■近代文藝之研究|研究|美學と生の興味(33)
- カテゴリ:その他
- 2009/06/03 17:49:54
■近代文藝之研究|研究|美學と生の興味|下 生の増進と美|一 (1)
下 生の増進と美
一
併しながら斯やうな思想には反對の潮勢も甞て絶えぬ。殊に近時に於いては此の潮勢が漸く力を増し、美研究の世界は二大別せられて、美と生とを合するものと、美を生から離すものと、功利的と唯美的とに限られんとしてゐる。功利派は唯美派の「藝術のための藝術」といふ題言對して「功利の爲めの藝術」(Art for utility's sake)とすら斷言する。而して佛のコントの實際哲學に導かれて、ゾラ等の小説に達したものが此の思潮であると見る。吾人は此の兩説の是非をいふ前に、先づ斯くの如き反對の潮勢の起こつた次第を一見しなくてはならぬ。
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*註1:増進・増し
「増」の旧字体。「土」+「曾」。
「進」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註2:併しながら
「併」は正字体が用いられている箇所もあるが、ここでは「併」。
*註3:潮勢・思潮
「潮」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/chyou_ushio.jpg
*註4:絶えぬ
「絶」の正字体。旁の「色」が「刀」+「巴」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zetsu.jpg
*註5:近時
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註6:美研究
「研」は正字体が用いられている箇所もあるが、ここでは「研」。
*註7:導かれて
「導」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註8:小説・兩説
「説」の旧字体。「言」+「兌」。
*註9:達した
「達」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註10:前に
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg
*註11:起こつた
「起」の正字体。「走」+「巳」。
*註12:次第
「次」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ji_tsugi.jpg
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
(2014/07/23/初校)