呪縛の家 祖母キヨ
- カテゴリ:自作小説
- 2012/06/17 00:29:42
キヨが物心ついた頃、親に教えられたこと。
「金持ちの遠い親戚に養女に行く話があった」
と。
それはキヨには衝撃だった。
厳しい父と黙って従う母ー明治の当たり前の光景だったが、父は校長というインテリだったのが、キヨの心の支えだった。しかし、養女の話を聞かされた時のキヨは歯切しりした。なぜその話を進めなかったのだ?私は「お嬢様」として本来迎えられる存在だったというのに。無論、男尊女卑が当然の時代、その気持は胸の中に押し込めるしかなかった。
キヨは教育者の子供だったので、中学進学はかなわなかったが、一通りの文字書き計算は父から厳しく仕付けられていた。明治の中期の識字率を考えると、彼女は多少自意識を埋めることができた。しかしーキヨは思う。養女に行けば、女学校に行って、それなりの地位の婚姻が話になったろうに、と。養女なんて普通に行われたいた時代である。食べるために子供を売る親も少なくない中で、「金持ちの令嬢」になる機会を閉ざした親を彼女は生涯許さなかった。
実際。キヨがその金持ちのお嬢様としてかしずかれていればーその後の人生も未来に生まれる子や孫の人生も全く違うものになったに違いないー孫の舞子は思う。私達が存在しないですんだかもしれないのに、と。
しかし、人生は残酷だと決まっているー舞子はため息をキヨに気づかれぬようにつきながら、キヨのそのごの人生をきくしかなかった。
キヨは当時では抜きん出た体型をしていた。今ならスーパーモデルともてはやされたであろう、その身長は「でくのぼう」と笑われた。それが更に思春期のキヨを傷つけた。何も悪いことをしていないのに、養女として迎えられれば「お嬢様」だったというのに…!キヨの気持ちが歪んでいくには十分だった。
キヨは親の勧められる見合いで商人と結婚した。反対できる時代ではなかった。身分は商人ーお金を儲けてる金持ちだった。武士祖先だったキヨの自尊心は満たされなかったが、親に逆らえることもできずに、金持ちの奥様として、キヨは結婚した。
落ちぶれた武士の末裔であるというプライドだけはキヨは捨てなかった。姑が健在する、おぼっちゃまと結婚したキヨはやがて商才を発起して家の中心でやりくりするようになった。舞子の父はキヨが実権を握った家で生まれ育った。嫁姑の対立もすぐに主導権を握ったキヨに掌握され、、家の中心になっていった。姑が他界し、夫も倒れて十年後他界した。完全に家はキヨの手中の収まった。
しかし、それでもキヨの心は埋まらなかった。女学校に進学できぬまま結婚し、「でくのぼう」といわれたスタイルに負い目も持ち続けながら舞子の父を育て上げた。
そんな時、第二次世界大戦が勃発した。彼女はあらゆる手段を使い、息子を戦中育て続けた。札束や高価な着物で高価な米や卵を交換し、父を育て上げた。戦後、舞子の父は大学に進学した。それはキヨの意地でもあった。
その息子が恩人である祖母を見届けるのは当然であり、責任だった。キヨはそれを舞子の父に呪文のように彼が子供の時から唱え続けた。その最愛の息子が、嫁と「事故」で親より先に死んで呪縛を脱出したのは、キヨには裏切りでしかなかった。孫にその埋め合わせはさせるー最愛の息子を失った悲劇に母は、狂気の世界にのめりこんでいった。。。ーそれがキヨ生き方だったのだ。。。
キヨちゃんのお話はこれで終わりです。。。と思っていたんですが「家」とキヨちゃんの
関連がまだ書かれてませんよね。あと一回書かなきゃならんかなぁ。。。(^^;
>るぅさん
キヨちゃんにはキヨちゃんの理由があるんですよね。それが「普通」かどうかは
別として。
こうして歪んだ世界に向かっていくのですね~
今日はキヨちゃんのアウトラインがわかった!どんなお話がはじまるんだろう!!!ワクワクw ぼうぼうさん初の時代小説ですね^^