自作小説 『夕闇の覚』 ~後編~
- カテゴリ:自作小説
- 2012/08/16 02:52:27
注)前編があるのでそちらから読んで~
もの言わぬ死体となった顔がこちらをじろりと睨む。その瞬間、私は手足がしびれ全身の感覚が無くなるのを感じた。私はその場に倒れこんだ。私は自分の身体の異変を目の当たりにし、目を疑った。感覚の無くなった腕や足は生気が通っておらず、眼の前の死体そのものであった。いや、むしろ私自身がその死体になってたのだ。
私は何も喋ることも出来なくなったが、助けを求め少年の方を見た。少年はこんなになった私を見て動揺することもなく、その顔は不気味な笑みを浮かべていた。
「何でこんなコトをしたの?」
そうか。
私は全てを思い出していた。この森に来た理由も。私は自分自身の無能さ、社会に対する落胆から人生に辟易し、安息の場所を求めて彷徨っていた。安息の場所が死なんてその時は思っていなかったが、生きるという気力がだんだん無くなってきたのだ。そして、自殺でよく知られたこの樹海にやってきた。そうか。あの時、少年に会った時、既に私はここで命を絶っていたのか。
少年は冷たい眼で私をじっと見つめていた。
「あなたは勘違いしている。自殺は安息なんてもたらしてくれないよ」
その言葉を私は文字通り肌で感じていた。感覚の無くなっていた全身は、今や極寒の地に身一つで放り出されたような寒さに襲われていた。死体となって感覚が無くなったはずなのに、全身を激痛が走る。それだけではない。私の心はどうしようもない寂しさが満ち溢れ、永遠にこの苦しみが続くのだという事が理解できた。
「それが自殺した人間の魂の末路だよ。あなたの魂は誰にも見つけられる事はなく、この場所で永遠に苦しむんだ」
私は後悔していた。こんな事なら自殺なんて考えなかった……、と。私は永遠の苦しみに堕ちゆくのを感じながら、最期に少年の姿を見ていた。その顔は哀しそうに見えた。
私はハッと目を覚ました。気が付くと、私は森の入口のところにいた。日も落ちかけていたため、肌寒くは感じたが、先程感じた身が凍てつくほど寒気は感じなかった。あの少年は……、と辺りを見回しても居なかった。私は恐怖を抑えることが出来ず、急いでその場を後にした。後日、あの樹海で自殺者の遺体が発見されたという報道があった。もちろん私では無かった。あの死体。そして、あの少年は一体何だったであろうか。
何一つ分からないままであったが、私の心には一つだけ確かなことがあった。もう自殺など考えない。もうあのような思いだけはしたくはない。
例の樹海の奥深く。夕闇の時刻、二人の子供が遊んでいた。一人はあの少年。もう一人は燃えるような赤い髪が印象的な少女。少女が少年に話しかけた。
「ねえ。サトル。あなた、お節介って言われない?」
夕闇の覚(サトル)。少年はこの辺りではそう呼ばれていた。昔からこの樹海に住んでいる妖怪である。
「え、何で? ベニちゃん」
ベニと呼ばれた女の子はふわりと宙を舞った。どうやらこのベニという少女もサトルと同様に人外の存在であるようだ。
「何でって、こんな森の中で自殺に来る人をいちいち付け回してるんでしょ? この間も自殺に来た男を追い返したって言うじゃない?」
「うん。前に来た子は助けられなかったからね。彼はどうしても助けたかったんだ」
サトルは人の心を読む、そして記憶を書き換える力を持った妖怪である。夕闇隠しの言い伝えはこのサトルが子供を攫うことによる仕業と考えられてきたが、実際は違っていた。サトルはむしろこの樹海に入る自殺者を救おうとしていたのである。この間の自殺未遂の男も、サトルが記憶を書き換え、擬似的に自分が死んだと思い込ませたのだ。
「ふ~ん。でもさ。それならあなたの力で始めから自殺しないように記憶を書き換えて、返しちゃえば良いじゃない? 何でわざわざあんな回りくどい事をしたの?」
「あの男にまた自殺に来られても困るからね。あれだけ怖い思いをさせておけば、もう自殺することも無いだろうからさ。それに……」
サトルは得意げに笑みを浮かべこう答えた。
「僕達、妖怪は人間を怖がらせることが本分だからね」
「なーる♪」
ベニもまた満足そうな笑みを浮かべた。
そして、サトル達はクスクスと笑いながら夕闇の中へと溶け込んでいった。
夕闇の時刻、一人で遊んでいてはいけない。そこは妖怪達の住処なのだから……。
終わり~
ありがとー!
出海さんのも是非読ませていただきたいなー♪
僕は割と雑食なので、何でもいけますよww
(U・ω・U) おもしれえー!
関係者でなくても、通りすがりの通行人Aでも、誰でも気軽にコメントを!ww
ベニか。うんうん。そこが狙いさ♪w
ゆくゆくはベニの関連商品を作り、大儲けする・・・なんて事はないですがw
読みやすかったか~。良かった。いろいろ省いているからなーw
ドキドキして頂けましたか!作者冥利に尽きますな~♪
Sen氏はうまくまとめてくれてます!ありがたやありがたや。
次回作は180度、内容を変えようかなとw
乞うご期待!
ベニちゃんという小説のキャラと、ニコタのアバが絡んでるという設定が非常に斬新だった!
文章も読みやすかったよヾ(=^▽^=)ノ
前編と後編をドキドキしながら読んでましたよん!
Senちゃんが感想をうまくまとめてますね~!!
また、小説書いてください!まってまーす(* ̄∇ ̄*)
読んでいただき有難うございます!
わざわざまた読んで頂けるんですね。有難い。適当で・・・良いですよ?(こんなこと言って良いのかな?w
短編は短くおさめるのに苦労しますよね。
どうしても長くなってしまう。これも2000字以内にする予定だったのに・・・w
そういえば、エアリアルさんの読ませてもらうって言ってたのにまだ読んでない!
また読ませてもらいますね♪
最後まで読んで頂き感謝です!
げ。分かってたのか・・・。まあ、この展開なら分かってしまってもしょうがないか。
次はもうちょっとひねろうw
ハッピーエンドにしたかったからね。あまりハッピーではないかなぁw
うんうん。Sen氏は良いところを突いてもらいました♪
あきさんは怖いもの好きと。(メモメモw
次はもっと怖いものにしよう♪w
ベニ「妖怪じゃなくて、妖精だって!」←と言っておりますww
感想等は、合評会のときに言わせてください(すみません)。
また合評会当日にも読みに来ると思いますのでよろしくお願いします。
・・・にしても、短編でこれだけ表現できているのはすごいです。
今、短編と格闘(ほぼ失敗)しているのでorz
途中で友達=主人公なのではと思いながら読んでましたw
でも、結局は主人公は生きているっていうところに、どんでん返し的な救いがあって良かったかな!
Senくんの感想などなども読むと改めて話の面白みが分かるように^^b
やっぱり私こうゆう系の話好きだなぁww
そして!ベニちゃん!!やっぱり妖怪なんだねーwww
まゆほんワールドwww
確かに最後は自分が楽しいだけで書いていたような・・・w
合評会よろしくです!
最後は、まゆほんワールド全開でしたね♪
合評会で会いましょう^^
僕自身、アバで妖怪(虚無僧)になりました♪これで僕もサトルやベニたち妖怪の仲間入り♪
ていうか、虚無僧って妖怪なんですか?w
全然、問題ないっす!誰でも、どしどし感想をお書きください!
そうそう。夕暮れ時のあのちょっと恐ろしい感じを書きたかったのです。(←むしろ思い返すと、ここがこの小説の原点だった気がします。最後の一文もそうだしねw
自殺者の後悔やら、淋しさも書きたいところでしたね(描写不足は否めませんがw)。
ベニは・・・。何となく、ふわふわとして宙を舞ってたら、可愛いじゃないですか。ええ単にそれだけのために書きましたww
実はサトルとは、そんなに仲良しじゃなかったりしますw サトルの縄張りにベニがちょっかいを出しに来たという設定で。
感想ありがとねー!拙作ですが、最後まで読んで頂いて感謝感激雨・・・でした!w
大変長いコメントを有難うございますっ!
僕はちょろっと適当なことを書いただけなのに・・・、感謝感激雨何とかwです♪
前編と後編は・・・、ごめんなさい。元々、一本作品だったのですが、単に2000字で入るように分割しただけなのです。
でも、やはり主題は後編で書きましたね。
よく読み取っていらっしゃる!さすがSen氏!
僕も前編は田舎的な風景(描写が不十分だと思いましたがw)で、後編は富士の樹海みたいなイメージで書いてました!でも、繋がりにくかったか。なるほど。反省します。
かわいい「妖怪たち」と言っていただけるとは有難い。
最近、アニメとか漫画ばっかり見てるからなぁ。影響されちゃってますねw
確かに生々しい感じと上記の可愛いは不釣合ですね。
富士の樹海のイメージをドラマとかで見たものしか知らないもので・・・。そんな生々しい映像とかあるんですね。
確かにこの内容ではあの「妖怪たち」の必然性はよく分からないですねw
単に出したかっただけかよ、という印象を持たれてもしょうがないですね。
次回からはそのへんも気をつけます!
評価するのは簡単とは言いますが、これほど書いて頂けるのはなかなか無い事ですので、大変有難いです!
こういう場では、あまり批評とか書かれないものだと思っていたのでw
またSen氏のも読ませてくださいねっ!ここまでちゃんと評価できないと思うけどw
夕暮れ時、逢魔が時とも言って魔物が活動する時間帯だよね
ホラーの中にも、自殺と言うキーワードを持ってきてる所にただ怖いだけではない意志を感じます
自分の死体を確認するのってどんな気分なんだろうねえ
その時初めて後悔やら、淋しさやらくるのかな
ベニはふわふわと宙を舞う妖怪なんだねえw
サトルとの仲も気になる所だw
じっくり拝読しました♪ サークルでの合評会楽しんでね^^次回作も楽しみにしてます!
19日のサークルの合評会は、残念ながら欠席しますが
以前、僕の合評会用の詩に、まゆほんさんからコメントを頂きましたので
僕も、こちらに感想を書きます^^
普通のホラーものの短編だと、だいたい前編の内容でThe endですが
そこに同量の後編が付いて、「夕闇の覚」というタイトルの種明かしがあるということは
この物語の主題が、やはり後編にあって、前編は導入部であるのだといえます。
ただ、舞台となった前編の、田舎の鬱蒼とした、どこか民話的な森と
最終的には富士山の青樹ヶ原を思わせる後編の樹海とのイメージが繋がりにくかったです。
前編は「私」が主人公で、「神隠し」伝説のある田舎が舞台の怪談的な雰囲気がありますが
後編ではかわいい「妖怪たち」が主人公の、ヒューマンなシリーズもののようになっています。
青樹ヶ原の樹海といえば、生きることに追い詰められた現代人の行き着く先として
テレビの特番などに取り上げられ、取材カメラを持った一団がどやどやと踏みこみ
方々に生の痕跡─大量の薬や衣服や生活品の残骸─や木にぶら下がる遺体をモザイクでぼかして放映する
という生々しい場所のイメージで、そこにアニメのような妖怪の出現することに違和感を覚えました。
また、物語のテーマですが
自殺者が死の恐ろしさを知って再び生きようと思いなおす、というプロットは短編ではよくある内容なので
あとはそこに、まゆほんさんのオリジナリティ、ここではサトルとベニという妖怪達に
どれだけ、必然性という息を吹き込めるか、ということにもなってきます。
これら舞台背景や主人公は誰か、などの混乱を整理すると
さらに読みやすく、ちょうど夏のこの時季にふさわしい一編になると思います。
以上、生意気ですが批評といたします。
評価するのは簡単ですが、物語の創造は難しいことですよね・・・・失礼いたします。
何回も作り直した作品だから、話のつじつまが合わなくなってるところがあるかもですww
表現の稚拙な感じはいつも通りなので、大目にみてやってくださいw
今回はホラーものです。参考にしたのは、妖怪「サトリ」やらなんやらいろいろ混じった感じですねw
夕闇の~ってのは竜騎士07の「彼岸花の咲く頃に」の夕闇のスミレからパクってますw
いつも通りベニが登場してますが、一種の読者サービス的な感じで捉えてもらえばww