Nicotto Town


うみきょんの どこにもあってここにいない


夕焼け 1(ダンセイニ ペガーナの神々)

春分もとうに過ぎ、だいぶ日が伸びてきた。
これから夏至まで、どんどん昼が長くなる。
夕焼けを見ると、いつもびっくりしてしまう。
家の近くには川が流れている。
川に映ったそれは格別だ。
空にあるそれだけでもうつくしいのに、
川にあることで、倍になるどころか、
流れによって、さらに色を変えるから。

「不変の虚空を飽かずに見あげる人びとが、その大いなる
地上で倦み疲れぬよう、われは空に絵をかこう。日びがつづく
かぎり、一日に二度絵をかこう。一日が夜明けの庵をたつと
同時に、われは空を青にいろどろう、人びとはそれを
見て歓喜するだろう。そして一日が夜のなかに沈む前、
人びとを悲しませぬために空をふたたび青にいろどろう」
(ロード・ダンセイニ『ペガーナの神々』のうち
「リンパン=タンのことば(愉悦と吟遊詩人たちの神)」
訳・荒俣宏)

わたしはこの箇所がすきだった。
けれども、ちょっと思い違いしていた。
一日に二度、空に描く絵は、どれひとつ同じ絵ではない、
毎日、違う、そうも言っていると。

一日たりとも、夕焼け、朝焼けは、同じ絵ではない…
それはわたしが思ったことだったが、
それをダンセイニの言葉と重ねることで、
彼の言葉をわたしのなかで、よりいっそう、
身近なものにしたかったのかもしれない。
会話の思い出のようなもの、川にうつった夕焼けのようなもの。




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