連載自作小説 奇跡の降る夜11
- カテゴリ:自作小説
- 2012/01/22 00:10:16
「うそぉ~」
そう言う翔を、ペットショップに連れてきた遠藤が
「どうかしたんですか?」
と尋ねる。
「ここは、私の行きつけのショップだから」
笑いながら翔は答えた。
「この店に目をつけるなんて、鳥好きとして合格だわ」
「管理悪い店はやはり利用したくないです」
遠藤も同感しつつ、
「何故か気になるセキセイがいるんですよ。どうしても先輩に見定めて欲しくて」
と言うと、店内の目当ての場所にどんどん進んでいく。
ペットショップの店員が翔を見て
「いらっしゃいませ。あ、お邪魔しました」
近寄ろうとして、遠藤を見るとあゆみをとめた。
「会社の後輩なのよ」
誤解されるのも嫌で、言い訳を店員にする。遠藤は、翔と店員のやり取りを気にすることもなく、磁石に引きつけられるように目的の場所に移動する。
「こいつなんですよ」
遠藤は青いセキセイを翔に見せた。生まれて半年以上はたってるーいわゆる「売れ残り」だ。それがかごを一つ占拠していた。他のかごには複数の鳥がはいっているのに、別格の扱いだ。
成長も順調で体格も問題ない、おそらくメスだ。
「すごく気が強そう・・・」
翔が思わず言うと、いつの間にか近づいてきた店員が
「他のいんこいれると、いじめてどうしようもなくて」
訊いてもいないのに、困ったといわんばかりに説明した。遠藤はその説明にますます気に入ったといわんばかりで、翔の言葉を待っている。
「体格はいいし、健康状態もよさそう。たぶんメスよ」
「メスかぁ・・・」
ますます気にいったようだ。浮き足だってる遠藤に少しはマイナス面も指摘しておく方がよさそうだ、と翔は思った。
「ただ、雛でないから、手乗りになるかはちょっと微妙よ。それに日中、一羽で部屋に置いていかなきゃならないのも、ちょっとかわいそうだわね。セキセイは本来、集団行動する生態だから」
「うーーん、なるほど」
現実的な問題を提示すると、遠藤も少し冷静になった。
「手乗りは問題ないと思うんですよね。なんだか、すごくこいつから、僕となら上手くやるっていうオーラ感じるんですよ」
そ、そこまで惚れ込んでいるのか?翔は遠藤のこのセキセイへの情熱にタジタジになった。
「でも、先輩の指摘ももっともですよね。留守にするのが可哀想だよなぁ。集団行動の生態も初めて知りました」
うーーむ。真剣に悩む遠藤に
「ここまで大きくなったら、売れる心配ないと思うから、二、三日考えたら?飼い始めたら十年のつきあいになるのだし」
「そうですね~、もう少し考えるかなぁ」
遠藤と別れ、帰宅途中の道で翔は今日見たいんこが涼子のサイト「いんこな日々」のセキセイの「りょうちゃん」の印象に似てるなぁと思っていた。
(つづく)
ときに、、、ペットショップのお店そのものの良し悪しについても含蓄、ありそうですねw