呪縛の家 その16 加奈子21才(2)
- カテゴリ:自作小説
- 2012/06/01 13:38:53
インターフォンが木戸孝介の来訪を告げた。イソイソと舞子が玄関に向かっていった。すぐに男と舞子の会話が近づいて来た。
「急に雷と豪雨で、驚いた」
「でも無事着いて安心したわ」
ごく当たり前の会話が、加奈子には、夢の中でさまよってる中でどこからともなくきこえてくる「音」のような感じで、現実感がまるでなかった。
まもなく二人が加奈子が居る客間に入って来た。
「加奈子、木戸孝介さんよ。孝介さん、妹の加奈子です」
嬉しそうに弾む舞子の声がボールになってポンポンと弾む幻覚になって加奈子には見えた。「木戸孝介です。初めまして」
「初めまして。加奈子です」
この夢はいつ覚めるのだろう?加奈子はそう思いながら機械的に求めに応じ握手した。思いのほか暖かい大きな手の感触が加奈子を現実に呼び戻した。夢でないのだ。目の前には、確かに加奈子から姉をもぎ取っていく男性が存在していた。
手が離れると再び現実が遠くなる。加奈子は夢の中に意識をゆだねていた。
ごく普通に会話が進められていく。
「お姉さんと同じ大学なんだ、優秀なんだなぁ」
「別に・・・優秀でないです。お姉ちゃんに教えてもらっていたし」
加奈子には、夢の中の会話でしかない。
「どこでお姉ちゃんと会ったんですか」
「取引先の会社に舞子さんがいて、えっと、その…いわゆる一目ぼれで…」
「その話はいいってば」
あわてて舞子が話をさえぎる。
お姉ちゃんが赤くなってる。赤いクレヨンでお姉ちゃんの顔をグルグル塗りつぶす。お姉ちゃんの似顔絵できたよ。お姉ちゃん、あれ?お姉ちゃんが真っ白のドレスを着ている?この似顔絵は渡せない…。
隠す場所を探さなきゃ。真っ白なお姉ちゃんを赤くしちゃったから、おばあ様に叱られる。でもどこに隠してもおばあ様は見つけて怒るから、お姉ちゃん助けてよ。ああ、お姉ちゃんは出て行ったから助けてくれないんだ。涙がぼとぼと。泣いたら優しく頭を撫でてくれたお姉ちゃんはもういない。
私はどこへ行けばいいというのだろう?迷宮の中?あ、「家」だ。
私の居場所は「家」だけになってしまったんだ…。
おばあ様が「家」の前で手招きしている。
「お前は、親に捨てられ、姉にも捨てられたのだ」
そんなこと言わないで、おばあ様!-でもそれは事実、それが現実ー
結婚式まであわただしい日々が続いた舞子は、加奈子の精神がバランスをくずしているのに気付きながら、目をそむけ忙しさに没頭した。立ち止まってはいけない、家に引きずりこまれるー舞子の本能が叫んでいた。
結婚式を終え、結婚届を出したり、新居の片付けが落ち着いて、舞子はようやく加奈子に電話をかけた。挙式後一か月が過ぎたころだった。加奈子と離れるのは、加奈子がうまれてから初めてのことだった。いくらでも電話する機会はあった。でも、舞子は加奈子の変調を認めるのが怖かったのだ。
加奈子、ほんとに忙しそうですね(^^;
たぶん、忙しすぎて疲れたんだと思います。。。
難しいお話なのに読んでくれてありがとうです^^
>トシraudさん
お気づきとは思いますが、実在のモデルがいました(←過去形なのが重要w)
彼女のダークサイドは、恐ろしくて本人に尋ねることさえできなかったです。
このストーリーの彼女は随分ソフトです(^^;;;
なおさらお婆様がダークサイドへいったのが気になる、気長に待ちますw
加奈子も忙しそうですねぇ~
新しいイベントが沢山入ってきますよね♬
ぼうぼうさんは、もう マッチングイベントはしましたか?