自作小説 『図書の海』
- カテゴリ:自作小説
- 2012/06/24 03:43:59
ここは図書の海と呼ばれる現実世界とは離れた空間。ここには世界中で書かれた新しい本が運ばれてくる。書かれたと言っても、製本されたものだけがあるわけではない。電子データはもちろん、物語となっている書体のものは全てここで永久に保管されるのだ。故にここには莫大な量が蔵書されている。図書の海と呼ばれる所以である。
ある日、ここ図書の海にとある少女が本を納めてほしいとやってきた。私はこの図書の海のアーカイバー(図書保管者)であるので、運ばれる本には一通り目を通している。かと言って、ここに納められる本に規制は無いので選定するわけではなく、ただ目を通すだけだ。
私は少女の書いた本を開いた。少女は目を逸らし、読まれるのを恥ずかしがっているように見えた。自分が書いた物語を誰かに読まれるのは恥ずかしいものである。特にこの年頃の女の子としては当然の反応だ。
物語は少女自身が主人公であった。少女が友達の二人の少女と三人で、森の中でお茶を飲んだり、隠れんぼしたりして遊んでいた。ある時、悪役と思われる男が現れるが、三人で力を合わせて男を退治して、三人はいつまでも仲良く一緒に暮らしましたという結末になっている。
私は読み終えた後、この物語に違和感を覚えた。別に物語が稚拙だとか、盛り上がりに欠けるという事ではない。ここには幼い子供が書くようなもっと稚拙な話だってあるし、筋が通ってなかったり、途中で尻切れトンボになっていたりするものだってある。それらに比べれば、この物語はちゃんと結末まで筋が通っており、はるかに出来は良い。だが、何か違うのだ。何か根本的なところが。
少女は私が本を読み終えるのと同時に帰ろうとしていた。私はここでも違和感を覚えた。普通は本を読んだら感想を求めるものではないのか? 私は少女を呼び止めた。
「君。この本は本当にここに置いていいのかい?」
少女は振り返って、こくりと頷いた。
「でも、この本は……」
私は気付いた。この物語は。
誰かに読んでもらうように作られていない……。
自分で記録する為に書く本はある。所謂、日記というものだ。しかし、ここは他の人に読んでもらうために書かれた本だけが置かれる。ここに蔵書するということはそういう意味を持つのだ。
この本をここに置くわけにはいかない。私はそう思った。私は少女に本を返そうとした。しかし、本を返そうとしても、少女は頭を振って訴えてくる。
「ここに置いてください。お願いします!」
「君。私には分かるんだ。これは誰かに読んでもらうために書いた訳ではないね。それなのに何でここにおいて欲しいんだい?」
少女は俯き、話し始めた。
「はい。あなたが仰る通り、それは誰かに読んでもらうために書いてはいません。その物語は私……、私達の物語。他の誰かに読まれて穢されたくなかったんです」
「だったらやはりここに納めるべきではないのでは?」
「始めは私もそう思いました。でも、このまま誰にも知られることもなく、私とあの子達の物語が消えていくのが嫌だったんです」
少女の訴えが支離滅裂になっているのは分かっていた。しかし、言いたいことも何となく分かる。私は少女の訴えを理解した上で話した。
「よくお聞き。物語というのはただ書いただけでは完成しないんだよ。物語というものは世界と同じなんだ。自分一人だけでは成り立たない。自分を見てくれる他の人が居て初めて世界は成り立つんだ」
少女が顔を上げて、今にも泣きそうな顔で私を見つめた。
「私の世界は存在してないの?」
「今のままではね。世界は観測されて初めて成り立つものなのだから」
私は少女の書いた本を開いてみせた。
「君の物語は良く出来ている。ただ、誰かに読んでもらいたいという気持ちが伝わってこないんだ。だから誰にも読まれることはない。君の願いや嘆きは誰にも届かない」
少女の目から涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
「私は、私は……」
少女の手に本をゆっくりと手渡した。
「もう一度書いておいで。今度は君の伝えたいことを書くんだ」
「でも、でも。もし誰かが私達の事を否定したら? 私達が存在してないって言ってきたら?」
私はこの物語で少女の伝えたい事がようやく分かった気がした。
「大丈夫。君の物語は誰かに読んでもらった、その時点で既に君達の世界は成り立っているんだ。それは誰にも否定することは出来ないよ。少なくとも私の中では君達は生きているからね」
私がそう言うと、少女は少し微笑んだ。
「もう大丈夫だね」
「うん……」
少女は図書の海から去っていった。きっともう一度、素晴らしい物語を完成させて戻ってくるだろう。その時はきっと、キラキラと目を輝かせて私に物語の感想を求めてくるに違いない。
この図書の海には、多くの者が物語を蔵書しに来る。たまに現実には存在していない珍客だって来ることはある。例えば、誰かの心の中でのみ生きる存在だったとしても。しかし、彼女達は確かに存在するのだ。誰かがその物語を手に取る限りは……。
知恵袋見ていたら、高校で習うことはうそだと書いてあったので調べました。
そのあと、テレビで見たら、月の例えがでてきたの。
電子雲・・・。電子が粒子じゃなくて、広がりを持った雲のようなものとして扱うってやつだっけ?
電子数によって雲の形がいろいろあったなあ。おじさん、もうあまり覚えてませんw
てか、高校でもう電子雲習ったっけ?早いなあ。
物語なんて、まさに有って、無いようなモノですからね。
誰からに認識される事で初めて存在する。
そう言えば、自分が認識するから宇宙が存在するっていうトンデモ理論があったなあw
月は、我々が見るから存在する。
誰も見ていない月は存在しないと同じである。
月や電子もそうなのだから、物語ならなおさら……
う~ん。どうだろう。閲覧出来る人は規制を付けとこうか(今決めるんかいw
確かにふわふわしてたw 少女が持ってくるっていう話だから、自由意思かな。
まあ。この図書の海は概念的な空間だから、例えば、少女がこの物語をほかの人に見せたいって思うと、
自動的にこの図書の海に蔵書されるって事で。(今、決めたw
確かに僕も何個もあるw
是非是非、図書の海に蔵書してください♪
そ、それはなんて恐ろしい・・・・なんてことを真っ先に考えてしまいました(笑)
蔵書するのが自動なのか自由意志なのがふわふわしている気もしました。
自分も彼女のような誰にも見せないまま仕舞ってしまっている物語が幾つもあります。
いつか形にしてあげたいと思いつつも、なかなかそれをすることができないでいます。
なんか読んでるとそうしたい気持ちが強くなってきます。
まぁ、そこで行動に移れないから駄目なんですけどね☆
図書館戦争。まだ読んでないなあ。アニメ化もしてるよね。見ないと。
不思議のアリスのお話は端的にしか分からないからなあ。ああいうメルヘンチックなものも書けたら良いなあ。
少女の物語=僕が考える物語になってしまうのでクオリティーは求めないでねww
考えさせちゃってるな。申し訳ない限りだけど、作者冥利に付きますなあw
あ、全然違ったけどねん♪
物語は、誰かが開いた(読んだ)時から始まる、まるでふしぎのアリスのようだね!
少女の、物語が端的にまとめられているよりも、おもしろおかしく、波瀾万丈wに
綴られていくことを願って!
まゆほんの物語は後に考える事が多い!また違う時に読んだら違う感想になるかもbb
しかし、思い付いてからはすぐ書く方が良いですね。実はアイデアを思い付いても、そこから手を付けていないものが沢山あります(メモだけは残してるけど。
でも、そういうモノ達は、僕自身の熱(やる気)が冷めてしまってなかなか手を付けないものなんですよね。僕は熱が無いと書けないたちなんですw
しかし、そういうモノ達もいずれは図書の海から拾い出してあげないといけないですね♪
そういえば、本作は、以前書いた自作小説『椿達の茶会』とちょっと繋がってたりします(誰も分かるわけがないw