Nicotto Town


おうむたんの毒舌日記とぼうぼうのぼやき


連載自作小説 奇跡の降る夜16

「りょうちゃん、ちょっと待っててね」
涼子がかごの中のセキセイに話しかけ、涙をふくと男に
「喫茶店で話しましょう」
二人はペットショップを出た。近くにあった喫茶店に入り、コーヒーを注文すると、二人は同時に深いため息をついた。くすっ。場が和んだ。
口火を切ったのは男の方だった。
「僕は遠藤といいます。先ほどは失礼しました。あのセキセイは一か月ぐらい前に見かけて、すごく気に入ったので、先週、予約をいれたんです。こどもの時飼っていたぐらいなので、飼うための準備をしていた最中なんです。
でも、あのセキセイがしゃべるとは思わなかった。メスはあまりしゃべらないってきいていたから・・・」
「あれは、前世の彼女に、私が教えたんです」
「前世の彼女?」
「信じてもらえないのを承知でお話します。私の名前は村上涼子といいます」
そう言うと涼子は名刺を一枚差し出した。
「村上涼子さん・・・確かセキセイもりょうちゃんと名乗っていましたね」
涼子は自分が体験した、セキセイのりょうちゃんとの関係を話し始めた。

涼子が話し終わると、黙ってきいていた遠藤は
「うーーん、月並みですがにわかには信じられない話ですよね」
静かにつぶやいた。涼子は黙ったまま、遠藤を見る。
「でも、確かにセキセイは「りょうちゃん」とはっきりしゃべった。まるでこの展開を予想していたみたいに」
遠藤は、うーーむとうなった。涼子が尋ねる
「なぜ、あのセキセイを予約されたんですか?普通は雛を求めるでしょう?」
「はっきりした理由はないんです。とにかくあのセキセイに引っ張られている気がしてならなかった」
「じゃあ、それは「りょうちゃん」が手引きしたことだわ」
涼子は言う。
「僕たちが、セキセイにあやつられていたと?」
「そうとしか考えられない」
涼子はそういうと、窓越しにペットショップを見た。随分時間がたっていたようだ。ペットショップは閉まっていた。

「とりあえず、今日は帰りましょう。送っていきますよ」
「大丈夫ですよ、ここから、そんなに遠くないですし」
遠藤はそれ以上、しつこくしなかった。自分の名刺のうらに自宅の住所を書くと涼子に渡した。
「もう一度会って話しましょう・・・村上さん?」
名刺の裏の住所を見た涼子が息をのむ。
「あのおせっかい!」
涼子の口から飛び出した言葉に、
「ど、どうしたんですか?」
遠藤には何が何やらさっぱりわからない。
「りょうちゃんの意図がわかったわ。セキセイが人の縁結びしようとしているわけね」
「縁結び??村上さん?」
何が何だかさっぱりわからない遠藤に、涼子は言った。
「この住所のアパートに私も住んでいます」
「へっ?」
「いっしょに帰りましょう」
涼子は
「偶然じゃないわ、「りょうちゃん」が何年も前から仕組んでたんだわ」

二人は自分たちのアパートの前に並んで立っていた。
「間違いなく、私はここの住人です」
そういうと涼子はポストを指差した。
「僕もここの住人です」
遠藤は涼子指差したポストの二つ隣を指差した。
「確かに仕組まれたとしか思えない・・・」
二人は急に襲ってきた疲労感を抱えて、それぞれの部屋に入っていった

(つづく)

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2012/01/31 21:09
ブフww、なるほど!
でね、思ったんですよ、更に続編、考えてる!ってw りょうちゃんの意識?が、この時点の未来を予測していたってことは、過去に別のインコ体験があって・・・
もう、これはシリーズ化ですねwww



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