Nicotto Town



お涼の活躍4 現場(忍者物語)その24


上に上がってきた侍達が驚いたのも無理は無い。

其処に居たのは農夫の姿と職人の姿、地味な着物の女、町男。

侍などは一人も居なかったのである。

しかし鍬、鎌、鉈を持った連中の前に明らかに構えが違う男達がが数人いる。

しかも槍の構えは若いが手練れた者の構えである。
更にその男は目立たぬ様に小太刀を指していた。

一瞬気を抜いたがすぐに彼らは気構えた。

が、何も持っていないと思っていた後ろに居た職人から、
鑿がまっすぐに飛んできて肩に刺さった。

前に居た男の構えが忍者独特の背を低くした横構えだったので
そっちに気を取られていたのだ。

横にその槍を持った男が居た。

二人を交互に見て
槍を振り払った勢いで前の忍者に切りかかるつもりで
じりっと槍を持った方に足を向けた時だった。

其処に前の忍者と槍を持った男との間に
鑿を投げる導線が一瞬で来た隙を正太は逃さなかった。

蓑が肩に刺さり一瞬気を取られた。

と、槍が横っ腹をついた。
其の気を取られた瞬間を若い槍を持った男も見逃さなかった。

其の槍を左手で持つと槍先を切り落とそうと右手の刀を振り上げた手が
刀を握ったまま吹っ飛んだ。

前の忍者が下から上に切り上げたのである。

刀を持ってないのなら恐くない。

その後ろに鍬を構えていた男が咬合に鍬を頭に方に振り落す。

「ぐわぁあああっ」と声を上げると一番最初に上がって来た侍がのけぞった。
それを槍を指していた男が槍を蹴落としながら抜いた。

其のまま侍は後ろ向きに凄い勢いで落ちて行った。

唯事じゃないと、崖の途中に居て残っていた侍達が

いっせいに上に上がってきた。

次から次と上がってきた侍を前の忍者達が切りつけている。

その内蚤を投げつくした正太の方に
刀を持った侍が上がってくる。

正太はとっさに切り落とされた侍の手首から刀を取った。

上がって来る侍が最初に正太が構えているのが目に入る。

其の侍が上がりきって正太の方へ刀を向けて

勢い付けて飛び上がる同時に切りかかろうと

上手いグワイに横に合った左手を木の枝に手をかけた。

其の登り道がだんだんに交互になって足場を作って
上にあがれる様になっているのである。

其の刀を持ってない方の手を挙げたが最後わきが空いたのだ。

その瞬間、上がり切らない内に槍を刺す。

其れを合図の様に二人の若い農夫が彼の後ろから飛び出で交互に鍬を振り落す。

槍だけだと致命傷にならないが、鍬が頭にどすっと降ってくればのけぞる。

更にもう一つ鍬が刀を持ってない方の肩に撃ち落される。

最後に槍を抜きながら蹴落とす。

其の場所を上がってくる侍は

刀を持った利き手でつかまりながら上がって来るので

最初にどうしても刀を構えた正太に目を向ける。

刃先がチラチラと上がり切ろうとすると見えるのである。

正太が業と剣道で覚えた剣を構えて前に後ろにと

隙あらば飛び掛かる動作をして挑発すれば、

木の陰の槍には気が付かないのである。

要領を覚えるとそのやり方でその場所から上がって来る侍の何人かを
4人の連携で蹴落とした。

確かに刀を持った利き手は無事だし、

槍で左わき腹を刺され、

頭を鍬で頭蓋骨に罅が入るほど切られるが、

肩も骨に達するほど傷が付くが致命傷ではない。

だが、其の状態でもんどりうって

急な坂を後ろ向きに転げ落ちるのである。


下に落ちた時は虫の息である。

その状態の男が最初に着いた騎馬軍の前に落ちてきた。

すぐに馬を下りて「どうした!」と訳を聞いた。

「上で・・・大勢の・・・訳が・・上に・・大勢の・・」で息絶えた。

上を振り向くと次から次と味方が殺されて降ってくる。

どうやら、大勢の軍勢が上で潜んで待ち構えていて

騎馬軍が来た所を弓矢と岩で狙い撃ちするつもりだろうと判断した。

確かに上の方は大勢人が集まっているが

実際に戦っているいるのは数名の忍者と槍の足軽と鎌の農夫達。

忍者と侍が刀を持った手が組手で動きが止まると

お涼が仕込み杖を抜いて後ろから指す。

忍者に刀を持った手を吹っ飛ばされた侍ほど哀れな物はない。

お涼が刺して、腹を押さえたら

上から鍬だの鉈だの鎌だのが見るも無残である。

死んで動かなくても、生きてて動けなくても、下へ蹴落とす。

だから、兎に角忍者は手裏剣を投げて気をそらし

その隙に一人が刀を持った手を切り落とす。

次の瞬間待ってましたと農夫達が間髪入れず襲いかかる。

忍者達はそっちの方を警戒しないと巻き込まれる寸前である。

鍬が頭に振り落されるので血で前が見えなくなると蹴落とされる。

農夫達が小太刀を忘れていたのが不幸中の幸いであった。

実際が小太刀を抜く暇などある訳がない。

忍者達に取っては

此れがお互いに阿吽の呼吸を知らない素人と一緒に戦う恐ろしさだと

つくづく認識した。

其の崖の下は次から次と無残な血だらけの死体が落ちて重なる。

それは正に地獄絵図である。

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2012/04/22 23:51
レイダ様
「現場」としたのは、其処が殺戮の現場で、地獄絵図は下にあるのです。

非常にとがった高い磐崖と急な斜面でできた山でした。

戦争をしている国々の農夫たちの取っては良く在る事でした。

死体から金目の物をはぎ取ってお金を稼いでいました。

鉄が高く売れる時代でした。

鎧も何もかもが高く売れる時代でしたから、

畑を荒らされて作物を作れない農家達に取って兵士の死体が金でした。

髪の毛さえも髷を切り取って、鬘屋に売りました。

しかし、この国の農夫たちにとっては初めての経験でした。

仲間の農夫が先の闘いで出会いがしらに切られて死んでました。

だから、やらなきゃやられると必死だったのです。

出会えばやられる。やられる前に殺す。

返り血で前列の男達は真っ赤ですが、

その後のとんでもない事をしたと言う思いより、

やってやったと言う興奮の方が強かったのは下に落ちた死体の山を見てないからです。

其れを殺害した方が見たのはもう来ないかと途中まで降りて確かめに行った忍者だけです。



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2012/04/22 22:17
これは戦争ものの洋画で「ハンバーガーヒル」というのを思い出しました
激しい攻防の丘で上がるもの全てミンチにされる・・・丘
ドラマの時代劇と違って簡単に刀でスパッと切れるはずはありませんもの。
「バガボンド」という漫画が現実的な斬り合い描写でした
壮絶で、映像が頭に浮かんできました



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