Nicotto Town


おうむたんの毒舌日記とぼうぼうのぼやき


呪縛の家 祖母キヨ(2)

キヨがその洋館を最初に見たのは、まだ結婚前のことだ。母のお使いでこのあたりに来たのだ。別世界が広がっていた。こんな場所があるなんて!娘だったキヨは心踊りながら、一方で赤ちゃんの時養女にもらわれていたなら、自分もこの世界の住人だったのにと、また腹立たしい気持ちになっていた。
そんな洋館の並んだ中に少し小高い場所にあった建物が、キヨの心を奪った。なんて凛とした建物なのだろう。洋館は庶民を見下ろしてるように見えた。私は庶民に分類されたのだろうか?あの洋館の主人になりたいー娘だったキヨの小さな野望が灯ったのであった。
その後、洋館は持ち主を何度か変えていた。ほとんどが外国人だった。しばらく空き家だったのをキヨは不思議に思ったが、第二次世界大戦が勃発した。。。

祖母キヨがその洋館を購入したのは、第二次世界大戦敗戦後、舞子の父が高校生の時だった。当時、すでに祖父が病床に倒れ、祖母が高橋家の実権を握っていた。反対できる者などすでに誰もいなかった。戦後の混乱期、彼女は夢にまで見た洋館の女主人になったのであった。

キヨはそれまでの住まいの家具や物を出来うる限り廃棄した。そして、洋館の内装を好みの洋風に変えていった。高価な洋物の高級家具に大枚を惜しまなかった。こうして彼女の洋館は徐々に出来上がっていったのだ。
洋館を購入して間もなく祖母は洋館のお披露目パーティーを開いた。会社関連、洋館の隣人たち(それなりの金持ちの住む地域だった)などなど、キヨのプライドを満たす人選を集めたパーティーだった。
圧巻のお披露目パーティーであり、祖母キヨは優雅に女主人として客をもてなした。
「旦那様の看病をしながら、会社を引き継ぎ、息子さんを高校に入れたうえで、このような、りっぱな家を購入されるとは、普通できることではありませんよ」
来賓たちは、次々に同じことをキヨに話しかけた。それ以上を言える地位の人間はすでにいなかったといった方が正しいのかもしれない。

会社を売り払った時、人は噂したものだ。洋館に金を注ぎんだ結果だと。しかし、その中傷を祖母は払拭してしまう。祖母は洋館を毎年のように大金を払い維持し、生活水準も落とさなかった。噂どおりに落ちぶれるなど、祖母のプライドが許さなかったのだ。

私こそがこの家にふさわしい主人なのだ、キヨは小高い洋館から下の建物を見下ろし、心の中で叫んでいた。
いつしか、私だけが、この家を許される人物であり、私はここに君臨する定められた者なのだーそして。いつしかキヨは信じるようになった、私はこの洋館そのもなのだーキヨの狂気への変容の中で、舞子の両親も舞子も加奈子も狂気の渦に巻き込まれていったのだ。。。
(完)

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2012/11/18 17:30
なるほど
呪縛の家ですね
ホラーはちょっとした人の心の闇に
潜むものなのかもしれません
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2012/06/28 21:04
>るぅさん
ほんとは悪者なんかいないのかもしれません。結果的にそういう流れになってしまった
そこまで極端に言うのも問題ありでしょうが、人間ゆえの悲劇ってあるんじゃないかと
思います。。。
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2012/06/27 23:16
どんなことがあるにせよ、一念を持って成し遂げたのはそれなりの努力もなければ出来ませんよね。
それを守る為、歪んだ性格になってしまったのですね。
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2012/06/19 00:06
>トシraudさん
こちらこそ、ありがとうございます。
キヨの話を書きながら、キヨが100%の悪人に思えなくなってきました。
彼女は時代の犠牲者なのかもなぁとか(^^;
なんか、人生それぞれ悲しいですね(しみじみ)
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2012/06/18 22:36
わ!ありがとうございます^^ 昨日と今日の筋に、二三のエピソードが入ると、本編と並ぶシリーズになるのになぁ。でもここまで考えるのも難儀なんでしょうね。かさねがさね、ありがとうございます^^



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