Nicotto Town


昼行灯の雑記帳


書籍からのメッセージ 1

 本を読んでいて、人生訓だなあと思った一節をご紹介していきたいと思います。

「魔術師ベルガラス」デイヴィッド&リー・エディングスの著書です。アメリカのファンタジー長編ベルガリアード、マロリオンシリーズなどが有名。これは4部構成全16冊の大長編です。日本にはこのシリーズのほか、騎士スパーホークの物語(2部構成全11巻。これもお勧めです!)、ドラル国戦史(これは冒険譚としてだけ読むと良いかもしれません)、アルサラスの贖罪(ベルガリアード、スパーホークほどの重みはないです)があります。作者さんは数年前他界なさったので、これがすべてと思うとちょっと残念です。

そのうちの一冊。ベルガリアーシリーズの第3部、魔術師ベルガラスの一説です。
ティーンエイジャーで、まだ普通の孤児であったベルガラスは各地を放浪していました。そして少し前に出会った、みすぼらしい荷馬車を引いた老人に身をやつした、神アルダー(そのときはまだ正体を知らない)とともに、階級や地位を気にし、富を重んじるお国柄のトルネドラ国の村にやってきたときのやり取りです。

-------以下引用--------

人から見くだされるのは好きじゃないからな。だが、放浪者というわしの地位は社会の最底辺にあったから、みんながわしを見くだした。
「今度おいらをせせら笑うような気取ったバカがいたら、口にパンチを見舞ってやる」
夏も終わろうという頃、また別の村を出ながら、わしは陰気につぶやいた。
すると老人は肩をすくめた。
「ほうっておけばいいじゃないか」
「おいらをクズみたいに扱う連中がきらいなんだ」
「彼らの考えがほんとうに気になるのかね?」
「全然」
「だったら、なぜエネルギーを無駄にする? くだらんことなど笑い飛ばす術を学ばねばいかんぞ、ぼうず。あのいばった村人たちは愚かしいだろう?」
「もちろん」
「そのひとりの顔を殴るのは、おまえを同類にひきずりおろす―――あるいは彼ら以上に愚かしくする―――だけじゃないのかな? 自分がどういう人間か自分でわかっているかぎり、他人がどう思おうと関係なかろう?」
「たしかにそうだけど、でも―――」
わしは何らかの説明をしようと考え込んだが、結局言いたいことは見つからず、ちょっときまりわるくなって笑い出した。
老人はわしの肩を愛情をこめてたたいた。
「おまえならわかると思ったよ――――いつかはな」
 
-------早川書房文庫FT『魔術師ベルガラス1 銀狼の花嫁』より 引用終わり------

世に完璧な人がないように、万人に受け入れられることなどどんな人にもないし、受け入れない人に自分を、自説を主張すればするほど、愚かしくなる。
わかっていても、なかなか難しいのも人かもしれませんね。





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