【小説】スピカに想う
- カテゴリ:自作小説
- 2012/03/07 14:41:39
「この時期はもう随分と暖かくなってきたね」
まっすぐ前を見ながら彼女がつぶやいた。
花見にはまだ早いこんな時期に、志穂と一緒に夜の散歩に出かける。
冬将軍の猛威もだいぶ過ぎ去り、冬の間に使っていたマフラーをしまってもいい頃だ。
それでも、つないだ手の温もりを離したいとは思わない。
「ねえ、あっくん」
僕の事をあっくんと呼ぶ彼女が栗毛色の髪を揺らして語りかける。
「あっくんってさ、9月生まれだよね?9月ってさ乙女座だよね?」
男で乙女座だなんて嫌だなと子供の頃に思ったもんだよ。
「なにそれ?まぁ、あっくん優しいもんね。乙女座っぽいんじゃない?」
乙女座の人って優しいのかい?
「知らな~い」
フフっと笑いながら、また前をみて歩く志穂。そして目を向ける先は春にしては綺麗にみえる星々。
星座といったらオリオン座ぐらいしか知らない僕だけど、星の輝きが神秘的に見えるぐらいの感性は持っているつもりだ。
ところでオリオン座はどこだ?
「やだなぁあっくん。オリオン座はもう西の空だよ。こっちに見えるのはあっくんの星座だよ」
そういって、東の空に白く光る星を指さして志穂が言った。
「ほら、あれがスピカ。スピカと言ったらおとめ座だよ。あっくんは乙女座でしょ?あれはあっくんの星座だね」
僕は9月生まれだから乙女座だけど、おとめ座は9月に見られるんじゃないの?
「ちがうよ~。誕生日できまる星座と空で見れる星座じゃだいたい半年ズレてるんだよ」
へ~。今が3月で、4、5、6…あ、本当だ。3月と9月でちょうど6か月だ。
「スピカって白くて綺麗だよね。私すきだな~。いいなーあっくん。乙女座で」
確かに僕は乙女座だけど、おとめ座のスピカだっけ?その星は僕のものじゃないよ。
「うん、わかってるけどさ。でもいいなぁって思うんだよね」
繋いでいる手と反対の手を伸ばし、スピカのところで星をつかんで、志穂に手渡して『この星をキミに』なんてキザっぽいことは流石に出来ない。
志穂はさらに天に指を指して語りだす。
「あっちのオレンジの星がアルクトゥルス。うしかい座の星だよ。そして、しし座のデネボラと合わせて春の大三角形っていうんだよね。でもさー、なんでデネボラなんだろうね。レグルスの方が明るいのにさ。もっともレグルスだと変な三角形になっちゃうからかな~」
え?ごめん。何を言ってるのか解らないよ。アルク…なんだって?しし座っていうのは星座の獅子座のこと?しかし、志穂はなんでそんなに星や星座に詳しいの?
「中学の時の理科の先生が星の話をよくしてくれたの。それで覚えてるだけ。あっくん、この程度は常識だよ?」
うしかい座のなんとかっていうのが常識だとはとても思えなかったけど、ニコニコしている彼女にそれを伝えるつもりは無い。
その変わりに、彼女が好きだと言った白く輝くスピカをじっと見た。二人で一緒に見続けた。
夏が来て、秋が去り、冬が駆け抜け、暖かさが戻ったころに、またスピカが東の空に輝きだす。
あれから少しだけスピカについて本やネットを使って調べたんだ。
花冷えの星空の下で両手をポケットに入れる僕の頭上に、僕の星座のおとめ座が良くみえる。
でも、別々の道を選んでしまった僕らは二度と一緒にスピカを見ることは出来ない。
志穂、知ってるかい?
スピカは女神が持つ稲穂の先、つまり穂先という意味があるんだって。
志穂の『穂』と同じだったんだね。だから僕の星じゃなくて、やっぱりキミの星だったんだよ。
そんなことを言ったら
「あっくん、それは常識だよ。でもスピカって真珠星とも言われてるんだって。やっぱり私じゃないね」
なんてニコニコしながら言うのかな。
春になってスピカを眺めると、これからも志穂の事を思い出すのだろうか。
「あっくんは優しいね。でもその優しさが今の私にはツライんだ」
といった彼女の言葉は、今でも解らないから…。
答えはスピカが知ってるのかもしれない。
星が題材とはロマンティック全開ですにゃ~><
残念ながら二人はもう一緒じゃないんやね。
彼氏がはっきり覚えている会話を、彼女もちゃんと覚えているかな。
あたしには絶対書かれへん、こんなお話。
読者の想像をかきたてながらも余韻を残して終える、うまいなあ@@
あたしは説明しようとしすぎて自爆してしまうわ―。
二人の年齢について書かれていないので、あれこれ何パターンも想像してしまうんだけど
想像の余地が多いだけに、うん、想像する楽しみがあるかな。
二人が別々の道を選んだ経緯は分からないけれど、でも、きっかけは何であれ
遅かれ早かれ、志穂とあっくんの道は別々になっていたように思う。
私が受けた印象では、なんというか・・・
あっくんはさ、いま一歩の「ふみこみ」が足りなかったのかな、という感じがしました。
さて、ここから先は私の妄想。
志穂にはさ、将来、こんな人が現れたら面白いと思うんだよね~。
星の話をして「この程度は常識だよ?」なんて言ったら
「そんなの常識の範疇に入るかっ」とツッコミを入れてくれる人。
そこから先の会話をあれこれ想像したりして・・・
今日は帰り道に退屈しないで済んだというのは、ここだけの話で。
私も、夜空に星座はオリオン座くらいしか見つけられないのだけれど
夏ならベガ、冬ならシリウス、そして春ならスピカくらいは見つけられる。
春の大三角なんて忘れちゃっていたけど、北斗七星の柄の部分からの大曲線なら覚えてたよ。
でも、スピカと聞くとスピッツの歌の方を先に思い出すかなぁ~。
ところで、ジーナは?w
ペテルギウスがもえつきちゃうって???
ジーナの新作をいつまでも待っております!
なんとなく、、、、、、こう、、、、、
凄く勝手な妄想してしまいましたが、志穂はあっくんに憧れてて、
いつまでも届かないのであきらめてしまったのかなぁ、とかそんな事を考えてしまいました。
そばにいるとどうしても追いつけない現実が露骨に突き刺さってしまうことってありますよね。
なんとはなしに、好き嫌いの問題ではなく、そういった嫉妬や羨望から別れてしまったのかなぁと感じました。
小説が書けるなんてすごいですね!
私は文才がないので、しゅーひさん尊敬ですw
あっくんが言わなかった言葉を志穂ちゃんは言って欲しかったのかなとか
色々と考えてしまいました~
私的には、星に色々な意味や捉え方が在ることと
気持ちや価値観の在り方が重なることで
二人の擦れ違う様の切なさを主に感じたのですが…
皆さんのコメを見ると、星がある限り思い出せるという
前向き解釈にもまた納得し、二度読みしてしまいました。
解釈を読み手の想像に委ねられるのが小説の良いところですが
そういう構成を考えられることに、ただただ感心してしまいます。
次回作も楽しみにしております♪
P.S 終始マジメなコメントに徹することをお許し下さい…
一番まぶしい あの星の名前は僕しか知らない♪
バンプを歌いたくなるようなお話でしたねw
最後の所が現在なんだね、読み返しちゃった^^;
別々の道を選んだとしても、違う場所で同じ星を見る事は出来るかな~っと、ちょっと思いました。
どこで会話しているのか、いまどこに立って星を見ているのか
ちょっと風景描写があるといいかなあと…
星を眺める事も少なくなってしまったけれど・・ってか なくなってしまったけれど
ぼーんやり眺めて見たくなったよ(笑)
スピカを見るたびあっくんは どんな気持ちになるんだろう。
また志穂に会いたくなるのかなぁ。優しさが今の私にはツライかぁ。。
志穂は あっくんをキライになって サヨナラしたわけでは なさそうだねw
時が経っても変わらないもの、って素敵ですねぇ♪
スピカが変わらず輝き続けていれば
当時の記憶も色褪せぬ気がします。
空を見上げる事ってそうそう多くないけれど
ちょうどいいかもしれないなぁ…たま~に想いを馳せるくらいが( *´艸`)
あっくんも志穂も今は違う道を歩んでいても、
あの時の夜空の星は変わらないから、
見上げれば、すぐに思い出せるね。
ま~、変な結末になってしまいました。
本当は、小説サークル用に書いたつもりでしたが・・・・><
ま、駄作もみんなに批評してもらってナンボ!
ということでUPしちゃったよ~~w