Nicotto Town



災害ユートピア

昨日書こうと思っていたら、福島在住の医療ジャーナリスト藍原寛子さんのレポートが
夜遅くに更新されていた。見ていると夜更けてしまった。

除染事業モデルに同行してわかったこと

除染事業は大手ゼネコン四社に委託され総額100億円の事業となっている。
100シーベルトから60シーベルトに下がったが、
本当に人が住めるレベルまで下げられることができるのか。
それに伴う莫大な費用は、ゼネコンの利益のみで終わってしまわないか。

除染事業は人の手で行われている、被曝現実を見ることで
今は全く見えなくなってしまった原発作業員を思う。
そんな内容だった。
http://www.videonews.com/fukushima/0001_5/002291.php
(興味のある方は無料なのでどうぞ)

2月11日は東日本大震災から11カ月目、来月で一年となる。
来月は追悼特集が組まれるだろう。
その前に書いておきたかった。

『災害ユートピア』レベッカ・ソルニット著
を読んでいる最中だ。

災害が発生した当初、人々は不幸のどん底にありながら
困っている人に手を差し伸べる。
嬉々として自分のやれることに精を出し
見知らぬ人語り助け合う。

米国ニューオリンズを襲った台風カトリーナの大災害時
略奪行為のニュースが大々的に世界を駆け巡ったが
人々は無償で助け合い、救援活動を行った。

大惨事に直面すると退行現象が起き
暴徒かするというイメージからは程遠い行動だった。
もちろん例外もあるだろう。
しかし、大半の人は名も知らぬ隣人たちと助け合った。

地獄にユートピアが出現するのだ。

読みながら思った。
原発の爆発時、真実を告げれば
大パニックが起きただろうか。。
人々は冷静さを失い、大勢の死傷者を出しただろうか。。

阪神大震災時、神戸の宝飾店のウィンドウが壊れた。
剥き出しの宝石類は、震災時、盗まれることはなかった。
信号はなくても、車は止まり、人々は譲り合った。

それは数日間だけで
余裕を取り戻し、日常が返ってくると
ユートピアは崩れ去る。

わたしの実家近くでは、家屋倒壊被害は少なかった。
空き地があり、火災になったやんね、と母に言うと
放火や、ぽつんと返答され、びっくりし、怒りが込み上げた。

幾つかのサイトを毎週読んで、見て、聴いている。
ずっと原発問題を追いかけ、報道してくれているからだ。

時たま忘れたい。
現実は厳しいからだ。

昨年8月頃は、怒り狂っていた。
政府の対応、御用学者、もろもろに。

最近はとても悲しかった。
疲れもある。

怒りや攻撃だけでは物事は解決しない。
原発とはなんだろう。
文明のある象徴ではないか。
それに抗しきれないわたしたちが存在を赦してしまったシステムの。

原発反対であったが
何もしなかった。

無力感みたいなものに捕らわれていた。

『こころの時代』という番組を偶然観た。
山浦玄嗣さん岩手県大船渡市のお医者さんだ。

大津波の被害を目の当たりに見て
猛然と闘志が湧いてきた。
とおっしゃられ
涙が出た。

誰に怨み事を口にせず
他人を気遣う言葉ばかりを聞いた、という。

そういう時期が過ぎ去ると
もちろん様々な問題もあろうが
人は失業手当に頼り、働かなくなった。

支援とは手を添えることであって
与えることではない。
本で読んだ言葉が胸に痛い。

厳しい現実に直面している人にしか分からない
哀しみがあるだろう。

でも、やっぱり哀しい。

イ・チャンドン監督の『ポエトリー・アグネスの詩』
公開に向けてのインタビュー記事が載っていた。
心に響いた。

孫と二人暮らしの老女ミジャは
詩の教室に通う。
自身がアルツハイマーの初期であることと
孫が少女アグネスの自殺に係わっていたことを知り
絶望の中で詩を紡ごうとする。

詩とは何か。
世界は決して美しくないのに
美しさを探すことに何の意味があるのか。
どうしたら美しさを探せるのか。
伝えられるのか。

監督は言う。
人々は常に様々なところで苦しんでいる。
テレビで見てもそれは関係ないと思う。

誰かの苦痛が自身の日常と本当に無関係なのか。
どれほど近くに感じられるか
それを伝えたい。


人間に近いチンパンジーは、求められれば助けようとする。
人間は求められなくても察して助けようとする。
この違いがある。
他者への共感と痛みへの想像力こそ
美しさが潜んでいるのかもしれないと
それが人であり、知性と呼べるものだと
わたしは感じる。

岐路に立たされているのではないか。
日本は、と思う。
多くの事に、報道されないことに
無関心でいてはいけない気がしている。

わたしたちは生きて行かねばならない。
仕事上の立場、所属やら
あらゆるところで、小さいな、時には大きな選択を迫まられながら。

今ある現実から目を離さず
個々に考えること忘れてはならないと。
起こってしまったことは変えられない。
ならば、どうすればいいのだろう。

ささやかな勇気だけは手放さない自分でありたいと
願いつつ
あの日から一年が近づいている。









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