Nicotto Town


おうむたんの毒舌日記とぼうぼうのぼやき


呪縛の家 その19(修正しました)

外の激しい雨と雷の音が、家全体に響き渡っていた。
ドアが開いて加奈子が入って来た。互いに祖母が入り込んだ人格かどうか見極める静かだが張りつめた時間がしばし続いた。お互いの探り合いが終わると、舞子が加奈子の手をぐっと握った。-私を信じてーおとうさん、おかあさん私たちを守ってー舞子は祈った。
更に加奈子の手をしっかり握ると、舞子は屋敷に響き渡る声で叫んだ。
「おばあ様、あなたは、もう存在しないのよ」
舞子が言うと、窓が一枚割れた。そんな言葉認めるものかー屋敷がうなる。風とあめが猛烈な勢いで家の中侵入してきた。
「お姉ちゃん、怖いっ」
加奈子が舞子にしがみついた。それは、抱き合って二人で泣いて、なぐさめあっていた時の感覚だった。
「加奈子、寂しい想いさせたね」
舞子は愛しそうに加奈子の頭を優しくなでた。
「お姉ちゃん、ごめんね、ごめんね」
加奈子は泣きじゃくる。祖母から加奈子を取り戻したー舞子は確信した。

部屋の中を暴れる風と雨がさらに強くなった。窓がまたガシャンガシャンと立て続けに割れた。祖母の怒りがからだを貫いて伝わってくる。
加奈子を抱きしめがら、舞子が叫んだ。
「あなたを恐れる者はいない。もうあなたを受け入れる実体はこの世にないわ!」
風がやんだ。祖母の気持ちが揺れているー舞子は感じた。

屋敷からガラスの割れる音がきこえてきたのとほぼ同時に、浩介を地面に押さえつける力がすっと消滅した。
「舞子!」
浩介は屋敷に向って走り出した。

舞子が叫ぶ。
「プライドが残っているなら、自ら決着つけなさい!」
その迫力に加奈子は一歩退いた。舞子は強引に加奈子を引き寄せる。
「心配しないで、私は舞子だから。ここを出るわよ」
舞子は加奈子にそういうと、加奈子を引っ張って走り出した。再び風と雨が屋敷の中をあばれだし、窓のガラスが次々に割れていく。
「っつ!」
舞子の頬の横をガラスの破片が飛んでいった。
「お姉ちゃん、血が!」
「これぐらいなんでもない!おばあ様、見苦しすぎるわ!いい加減になさい!」
二人が屋敷を飛び出したとほぼ同時に、落雷が家を直撃し、火の手があがった。

「舞子!加奈子ちゃん!」
「浩介さん…おわったよ」
舞子は浩介を見た途端、それだけ言って気を失った。

やがて消防車が駆けつけ、あたりが騒然となってきた。気絶したままの舞子を抱えながら浩介は加奈子に尋ねた。
「全部、燃えちゃうけどいいの?」
加奈子はうなづいた。
「大事な物は私たちの心の中にあるから」

呪縛の家 完


あとがき こういう雰囲気の話は初めて書いたので、正直きつかったです(^^;。
最後の終わり方があっさりしすぎてる感もありますが、今の私の精いっぱいで
書き上げました。読んでくださった方、コメくださった方ほんとに感謝です。

アバター
2012/07/02 23:08
 忙しかったこともあり、ラスト一気に読むことができてよかったな~
 外国映画にポルターガイストとかいうのもあるけれど、舞台が日本になると全く空気感が変わりますね。
 確かに、これまでのお話とは毛色が違うけれど、すごく引き込まれました。
 舞子と加奈子と祖母の確執も、読んでいてとても面白かった(ちょっと言葉は軽くなっちゃうけれど)。

 7月のお題も上がりました。
 また、次回作を楽しみにしています。
 お疲れ様でした。
アバター
2012/06/11 20:06
大丈夫ですか?アトピー、辛そうですね。
却下!!!お婆ちゃんのお話、小説のネタには最高じゃありませんか!今までに無いほど、各キャラの肉付けの厚さ、魅力が増してるのに、もったいない!!!

「互いに祖母が入り込んだ人格かどうか見極める」ココがこのお話の柱だったんですよねw まってますよん^^
アバター
2012/06/06 17:25
>るぅさん、トシraudさん
楽しんでもらえれば、ほんと嬉しいです。

第一話で終わるはずだったのを急きょ連載始めた時は
私自身、話がどう転がるかわかりませんでした。
本編も間にはさんだエピソードで話のベクトルがだんだん
定まった気がします。
それにしても暗い話は、書くのがきついですね。やっぱ
コミカルな方が書いていて楽しいです(^^;

続編はない!です(断言)w
アバター
2012/06/05 20:39
 お疲れさまでした、ありがとうございます。ふゎぁ~~~!ここまでハッピーエンドだ!ドヨヨーンと重い空気が明るく晴れましたねw
 でも、、、続編、第2シーズン、、、製作発表するでしょ?^^ まってまーす! 散りばめられ残された大きな謎…(DVD特典なんて方法では、逃げられないビヨ!!www)
アバター
2012/06/05 16:16
連載お疲れ様でした^^楽しく読ませていただきました。
おばあさまの感情が最後まで憎しみのままだったのかな?
それとも二人を許したのかな、と考えました。



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