「契約の龍」(53)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/06/10 00:17:08
クリスが日没後、ここを歩くのは、例の事件以降初めてだ。昨日までは日没前に寮に戻るようにしていたし、そもそも図書館へは資料を物色に来るだけで、調べ物自体は――クリス自身は――寮でしていた。それに、日没の時間も遅かった。
「…荷物、持とうか?」
こわばった顔をしてほとんど小走りになりながら前を行くクリスに声をかける。
「大丈夫」
「…あんまり大丈夫そうに見えないから言ってるんだけど。足元ちゃんと見ないと、危ないよ」
そう言われてようやくクリスが足を緩める。
「…急ぎたい気持ちは、分かるけど…ひとりでどんどん、先に行っちゃう方が…よっぽど、危ない」
「…うん…」
「日没に気付かなかったのは……図書館にクリスが来てるのを忘れてたことは、謝る。だから、もう少し…」
信頼して、だろうか。信用して、だろうか?
「……日没に気がつかなかったのは、私も同様だから、謝る必要はない。…居る事を忘れられてた、っていうのは……ちょっとショック、かも」
立ち止まって、抱えていた本をこちらに差し出す。
「…だから、これを寮まで運ぶことで帳消しにする。…それで、いいか?」
「…了解」
問題のあった場所から遠ざかったせいか、クリスの足取りがさっきよりも緩やかだ。
「これからどんどん、日が短くなってくから……いい加減、克服しないといけないんだけど」
「…ゆっくりでいいさ。無理に克服しようとすると……反動が来る」
「……アレク?」
「…ま、あくまで一般論だがな。俺の在学中は、頼ってもらっても構わないんだぞ?」
「わあ……それは安心だ。一生頼れるってことだよね?」
「どうして?」
「………アレクは、在学生の中で、一番「仙人」になる可能性が高いって、もっぱらの噂だけど」
仙人、とか賢者、とか世捨て人、とかいうのは、いつまでたっても卒業しないで、いつの間にかヌシと化する学生のことだ。とはいえ、長くても十数年もすれば、それなりの身の落ち着け先が決まるようだが。
「卒業する気は十分にあるし、周りにもそう宣言してるんだけどなあ。何でそんな噂が立つんだ?」
「そりゃ……卒業後にどうするかという行動を起こしてないから、じゃないかな?」
…なるほど。
でも、それはかなりの割合、クリスのせいなんだが。
「クリスの世話を焼く、っていうのはそういう活動には結びつかないのかなあ?なんか、短期間の間にたくさんのおえら方とお近づきになったような気がするんだけど?」
冗談めかしてそう言うと、クリスは虚を衝かれたように黙り込む。
やがて、言葉を選びながら、と言う感じで反論を口にする。
「そういう、コネが仕事を続ける上で役立つ、とは思えないんだけど。…王族が個人的に、自分の補佐として雇う、というなら別だが。言っとくが、私はまだ王族にならないで済ませる、というのをあきらめていないんだからな」
「……ものすごく、奇妙な表現に聞こえるんだけど。「王族にならないで済ませる」って」
「…そんなことは承知の上で言ってる。…私の面倒をみる事が、アレクの将来を閉ざすことにつながる、というのなら、手を引いてもらっても構わない。……けど…」
「まあ。卒業後の身の振り方なら、なるようになるさ。ならなかったら、クリスが親父さんに「お願い」って言ってくれれば、なんとかなるんじゃないか?」
「だから、それは…」
「冗談だから。本気にしないの」
寮の建物が見えてきたので、王宮関連の話は、強制終了。
ココログの方は、若干「成人向け成分」多めでUPしています。
(…というかこっちにUPしてる分は、その辺を削ってある…)
で、あっちにだけUPしてるのは、その「成人向け」部分の続きなので、こっちには載せられないなあ、と。
アレクとクリスは、10代のころから頭の中に飼い続けていますが、なかなかあんな子(たち)いませんねー。
育てようにも育て方のノウハウがわかりません。
アレクのような世話好きな男子は 超好みなんですけどwww
どこかにいませんかね~
ココログに1本 ニコにUpされていないお話がありましたよね!?
1本だけかな~
全部はチェックしてなかったので・・・
他にもありますか?