Nicotto Town



「忍者物語」子供編6 彩夜の不安


コーデは彩夜が踊りを習っていた12歳

本編
夕菜が何よりも驚いたのは、週に2回行われる

読み書きの時間だった。

寛太は殆ど字が読めなかった。

お涼と彩夜もたどたどしい。

其れでも、さぼらずに毎回出ていたので、

何とか、読めた。

寛太は実際は殆どさぼって

出てこなかったのである。

読み書きも精鋭の元足軽で

侍の家だった一人が教えるので、

毎回週2回行わる訳ではなかった。

半年の行われない時もあるし、

週4.5回の時もある。

7歳から教えているが、

居なくなった寛太を待っていては

いつまでたっても始まらない。

お涼と彩夜だけが習っていた様なものだ。

夕菜が来るようになってから、

寛太も赤い顔をして座る様になったが、

侍出身の其の男に姿勢から直されて

正座をする事からして

寛太には苦痛であった。

其れでも、夕菜が来てから何とか、

座って居る様になった。

あっさりと寛太は見破られて、

夕菜に居残りで字を

教えて貰う事を言いつけられた。

其の為にずいぶん読める様にはなったが、

夕菜に取っては苦痛だった。

その間、お涼と彩夜が踊りの稽古が行われていた。

一座として機能するには、

一人の踊り手だけでは其の踊り手が

都合が悪くなると座が持たない。

そこで、お涼と夕菜にも万が一の為に

基礎だけでも教え込む事がされた。

お涼は彩夜の踊りを見ていて、

どこかで見た事が在ると思っていた。

教えていたくノ一が踊って見せて思い出した。

京に居た時にいつも止まる旅籠から、

夜一人で部屋に待っていると

隣の旅籠で三味線の音とともに

きれいな着物を着た女の人が

いつも踊っているのが

お涼の部屋から見えた。

客は変わったが毎夜3回その人は同じ踊りを踊った。

お涼は其れを思い出して、

何気なく、三味線の音に合わせてやってみた。

お涼は大人が帰ってくるまで暇なので

よく其れを一人でまねていた。

其れしかする事が無かったのである。

一つの旅籠から出る事を禁じられると

どうしても体を動かしたかった。

其処で毎日見える其の踊りをまねた。

三味線に合わせて似た様に出来る様になっていた。

何度かやっている内に其れらしく

真似ができる様になっていた。

多少の違いはあったし、

扇は無かったので手でひらひらとするだけだったが

何せ本物の踊りを毎夜見ていたのである。

首の傾げてのまわりかた。

扇子の回し方を教えて貰うと

こうやって居たのかと納得した。

お涼が舞が出来る様になるにつれて、

彩夜は不安になった。

夕菜の三味線は揺るがない。

三味線を教えているお隅が教える事は無いと

太鼓判を押したのだ。

自分は踊り専門と思い込んでいたので

三味線を教えるお隅の所へは

行かなかった。

お涼と寛太だけが来たので、

二人にお隅は三味線を教えた。

お涼が踊りが踊れるとなると話が違う。

自分が三人の中で一番踊りが上手で無いと

自分の立場が危うくなる。

「お嬢踊り」と言って大道芸とは違い、

綺麗な着物を着て、三味線と歌に合わせた

物語を踊って見せるのが一座の主な演目で

大道芸は前座だった。

其の為に其れを踊れる踊り子は特別な扱いを

して居る様に彩夜には見えた。

親方と呼ばれる一座を率いている男も

用心棒と呼ばれる男も其の「一のお嬢踊り」を

踊るくノ一に対しては態度が違った。

自分が其れをやるのだと彩夜は思い込んでいた。

其の為にお涼や寛太には自分が踊りを習っている

間に三味線の練習をさせられた居たと思い込んでいた。

其れがお涼が自分と同じ様に出来るとなると

一座の小間使いにされる恐れがあると思った。

長の娘の自分が拾われてきた孤児のお涼の

下に着くのは耐えられないと思った。

自分は長と他のくノ一が尊敬する

一のお嬢踊りを踊るくノ一の娘。

だから長い事屋敷から出されない生活を

強いられて来たのだ。

そう思い込む事で屋敷の中での

生活に耐えてきた。

踊りを教えているくノ一は母を尊敬していて、

特に彩夜を可愛がっていた。

彼女と父に頼んでお涼に教えない様にして貰った。

合議の席でその事が出て、

他のくノ一からの反対意見が出た。


結局、もう一人、踊りを教えられるくノ一が

お涼と夕菜の踊りを見る事になったが、

彼女は運動神経も良く、くノ一ながら精鋭として

仕事で外に出る事が多い。

そこで彼女が次の仕事から帰ってきたら

夕菜とお涼に彼女が教えると言う事になった。


既に夕菜が来て1年が過ぎた。


相変わらず、午後の訓練が終わるとお涼と寛太は

時間が出来ると山に言った。

その日は暑い日で在った。

川に足を入れて涼もうと言う提案に

寛太はお涼に立ち泳ぎを教えると言う。

着物を頭に乗せて、

立ち泳ぎをすると深い掘りを渡れて、

渡り終わると其の着物を着ると言う。


山をどんどん沢に沿って進んで行くと

小さな滝になって居る所がある。

其処だけが背が届かない程、深い場所だ。

寛太は着物を脱ぐと褌だけになり、

ザンブと滝つぼに飛び込み

浮かび上がってくると立ち泳ぎを見せた。

そして、お涼に「着物を脱いで飛び込め」と言う。

泳ぎは既に習っていた。

多少深い川も魚を追いかけて潜って中の様子を見る。

幼いころは二人とも裸で川で泳いだ。

其れが日常の事だった。

その頃から3年も経っている。

少し躊躇ったが、お涼は着物を脱いで

裸で滝つぼに飛び込んだ。

顔を水から出して傍の岩に手をかけると

寛太の方を見た。

寛太は少し顔を赤らめて興奮しているのが

気になったが笑顔なので気にしないで置こうと

お涼は何かよぎった嫌な予感を打ち消した。

寛太はお涼の傍で足を蟹股で水の中で掻きながら

「こうするんだ」と説明した。

寛太が両手を取って促すので、

お涼も足で水を掻く真似をした。

「もっと頑張らないと沈むぞ」と言って寛太が手を放した。

確かに少し沈みかけた。

また寛太が手を取って足を

大きくがに股に開いて水を掻いて見せた。

お涼も真似をした。

少しずつ、体制が安定した。

やがて、寛太が手を放した。

お涼は其のまま大きく蟹股にして足で水を掻き続けた。

浮いている。

すっと寛太の顔が水の中に消えた。

お涼の足の下を通り過ぎている。

ふと嫌な気持ちになって、お涼は岸に向かって泳いだ。

岩を這い上がると、無言で着物を着た。

寛太は赤い顔をして、

「ちゃんとできているかを確かめたんだよ」と

言っている。

其のまま、お涼は村へ向かって歩き出した。

寛太がすぐに追いかけてきた。

「ちゃんとできて良かったじゃないか。」

声が普通なのも気にいらない。

詫びて居る様な雰囲気でない。

お涼の足が速くなる。

寛太が追いかけてくる気配はない。

其れにも、腹が立った。

アバター
2012/06/16 18:13
レイダ様

寛太が目覚めてきました。

お涼もそれに気が付いて来ました。

二人の間に微妙な変化が出てきました。

大人になって来たのです。
アバター
2012/06/16 17:56
彩夜は余裕をかましていたら、お涼ちゃんの思わぬ経験が生かされピンチに?

寛太・・・見え見えの行動ww

お涼ちゃんも、お年頃なんですかねぇ^^



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