南西の孤島、地下神殿?
- カテゴリ:自作小説
- 2012/06/01 17:16:00
島に到着すると…階段が現れた。 ボクたちが船から下りて、大地に足を着けた途端にだ。 その階段には豪華な赤い絨毯が敷かれてた。 それも目の前で…。まるで見えない誰かがボクたちを誘ってくれているかのようだ。 ボクたちは赤い絨毯の上を歩いて行く。 ボクはつぶやいてみた。 「わかっているとは思うが…これが「最後」の戦いになる。危険な戦いになる。引き返してもいいんだぞ、スコット」と、ボクは顔色の悪いスコットに声をかけた。 「リルル……正直、部屋の片隅で隠れて逃げ出すかもしれねぇ。でもな…それでもこの目でお前たちの戦いを見ておきたいんだよ。それに息子や、娘が生まれた時に…かっこ悪いだろ?お父さんはその時戦いが終わるのを遠くで見守っていましたって、言えないからさ」と、スコットは急にこぶしを握り締めて、天を仰ぐ。 「ははは。そうか…ならそうしてくれ」 「おう」と、スコットは笑顔を見せる。 ほんの少しだが、気持ちが和らいだ。笑顔とは不思議なものだ。 ボクも空を見上げて、青空の中にフィオルの顔が浮かんだ。それにリリィの顔も…。 ボクはニナを見て、 「ニナ、ヴァルキュリアスの言霊を頼む」と、頭を下げた。 「はい、あなた」と、ニナはボクの行動がおかしかったのか、「うふふ」と笑い、また不思議な言葉をつぶやいていく。 扉は開かれて行く。 以前と同じ言霊を聞くのかと思っていたら…心に響いてくる言霊は違っていた。 『よろずの物たちは等しく変化という流れから逃げること叶わず、われわれは自らを在り方が流れて転がる様を見て行く、まるで川の流れのごとき在り方であると知るならば……清らかで汚れなき存在こそが本来の姿である。ゆえにあふれ出る泉のごとく、その源泉は留まることなし、また尽きるということも無い。』 ニナの言霊が終わると、階段は無くなり、地下の大空洞が広がっていた。 その中心に「地下神殿」はあった。 神殿というよりは崩れた廃墟のようにも見える。 その廃墟の中央からヨシュアが歩いてくる。 黒紫の禍々しいオーラを身に纏い、漆黒のローブを来た「魔王」と呼ばれていた男がゆっくりと歩いてくる。 黒紫の禍々しいオーラは次第に広がり、ボクたちの足元を包み込む。 黒い仮面の下の赤い目が光る。 足元で爆発が起きる! ボクたちは宙に浮かび上がるが…風の上位精霊、炎の上位精霊たちの力によりて…ゆっくりと地面に舞い降りる。 「ヨシュアーーーーー」と、叫びながらボクは走って近づく。 右手に聖剣カラドボルクを呼び出し、そのまま斬りかかった。 ヨシュアは動こうとしない。 いや、ボクの動きが速いのだろう。 反応できていないのだ。 ヨシュアの身体へ聖なる剣を振り下ろす。 レヴァンティンと違って…悪しきモノだけを斬る、この聖剣はみごとに黒い仮面だけを二つに割った。 ヨシュアの身体から禍々しいオーラが離れて行く。 ヨシュアは倒れた。 やはり、ヨシュアは死んでしまったのか。 ボクはゆっくりと近づき、ヨシュアの身体を触った。 冷たくはなかった。 ぬくもりはあった。仰向けにさせてヨシュアの顔をのぞきこむ。 ヨシュアは目を開けてボクを見た。 「ルゥ……また逢えたね。聖なる剣と赤き武器を今は廃墟となった神殿の奥へ。僕は少し眠るとするよ」と、ヨシュアは目をつぶる。 揺さぶった。目は開かない。 「おい、うそだろ」 スコットはすでに回復魔方陣を描き終えて、展開してくれている。 「回復するかわからないわ。ルゥ…今はワタシたちのやることをやりましょ」と、ニナは言う。 ニナの青い瞳はまっすぐとボクを見つめている。 「わかった」と、涙を拭き、ボクはヨシュアを魔方陣の上に寝かせて神殿の奥へ進んだ。
空は晴れ渡り、カモメたちが鳴いている。
「ヨシュアぁああああーーーー」と、ボクは地下の暗い天井に向かって叫んだ。
すごく今後の展開が楽しみです(*^^)v
ちょっとせつないですね。