ人を殺して回る軍隊が各地でろくなことをするわけがなく、そうとうな暴力行為を目撃している。そのため、戦後に戦犯裁判が始まると、アレックスはかつての「同志」から「恩を忘れるな」と圧力をうけている。
アレックスのアイデンティティ喪失はもちろん。告白された息子(マーク)も明らかに「家族の問題」と考え自らのアイデンティティに困惑する。
民族・国によって程度の差こそあれ、欧米人のアイデンティティが家族と先祖にあることの表れではないかと思う。「自分探し」と言えば日本人は転職してみたり留学してみたり、趣味に没頭してみたりするけど、欧米人は自分のルーツを探す。オバマ大統領がかつて父の親族を訪ねてアフリカまで旅行してるのもその例で、アメリカなどはルーツ探し専門の探偵まであるそうだ。
そして戦犯追及におびえるラトヴィア人達、接触を図ってくるイスラエル諜報組織、無関心なホロコースト問題組織。と欧米が抱える戦後問題がてんこ盛り。
アレックスの人物像も興味深かったけど、「戦後」苦しむのは日本だけじゃないんだな。と感心もしたのです。
戦史に詳しく無いですがやたら入り組んだ事情がありそうですね。
ふと、ポーランドの女性作家が描いた「悪童日記」を思い出した。
戦時中は子供もタフじゃないと駄目だったんですね。
アイヌ問題や在日問題などはありますが、日本は島国なので
ほぼ、単一民族に近いですもんね。
思えば日本こそ珍しいのかもしれません。
同国人でも、植民地生まれだと差別されたり
白人社会も肌の色とは別の厄介さがありますね。
ホロコースト問題は複雑ですね。
ユダヤ人と同じく惨殺されたロマの人々、ジプシーの悲惨さは
あまり知られていません。
というか、ユダヤ人が同列に置きたくないってという意図が見え見えで。。
当のドイツ人はユダヤ人がそこまで迫害されていたと
知らない人も多かったようですね。
殺しに殺し合った戦争の歴史がユーロ経済圏に繋がったんですが
これもね、危機を迎えていますね。。
ドイツにあるユダヤ迫害記念館?いや、そんな感じの博物館があるそうです。
出入り口は一つ。
それも長い地下通路を辿っていくそうなんです。
その悲惨さを体現して欲しいという狙いで。
でもね、その迫害をなぜパレスチナ人に向けるのかが
人の業というものなのか。。と。。