自作小説 『夕闇の覚』 ~前編~
- カテゴリ:自作小説
- 2012/08/16 02:48:52
注)長いので暇な人だけ読んでー。あ~、一応、ホラーですw
夏の日の昼下がり。私は一人道端に立ち尽くしていた。眼前には林が広がっている。その背後には民家が散在しているようで、ここは森の入口と言ったところか。
しかし、私はどうしてここに来たのだろうか? この森に何か用があったのだろうか? なぜか思い出せない。思い出そうとすると、頭に靄がかかってしまう。
「こ、こんにちは……」
背後から不意に子供の声が聞こえた。振り返ると、小学生ぐらいの少年が立っていた。人見知りなのか、私と目を合わせようとしなかった。だが、何かしら私に訴えたい事があるように見えた。
「僕の友達がこの中で居なくなっちゃったんだ……。一緒に探してくれない?」
少年は鬱蒼とした森を指してそう言った。
森の中は、日差しが遮られる分、幾分か涼しかった。少年は夏休みに友達とこの森に遊びに来ていたが、少年が目を離したすきに友達が居なくなってしまったと言う。少年は森の中を探したが友達は見つからなかった。そして、少年は怖くなってきて、ちょうど森の入口にいた私に声を掛けてきというわけだ。私は大方、この少年の友達は夢中になって遊んでいるだけだろうと考えていた。きっと、大声で名前を呼べば、向こうから気が付くはずだ。そう。その時、私は安易にそんな事を考えていた。
空も赤く染まってきた頃、私はすぐに少年の友達が見つかると思っていたのだが、それは期待外れに終わった。少年の友達の名前を叫びながら森の奥へと向かっても一向に見つかる気配はなかった。もう夜も近いし、私は引き返すことを少年に提案した。
「でも、まだ……」
「大丈夫だよ。明日、警察の人が見つけてくれる」
しかし、少年はどうしても帰ろうとはしなかった。その時、少年の口から意外な言葉が発せられた。
「夕闇隠し……。きっと、あの子夕闇隠しにあったんだ」
夕闇隠し? 私は聞きなれない言葉を少年に聞き返した。
「夕闇隠しってのは、神隠しのようなものなんだ。昔からこの辺りでは、夕闇の時刻に子供が遊んでいると、ふと居なくなる事がよくあったんだ。皆、この森の妖怪の仕業だと言っている。だからあの子も……!」
迷信か。私はその手の話をあまり信じてはいなかった。大抵、誘拐とか失踪とか事故で行方不明になったのだろう。こういう田舎ではよくある話だ。村人たちが子供を遅くまで遊ばせないようにそういう噂を広めたのかもしれない。
私はどうにか少年を説得し、来た道を引き返すことにした。しかし、その帰路にて私は違和感を覚えた。森の奥と言っても、私たちまで遭難しては元も子も無いので、帰れるような範囲を搜索していたはずだった。しかし、今、歩いている道は見覚えがない。それでも、少年の方は歩き慣れているせいか、私の前に立って森をすいすい進んでいったので、私は安心して付いていくことが出来た。
帰路についてある程度時間が経った後、私はふと思った。もういい加減に森の出口に辿りついていいぐらいには歩いたはずだ。まさかこの少年も道に迷ってしまったのではないか。その時、少年の足がぴたりと止まった。
「ううん。別に迷ってないよ」
少年は笑顔でそう答えた。
「それに大丈夫。もう見つかったよ」
少年はそう言うと、森の奥へと駆けて行った。今、少年は私が思ったことに対して答えたように聞こえたが、気のせいだろうか。ともかく、少年を見失わないように私も急いで付いていったが、少年があまりにも早く見失ってしまった。それでも、少年が向かった先へと進んだ。
息も絶え絶えになる中、私は少し開けた場所で人影を見つけた。既に辺りは暗くなっており、またこちらに背を向けているため、その人影はあの少年か、それとも友達の方かよく分からなかった。しかし、私がいくら呼びかけてもその人物はピクリとも反応を示さなかった。近づいて、ようやく気が付いた。
うっ……。私は目を背けた。これは……死体だ。
少年が見つけたのはこの死体だったのだろうか。この死体が少年の友達とでも言うのだろうか。しかし、少年は一体何処に行ってしまったんだろう?
「うん。僕の友達だよ」
少年が暗闇から姿を現した。
「この子ね。僕が注意したにも関わらず、森の奥へ行ってしまってね。はぐれちゃったんだ。僕が目を離さなければこんな事にはならなかったのに。ねぇ?」
少年が私の方に視線を向けた。その瞬間、私の身体に寒気が走った。少年の眼があまりにも冷たく先程までの少年の印象とはまるで違っていた。
「何でこんな事したの? 自分で自分の命を絶つなんて……」
少年は私に話しかけていたのだが、私には少年が何を言っているのかよく分からなかった。
「ねぇ。何で……?」
少年は死体の身体をグイっとひねり、死体の正面を私に向けた。
その死体の顔は……、私自身であった。
後編に続く~
わざわざ電子辞書まで使って読んで頂き、有難うございます!
日本語おかしなところ無かったかなw
あまり合っている自信がないw